■用語 楓糖尿症 [用語(か行)]
一部のアミノ酸を分解できないために、新生児期から神経系の異常を生じる疾患
楓(かえで)糖尿症とは、一部のアミノ酸を分解できないために、新生児期から神経系の異常を生じる疾患。先天性代謝異常症の一種で、メープルシロップ尿症とも呼ばれます。
人間が成長、発育していくには、蛋白(たんぱく)質、糖質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養分が必要であり、これらの栄養分は胃、腸で分解され、小腸より吸収されて、肝臓などの内臓や脳、筋肉に運ばれます。内臓ではさらに、それぞれの臓器を構成するのに必要な成分に分解、合成されます。
このように栄養分を分解、合成する代謝には酵素の働きが必要ですが、この酵素が生まれ付きできないために、その酵素が関係する成分の蓄積が起こって、いろいろな症状が現れるのが、先天性代謝異常症です。
先天性代謝異常症の種類はたくさんありますが、その中で楓糖尿症は比較的頻度が高く、早期発見により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっています。新生児の約40万人から50万人に1人の割合で、楓糖尿症を発症するとされています。
口から摂取した蛋白質は胃でアミノ酸に分解され、腸より吸収されます。そのアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸と呼ばれるロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の必須アミノ酸を分解するα(アルファ)−ケト酸脱水素酵素の活性が、先天的な遺伝子の異常によって低下するために、楓糖尿症は起こります。
3種類のアミノ酸を分解、合成する代謝ができず、これらのアミノ酸とα−ケト酸からなる代謝産物が蓄積し、血液中の量が増えます。
このため神経系に変化が起こり、けいれんや精神遅滞なども起こります。こうした代謝産物によって、尿や汗などに楓シロップ(メープルシロップ)とよく似た特有の甘いにおいがします。
楓糖尿症にはさまざまな病型があり、最も重症な古典型から、症状の軽い間欠型、中間型、ビタミン反応型(サイアミン反応型)などがあります。
最も重症な古典型では、生後1週目で授乳不良、活気不良、嘔吐(おうと)、けいれん、多呼吸、意識障害、昏睡(こんすい)、低血糖などの神経系の異常を起こし、治療をしなければ数日から数週間以内に死亡します。
これより軽症の型の場合、初期には正常のようにみえますが、乳幼児期以降に感染症や手術などで身体的なストレス状態になると、嘔吐、よろめき歩行、錯乱、昏睡、尿の楓シロップに似たにおい、徐々に発達が遅れるなどの症状が現れます。
楓糖尿症の検査と診断と治療
楓糖尿症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。
センターでスクリーニング検査を行い、血液中のロイシンの量が4ミリグラムを超えていたら、精度の高いアミノ酸分析計を用いて、血液や尿中の分枝鎖アミノ酸の増加を調べます。
結果に異常のある場合、小児科の医師による精密検査を受け、楓糖尿症と診断されると、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の分枝鎖アミノ酸を制限した特別なミルクと、蛋白制限食による食事療法を行います。
重症の場合には、血液透析や交換輸血を行って体内に蓄積した分枝鎖アミノ酸とα−ケト酸を排除すれば、神経系の異常なども改善されてきます。軽症の場合には、ビタミンB1(チアミン)の注射が効果的な場合もあります。
薬物により疾患を抑えることができた後も、特別なミルクと蛋白制限食を常に摂取しなければなりません。
乳児期では、蛋白質を除去した上で、3種類の制限対象以外のアミノ酸の混合物を加えた各種の治療用除去ミルクを与え、血液中のロイシンの量を2~4ミリグラムに保つように調節します。
制限対象のアミノ酸はいずれも必須アミノ酸であるため、全く摂取しないわけにはいきません。残された酵素機能の程度に応じて、母乳や通常の粉ミルクを併用することになります。
離乳期では、自然の食品から3種類のアミノ酸だけを取り除くことはできないため、各食品中の3種類の制限対象のアミノ酸含有量を測定した資料を参考にして、摂取量を計算しながら献立を作ることになります。
このような献立で、蛋白質やエネルギーの必要摂取量を確保することが難しい場合は、幼児期以降も治療用除去ミルクで補う必要があります。
一部のビタミン反応型に限られますが、特定のビタミンを服用することで食事制限の緩和が可能となる場合があります。ビタミン投与前後の症状や、検査値によって有効性を評価します。
新生児期に発見、診断して治療することにより、嘔吐や意識障害などの急性症状の出現を防ぎ、良好な発達につなげていくことができます。 感染症などで状態が悪化するので、慎重な育児は必要です。
楓(かえで)糖尿症とは、一部のアミノ酸を分解できないために、新生児期から神経系の異常を生じる疾患。先天性代謝異常症の一種で、メープルシロップ尿症とも呼ばれます。
人間が成長、発育していくには、蛋白(たんぱく)質、糖質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養分が必要であり、これらの栄養分は胃、腸で分解され、小腸より吸収されて、肝臓などの内臓や脳、筋肉に運ばれます。内臓ではさらに、それぞれの臓器を構成するのに必要な成分に分解、合成されます。
このように栄養分を分解、合成する代謝には酵素の働きが必要ですが、この酵素が生まれ付きできないために、その酵素が関係する成分の蓄積が起こって、いろいろな症状が現れるのが、先天性代謝異常症です。
先天性代謝異常症の種類はたくさんありますが、その中で楓糖尿症は比較的頻度が高く、早期発見により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっています。新生児の約40万人から50万人に1人の割合で、楓糖尿症を発症するとされています。
口から摂取した蛋白質は胃でアミノ酸に分解され、腸より吸収されます。そのアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸と呼ばれるロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の必須アミノ酸を分解するα(アルファ)−ケト酸脱水素酵素の活性が、先天的な遺伝子の異常によって低下するために、楓糖尿症は起こります。
3種類のアミノ酸を分解、合成する代謝ができず、これらのアミノ酸とα−ケト酸からなる代謝産物が蓄積し、血液中の量が増えます。
このため神経系に変化が起こり、けいれんや精神遅滞なども起こります。こうした代謝産物によって、尿や汗などに楓シロップ(メープルシロップ)とよく似た特有の甘いにおいがします。
楓糖尿症にはさまざまな病型があり、最も重症な古典型から、症状の軽い間欠型、中間型、ビタミン反応型(サイアミン反応型)などがあります。
最も重症な古典型では、生後1週目で授乳不良、活気不良、嘔吐(おうと)、けいれん、多呼吸、意識障害、昏睡(こんすい)、低血糖などの神経系の異常を起こし、治療をしなければ数日から数週間以内に死亡します。
これより軽症の型の場合、初期には正常のようにみえますが、乳幼児期以降に感染症や手術などで身体的なストレス状態になると、嘔吐、よろめき歩行、錯乱、昏睡、尿の楓シロップに似たにおい、徐々に発達が遅れるなどの症状が現れます。
楓糖尿症の検査と診断と治療
楓糖尿症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。
センターでスクリーニング検査を行い、血液中のロイシンの量が4ミリグラムを超えていたら、精度の高いアミノ酸分析計を用いて、血液や尿中の分枝鎖アミノ酸の増加を調べます。
結果に異常のある場合、小児科の医師による精密検査を受け、楓糖尿症と診断されると、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の分枝鎖アミノ酸を制限した特別なミルクと、蛋白制限食による食事療法を行います。
重症の場合には、血液透析や交換輸血を行って体内に蓄積した分枝鎖アミノ酸とα−ケト酸を排除すれば、神経系の異常なども改善されてきます。軽症の場合には、ビタミンB1(チアミン)の注射が効果的な場合もあります。
薬物により疾患を抑えることができた後も、特別なミルクと蛋白制限食を常に摂取しなければなりません。
乳児期では、蛋白質を除去した上で、3種類の制限対象以外のアミノ酸の混合物を加えた各種の治療用除去ミルクを与え、血液中のロイシンの量を2~4ミリグラムに保つように調節します。
制限対象のアミノ酸はいずれも必須アミノ酸であるため、全く摂取しないわけにはいきません。残された酵素機能の程度に応じて、母乳や通常の粉ミルクを併用することになります。
離乳期では、自然の食品から3種類のアミノ酸だけを取り除くことはできないため、各食品中の3種類の制限対象のアミノ酸含有量を測定した資料を参考にして、摂取量を計算しながら献立を作ることになります。
このような献立で、蛋白質やエネルギーの必要摂取量を確保することが難しい場合は、幼児期以降も治療用除去ミルクで補う必要があります。
一部のビタミン反応型に限られますが、特定のビタミンを服用することで食事制限の緩和が可能となる場合があります。ビタミン投与前後の症状や、検査値によって有効性を評価します。
新生児期に発見、診断して治療することにより、嘔吐や意識障害などの急性症状の出現を防ぎ、良好な発達につなげていくことができます。 感染症などで状態が悪化するので、慎重な育児は必要です。
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