■用語 変形性腰椎症 [用語(へ)]
腰に5つある腰椎の加齢による変化によって、腰痛が起こる疾患
変形性腰椎(ようつい)症とは、腰に5つある腰椎の加齢による変化によって、腰痛が起こる疾患。腰部変形性脊椎(せきつい)症とも呼ばれます。
腰椎は上から第1腰椎、第2腰椎と呼び、一番下が第5腰椎です。それぞれの間には、軟骨である椎間板が挟まっていて、クッションのような働きをしています。
変形性腰椎症の主な原因は、加齢です。年齢を加えることによって、椎間板が変性して弾力性が失われ、クッション作用が弱くなります。その結果、腰椎同士がぶつかったり、椎間関節や靭帯(じんたい)組織などが擦り減ったりすると、腰椎は刺激されて骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の突出ができたり、腰椎の並びにずれが生じて変形し、筋肉組織を含め腰部の痛みやだるさなどの局所症状が起こります。
腰椎の変性、変形を増悪させる要因としては、重労働や遺伝的素因などが挙げられます。
変形性腰椎症の主な症状は、腰部の痛みやだるさ。通常は、朝の起床時などの動作開始時に強く、動いているうちに軽減します。長時間の同一姿勢でも、腰痛やだるさは増強します。
腰痛の部位は、腰部全体に漠然と感じる場合や、腰椎の後端が隆起した棘突起の骨組織の周囲であったり、 脊椎の両側にある傍脊柱筋であったりとさまざまです。また、臀部(でんぶ)や大腿(だいたい)後面まで痛みを感じたり、下肢のしびれや冷感を覚えることもあります。
腰椎に変形が起こると、姿勢が悪くなります。腰椎の変形が高度になると、外見上も体が側方に曲がって側湾になったり、後ろに曲がって後湾(いわゆる腰曲がり)が起こったりし、腰痛のため長時間の立位が困難になってきます。
変形性腰椎症による腰椎の変形があっても、痛みがなければ特に問題はなく、今までどおりの生活を送ってかまいません。しかし、腰痛はさまざまな疾患の症状として現れますので、症状に変化があれば整形外科を受診して検査を受けたほうがよいでしょう。
変形性腰椎症の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、腰痛が主体で下肢症状があっても軽微な場合に、X線(レントゲン)検査で骨組織の加齢による変化を確認し、さらにそのほかの疾患を除外することで変形性腰痛症と確定します。
X線検査で加齢による変化が認められても、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎すべり症などでは下肢の症状が主体になることが多く、変形性腰痛症とは区別されます。腰痛を起こす脊椎以外の疾患、すなわち腎(じん)臓や膵(すい)臓などの内臓疾患や婦人科疾患、さらに解離性大動脈瘤(りゅう)なども、除外する疾患として挙げられます。
整形外科の医師による治療では、痛みに対する保存療法が基本となります。薬物療法では、炎症と痛みを和らげる消炎鎮痛剤や、筋肉のこわばりを取り除く筋緊張弛緩(しかん)剤などを投与します。
血液の流れをよくする末梢(まっしょう)循環改善剤、神経の働きをを改善する向神経ビタミン剤(ビタミンB12など)が用いられることもあります。筋肉部分に痛みがある場合は、局所麻酔によるトリガーポイント注射と呼ばれる注射が効果的です。
また、腰部に対する温熱療法や牽引(けんいん)療法などの理学療法も、痛みの緩和に有効な場合が多く、ほかの治療法と組み合わせて行われます。
痛みは安静と保存療法で治ることが多く、手術を必要とすることはほとんどありません。
症状が軽い時は、腰痛体操や軽い運動などで体幹の筋力を付けることも、腰痛の予防や軽減に役立ちます。安静にしすぎると筋肉が衰えて、かえって症状が出やすくなりますので、できるだけ体を動かし、普通に生活することも大切です。高齢者では、寝たままでいたりすると、立つことも歩くこともできなくなる危険があります。
腰が冷えると症状を強く感じがちですので、冷やさないように心掛けます。家庭でふろに入るのも、立派な温熱療法で、ぬるめのお湯にゆっくり入るようにします。
変形性腰椎(ようつい)症とは、腰に5つある腰椎の加齢による変化によって、腰痛が起こる疾患。腰部変形性脊椎(せきつい)症とも呼ばれます。
腰椎は上から第1腰椎、第2腰椎と呼び、一番下が第5腰椎です。それぞれの間には、軟骨である椎間板が挟まっていて、クッションのような働きをしています。
変形性腰椎症の主な原因は、加齢です。年齢を加えることによって、椎間板が変性して弾力性が失われ、クッション作用が弱くなります。その結果、腰椎同士がぶつかったり、椎間関節や靭帯(じんたい)組織などが擦り減ったりすると、腰椎は刺激されて骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の突出ができたり、腰椎の並びにずれが生じて変形し、筋肉組織を含め腰部の痛みやだるさなどの局所症状が起こります。
腰椎の変性、変形を増悪させる要因としては、重労働や遺伝的素因などが挙げられます。
変形性腰椎症の主な症状は、腰部の痛みやだるさ。通常は、朝の起床時などの動作開始時に強く、動いているうちに軽減します。長時間の同一姿勢でも、腰痛やだるさは増強します。
腰痛の部位は、腰部全体に漠然と感じる場合や、腰椎の後端が隆起した棘突起の骨組織の周囲であったり、 脊椎の両側にある傍脊柱筋であったりとさまざまです。また、臀部(でんぶ)や大腿(だいたい)後面まで痛みを感じたり、下肢のしびれや冷感を覚えることもあります。
腰椎に変形が起こると、姿勢が悪くなります。腰椎の変形が高度になると、外見上も体が側方に曲がって側湾になったり、後ろに曲がって後湾(いわゆる腰曲がり)が起こったりし、腰痛のため長時間の立位が困難になってきます。
変形性腰椎症による腰椎の変形があっても、痛みがなければ特に問題はなく、今までどおりの生活を送ってかまいません。しかし、腰痛はさまざまな疾患の症状として現れますので、症状に変化があれば整形外科を受診して検査を受けたほうがよいでしょう。
変形性腰椎症の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、腰痛が主体で下肢症状があっても軽微な場合に、X線(レントゲン)検査で骨組織の加齢による変化を確認し、さらにそのほかの疾患を除外することで変形性腰痛症と確定します。
X線検査で加齢による変化が認められても、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎すべり症などでは下肢の症状が主体になることが多く、変形性腰痛症とは区別されます。腰痛を起こす脊椎以外の疾患、すなわち腎(じん)臓や膵(すい)臓などの内臓疾患や婦人科疾患、さらに解離性大動脈瘤(りゅう)なども、除外する疾患として挙げられます。
整形外科の医師による治療では、痛みに対する保存療法が基本となります。薬物療法では、炎症と痛みを和らげる消炎鎮痛剤や、筋肉のこわばりを取り除く筋緊張弛緩(しかん)剤などを投与します。
血液の流れをよくする末梢(まっしょう)循環改善剤、神経の働きをを改善する向神経ビタミン剤(ビタミンB12など)が用いられることもあります。筋肉部分に痛みがある場合は、局所麻酔によるトリガーポイント注射と呼ばれる注射が効果的です。
また、腰部に対する温熱療法や牽引(けんいん)療法などの理学療法も、痛みの緩和に有効な場合が多く、ほかの治療法と組み合わせて行われます。
痛みは安静と保存療法で治ることが多く、手術を必要とすることはほとんどありません。
症状が軽い時は、腰痛体操や軽い運動などで体幹の筋力を付けることも、腰痛の予防や軽減に役立ちます。安静にしすぎると筋肉が衰えて、かえって症状が出やすくなりますので、できるだけ体を動かし、普通に生活することも大切です。高齢者では、寝たままでいたりすると、立つことも歩くこともできなくなる危険があります。
腰が冷えると症状を強く感じがちですので、冷やさないように心掛けます。家庭でふろに入るのも、立派な温熱療法で、ぬるめのお湯にゆっくり入るようにします。
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■用語 便失禁 [用語(へ)]
排便や排ガスを十分にコントロールできない状態
便失禁とは、排便や排ガスを十分にコントロールできない状態。
便意を催してからトイレに行くまで我慢できずに失禁するタイプの切迫性便失禁と、便意を感じないままに無意識のうちに便が漏れるタイプの漏出性便失禁があり、両方を併せ持つタイプもみられます。
便失禁の原因には、いろいろなものがあります。原因のうち最も多いものとして、出産時の肛門周辺の筋肉の損傷があります。
排便には内肛門括約筋、外肛門括約筋、肛門挙筋、恥骨直腸筋という4種類の筋肉が関与していますが、出産の際に肛門括約筋などが傷付き、その伸縮自在の筋肉の強さが低下することで便失禁、ガス失禁、下着が汚れる、肛門がただれてかゆくなる、便の偏位などの症状が起きます。また、出産の際に肛門括約筋を支配する神経が傷付くこともあります。
この障害は出産後すぐに気付くこともありますが、年を取るまで明らかにならないこともあり、この場合には出産と便失禁との因果関係がはっきりしないことがあります。
肛門や肛門周囲の組織の手術を受けたり、しりもちをつくなどのけがをすることで、内外肛門括約筋を傷付けた場合も、便失禁が起こります。肛門周囲の組織に感染症が起こった場合にも、肛門括約筋が傷付くことがあり、便失禁が起こることがあります。
高齢になるにつれ肛門括約筋が弱くなったり、脊髄(せきずい)から肛門周辺の筋肉に入っている神経線維が委縮してくる結果、便失禁が起こることもあります。
腸の炎症や、直腸腫瘍(しゅよう)、直腸が肛門から飛び出す直腸脱といった疾患により、便失禁が起こることもあります。多発性硬化症や糖尿病といった疾患により、肛門括約筋を支配する神経が障害されるために、便失禁を来すこともあります。
脳卒中、脊髄損傷、脳神経疾患、痴呆(ちほう)により、神経の刺激が肛門へ届かなくなるために、便失禁を来すこともあります。
さらに、下剤の乱用が、便失禁の原因となることもあります。直腸に固まった便が詰まっている時に下剤を飲むと、固まった便の回りを下痢便が伝って失禁することがあります。
我慢できずに失禁するタイプの切迫性便失禁は、意識的に力を入れた時の肛門の締まりが弱くなっており、出産時に肛門周辺の筋肉を損傷した人、肛門や肛門周囲の組織の手術を受けた人に多くみられます。無意識のうちに便が漏れるタイプの漏出性便失禁は、無意識での肛門の締まりが弱くなっており、高齢者や直腸脱の発症者などに多くみられます。
便失禁は起こる頻度の高いもので、特に加齢とともに起こる頻度が高くなってきますが、羞恥(しゅうち)心のために、どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。医師に気軽に相談することが重要です。
便失禁の検査と診断と治療
肛門科、あるいは消化器科、婦人科の医師による診断では、まず問診により、便失禁の程度とそれが生活に及ぼす影響について明らかにします。便失禁の原因の多くは、詳しく病歴を聴取することにより明らかになります。
例えば、女性の場合、過去の出産歴は重要です。出産の回数が多かったり、新生児の体重が大きかったり、鉗子分娩(かんしぶんべん)の既往があったり、会陰(えいん)切開の既往があったりすると。肛門括約筋が損傷されていることがあります。時には、全身疾患や薬剤が原因となって便失禁を来すこともあります。
次いで、肛門部の診察を行います。これにより肛門括約筋の損傷が容易に明らかになることがあります。
肛門領域をもっと詳しく調べるために、他の検査が必要となることがあります。例えば、肛門内圧検査では、小さなカテーテルを肛門内に挿入し、肛門括約筋を緩めた時と締めた時の圧力を測定します。この検査によって、肛門内圧がどの程度弱いか、または強いかが明らかになります。
肛門括約筋を支配する神経が正常に機能しているかどうかを調べるために、他の検査が必要になる場合もあります。さらに、肛門領域に対して超音波検査を行い、肛門括約筋が損傷している領域を明らかにすることもあります。
肛門科、消化器科、婦人科の医師による治療では、症状が軽度ならば、食事習慣の改善指導および整腸剤での処置を行います。時には、現在処方されている薬剤を変更することで、症状が改善することもあります。
大腸炎など直腸領域の炎症性疾患が便失禁の原因になっている場合には、原因疾患を治療することによって、症状が改善することもあります。
肛門括約筋を強くするために、簡単な体操(ケーゲル体操)が勧められることもあります。バイオフィードバックという治療法があり、特殊な機械を用いて正しく肛門括約筋を締めるコツを体得することによって、排便時の肛門領域の知覚を改善し、肛門括約筋を強くすることもできます。
肛門括約筋が損傷している場合には、手術を行うこともあります。手術には、肛門の皮下に紐(ひも)を入れて、肛門を小さくするチールシュ法、肛門括約筋縫合術、代替筋利用手術法などがあります。
肛門括約筋縫合術は、外肛門括約筋を折り畳むように縫い縮めることで肛門に力を入れやすくし、同時に肛門後方で恥骨直腸筋を縫縮することにより、直腸を前方に折り曲げて、直腸肛門角を強くすることで便が直腸から肛門に下りてきにくくするものです。
しかし、手術直後から完全に便の漏れがなくなるわけではありません。手術で筋肉の緩みを取って、筋肉が効率よく働けるようにすることはできても、筋力が強化されるわけではありません。その後に、筋力増強のためのリハビリテーションが必要となります。
肛門の手術や出産時の外傷による肛門括約筋の損傷が原因のものは、手術的に肛門括約筋を修復することで、元通りに治すことができます。加齢による便失禁には、完全に治す治療法はありませんが、近年行われている低周波電気刺激治療器の使用は特に筋肉の老化によるものに対して効果があります。
脳卒中、脊髄損傷、脳神経疾患による便失禁は、治すことができません。近年、末梢(まっしょう)神経の障害が原因と思われるものに対しては、神経の移植や人工肛門括約筋なども試みられていますが、まだはっきりした結論は出ていません。
予防対策は、まず便失禁が減るように排便をコントロールすることです。特定の食べ物や飲料で下痢や水様便、軟便になりがちな人は、それらを控えるように注意します。水様便や軟便はどうしても漏れやすいですし、硬い便は肛門に無理がかかります。
肛門に負担のかからない質のよい便が直腸に下りてくるように、運動や食事、場合によっては薬を使用して、根気強く便秘や下痢をコントロールすることも必要です。
また、便秘で刺激性下剤を服用している場合は、塩類下剤(酸化マグネシウムなど)に変更して下痢や軟便にならないようにコントロールします。普段から下痢や軟便が多い人は、便を固める作用のある止痢薬で有形便にコントロールすることも有効です。
排便後しばらくして失禁する場合は、排便のたびに座薬や浣腸(かんちょう)を使用し、直腸内の残便をなくすように試みることが有効な場合もあります。突然の便失禁に対しては、一時的に便の排出を抑える肛門用タンポン(アナルプラグ)を使用するのも一つの方法です。
便失禁とは、排便や排ガスを十分にコントロールできない状態。
便意を催してからトイレに行くまで我慢できずに失禁するタイプの切迫性便失禁と、便意を感じないままに無意識のうちに便が漏れるタイプの漏出性便失禁があり、両方を併せ持つタイプもみられます。
便失禁の原因には、いろいろなものがあります。原因のうち最も多いものとして、出産時の肛門周辺の筋肉の損傷があります。
排便には内肛門括約筋、外肛門括約筋、肛門挙筋、恥骨直腸筋という4種類の筋肉が関与していますが、出産の際に肛門括約筋などが傷付き、その伸縮自在の筋肉の強さが低下することで便失禁、ガス失禁、下着が汚れる、肛門がただれてかゆくなる、便の偏位などの症状が起きます。また、出産の際に肛門括約筋を支配する神経が傷付くこともあります。
この障害は出産後すぐに気付くこともありますが、年を取るまで明らかにならないこともあり、この場合には出産と便失禁との因果関係がはっきりしないことがあります。
肛門や肛門周囲の組織の手術を受けたり、しりもちをつくなどのけがをすることで、内外肛門括約筋を傷付けた場合も、便失禁が起こります。肛門周囲の組織に感染症が起こった場合にも、肛門括約筋が傷付くことがあり、便失禁が起こることがあります。
高齢になるにつれ肛門括約筋が弱くなったり、脊髄(せきずい)から肛門周辺の筋肉に入っている神経線維が委縮してくる結果、便失禁が起こることもあります。
腸の炎症や、直腸腫瘍(しゅよう)、直腸が肛門から飛び出す直腸脱といった疾患により、便失禁が起こることもあります。多発性硬化症や糖尿病といった疾患により、肛門括約筋を支配する神経が障害されるために、便失禁を来すこともあります。
脳卒中、脊髄損傷、脳神経疾患、痴呆(ちほう)により、神経の刺激が肛門へ届かなくなるために、便失禁を来すこともあります。
さらに、下剤の乱用が、便失禁の原因となることもあります。直腸に固まった便が詰まっている時に下剤を飲むと、固まった便の回りを下痢便が伝って失禁することがあります。
我慢できずに失禁するタイプの切迫性便失禁は、意識的に力を入れた時の肛門の締まりが弱くなっており、出産時に肛門周辺の筋肉を損傷した人、肛門や肛門周囲の組織の手術を受けた人に多くみられます。無意識のうちに便が漏れるタイプの漏出性便失禁は、無意識での肛門の締まりが弱くなっており、高齢者や直腸脱の発症者などに多くみられます。
便失禁は起こる頻度の高いもので、特に加齢とともに起こる頻度が高くなってきますが、羞恥(しゅうち)心のために、どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。医師に気軽に相談することが重要です。
便失禁の検査と診断と治療
肛門科、あるいは消化器科、婦人科の医師による診断では、まず問診により、便失禁の程度とそれが生活に及ぼす影響について明らかにします。便失禁の原因の多くは、詳しく病歴を聴取することにより明らかになります。
例えば、女性の場合、過去の出産歴は重要です。出産の回数が多かったり、新生児の体重が大きかったり、鉗子分娩(かんしぶんべん)の既往があったり、会陰(えいん)切開の既往があったりすると。肛門括約筋が損傷されていることがあります。時には、全身疾患や薬剤が原因となって便失禁を来すこともあります。
次いで、肛門部の診察を行います。これにより肛門括約筋の損傷が容易に明らかになることがあります。
肛門領域をもっと詳しく調べるために、他の検査が必要となることがあります。例えば、肛門内圧検査では、小さなカテーテルを肛門内に挿入し、肛門括約筋を緩めた時と締めた時の圧力を測定します。この検査によって、肛門内圧がどの程度弱いか、または強いかが明らかになります。
肛門括約筋を支配する神経が正常に機能しているかどうかを調べるために、他の検査が必要になる場合もあります。さらに、肛門領域に対して超音波検査を行い、肛門括約筋が損傷している領域を明らかにすることもあります。
肛門科、消化器科、婦人科の医師による治療では、症状が軽度ならば、食事習慣の改善指導および整腸剤での処置を行います。時には、現在処方されている薬剤を変更することで、症状が改善することもあります。
大腸炎など直腸領域の炎症性疾患が便失禁の原因になっている場合には、原因疾患を治療することによって、症状が改善することもあります。
肛門括約筋を強くするために、簡単な体操(ケーゲル体操)が勧められることもあります。バイオフィードバックという治療法があり、特殊な機械を用いて正しく肛門括約筋を締めるコツを体得することによって、排便時の肛門領域の知覚を改善し、肛門括約筋を強くすることもできます。
肛門括約筋が損傷している場合には、手術を行うこともあります。手術には、肛門の皮下に紐(ひも)を入れて、肛門を小さくするチールシュ法、肛門括約筋縫合術、代替筋利用手術法などがあります。
肛門括約筋縫合術は、外肛門括約筋を折り畳むように縫い縮めることで肛門に力を入れやすくし、同時に肛門後方で恥骨直腸筋を縫縮することにより、直腸を前方に折り曲げて、直腸肛門角を強くすることで便が直腸から肛門に下りてきにくくするものです。
しかし、手術直後から完全に便の漏れがなくなるわけではありません。手術で筋肉の緩みを取って、筋肉が効率よく働けるようにすることはできても、筋力が強化されるわけではありません。その後に、筋力増強のためのリハビリテーションが必要となります。
肛門の手術や出産時の外傷による肛門括約筋の損傷が原因のものは、手術的に肛門括約筋を修復することで、元通りに治すことができます。加齢による便失禁には、完全に治す治療法はありませんが、近年行われている低周波電気刺激治療器の使用は特に筋肉の老化によるものに対して効果があります。
脳卒中、脊髄損傷、脳神経疾患による便失禁は、治すことができません。近年、末梢(まっしょう)神経の障害が原因と思われるものに対しては、神経の移植や人工肛門括約筋なども試みられていますが、まだはっきりした結論は出ていません。
予防対策は、まず便失禁が減るように排便をコントロールすることです。特定の食べ物や飲料で下痢や水様便、軟便になりがちな人は、それらを控えるように注意します。水様便や軟便はどうしても漏れやすいですし、硬い便は肛門に無理がかかります。
肛門に負担のかからない質のよい便が直腸に下りてくるように、運動や食事、場合によっては薬を使用して、根気強く便秘や下痢をコントロールすることも必要です。
また、便秘で刺激性下剤を服用している場合は、塩類下剤(酸化マグネシウムなど)に変更して下痢や軟便にならないようにコントロールします。普段から下痢や軟便が多い人は、便を固める作用のある止痢薬で有形便にコントロールすることも有効です。
排便後しばらくして失禁する場合は、排便のたびに座薬や浣腸(かんちょう)を使用し、直腸内の残便をなくすように試みることが有効な場合もあります。突然の便失禁に対しては、一時的に便の排出を抑える肛門用タンポン(アナルプラグ)を使用するのも一つの方法です。
■用語 べんち [用語(へ)]
刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなった状態
べんちとは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。べんち腫(しゅ)、たことも呼ばれます。
厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているもので、手で触ると硬く感じるものの、痛みは生じません。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。
べんちと同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、魚の目(鶏眼〔けいがん〕)もあります。こちらの皮膚表面の角質層は、円錐(えんすい)状に下に向かって厚くなっています。その中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。
べんちのできやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。
筆記用具を長期間使用したり、スポーツを長期間行ったりすることにより、手指と手指の間、手のひらに、いわゆるペンだこ、ゴルフだこなどと呼ばれるべんちができることもあります。
足にできるべんちの原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果、皮膚は硬くなり、べんちになります。
大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。
べんちのできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、べんちができやすくなります。
開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。
開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐ靱帯(じんたい)が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。
ハンマー足指やその他の足指の変形も、べんちの原因となります。ハンマー足指とは、靴の爪先(つまさき)部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。
巻き爪、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻き爪とは、伸びた爪の両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴で爪足が両側から圧迫され続けると起こります。巻き爪気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にべんちができやすくなります。
内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にべんちができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。
女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、べんちができやすくなるからです。反対に、べんちが治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。
痛みがないために、べんちをそのまま放置しておくと、魚の目になる可能性もあり、ひび割れた場合は化膿(かのう)することもあります。そうなると治りも遅くなりますので、早めに治療しましょう。
べんちの自己治療と医師による診断
べんちの治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、べんちの上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。
また、スピール膏、ないしサリチル酸含有軟膏を使用するのもよいでしょう。これらは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏などを患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで痛くない程度に削り取ります。これを何回か繰り返します。
保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。
患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。
手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、爪先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。
なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。
べんちとは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。べんち腫(しゅ)、たことも呼ばれます。
厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているもので、手で触ると硬く感じるものの、痛みは生じません。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。
べんちと同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、魚の目(鶏眼〔けいがん〕)もあります。こちらの皮膚表面の角質層は、円錐(えんすい)状に下に向かって厚くなっています。その中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。
べんちのできやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。
筆記用具を長期間使用したり、スポーツを長期間行ったりすることにより、手指と手指の間、手のひらに、いわゆるペンだこ、ゴルフだこなどと呼ばれるべんちができることもあります。
足にできるべんちの原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果、皮膚は硬くなり、べんちになります。
大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。
べんちのできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、べんちができやすくなります。
開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。
開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐ靱帯(じんたい)が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。
ハンマー足指やその他の足指の変形も、べんちの原因となります。ハンマー足指とは、靴の爪先(つまさき)部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。
巻き爪、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻き爪とは、伸びた爪の両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴で爪足が両側から圧迫され続けると起こります。巻き爪気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にべんちができやすくなります。
内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にべんちができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。
女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、べんちができやすくなるからです。反対に、べんちが治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。
痛みがないために、べんちをそのまま放置しておくと、魚の目になる可能性もあり、ひび割れた場合は化膿(かのう)することもあります。そうなると治りも遅くなりますので、早めに治療しましょう。
べんちの自己治療と医師による診断
べんちの治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、べんちの上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。
また、スピール膏、ないしサリチル酸含有軟膏を使用するのもよいでしょう。これらは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏などを患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで痛くない程度に削り取ります。これを何回か繰り返します。
保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。
患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。
手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、爪先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。
なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。
■用語 ベッカー母斑 [用語(へ)]
思春期前後になってから肩などに生じる褐色調のあざで、発毛を伴うことも
ベッカー母斑(ぼはん)とは、思春期前後になってから、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざ。
いわゆる茶あざの一種で、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざである扁平(へんぺい)母斑に類似しており、色素細胞の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、ベッカー母斑が生じます。
多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。
女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。皮膚から盛り上がることはありません。
発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。
海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。通常、悪性化することはありません。
ベッカー母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。
ベッカー母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。レーザー治療の長所は、治療を行った部位に傷跡ができにくいことです。
Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースでベッカー母斑が消失したり軽快します。
有毛性のベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。
有毛性のベッカー母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。
医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。
レーザー治療が無効でベッカー母斑が再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術、植皮術などが行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。
ベッカー母斑(ぼはん)とは、思春期前後になってから、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざ。
いわゆる茶あざの一種で、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざである扁平(へんぺい)母斑に類似しており、色素細胞の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、ベッカー母斑が生じます。
多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。
女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。皮膚から盛り上がることはありません。
発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。
海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。通常、悪性化することはありません。
ベッカー母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。
ベッカー母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。レーザー治療の長所は、治療を行った部位に傷跡ができにくいことです。
Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースでベッカー母斑が消失したり軽快します。
有毛性のベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。
有毛性のベッカー母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。
医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。
レーザー治療が無効でベッカー母斑が再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術、植皮術などが行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。
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