■用語 肝外門脈閉塞症 [用語(か)]
腸などから肝臓につながる門脈が肝臓の入り口付近で詰まり、門脈圧高進症を起こす疾患
肝外門脈閉塞(かんがいもんみゃくへいそく)症とは、腸などから肝臓につながる静脈である門脈が肝臓の入り口付近で詰まる疾患。この位置で門脈が詰まると、門脈の血圧が上昇して門脈圧高進症という病態になり、さまざまな症状が起こります。
原因となる疾患の有無により、一次性と二次性に分けられます。原因が明らかでない一次性は小児に多く、二次性は成人に多いといわれています。
一次性の考えられる原因としては、門脈の先天性の奇形、新生児期や乳児期の臍(さい)炎、敗血症、腹膜炎などの炎症に伴う門脈系の凝固異常などが推測されています。二次性の原因としては、肝硬変、特発性門脈圧高進症、腫瘍(しゅよう)、血液疾患、肝外胆管炎、膵(すい)炎、開腹手術などがあります。
男性、女性を問わずに、肝外門脈閉塞症は起こり、特に男女差はありません。発症年齢では、10歳代以下と40歳代以降に好発します。一次性の年間発生者数が40~60人、二次性の年間発生者数が300~400人と推定されています。
大静脈である門脈には、腸全体を始め、脾(ひ)臓、膵臓、胆嚢(たんのう)から流れ出る血液が集まります。門脈は肝臓に入ると左右に分かれ、さらに細かく枝分かれして肝臓全体に広がります。血液は肝細胞との物質の交換を行った後は、末梢(まっしょう)の肝静脈に流れ出して、大きな3本の肝静脈に集められ、さらに下大静脈を介して体循環に戻り心臓へと向かいます。
門脈が肝臓の入り口付近で詰まり、門脈の血圧が上昇して門脈圧高進症になると、門脈から体循環に直接つながる静脈の発達が促され、肝臓を迂回(うかい)するルートが形成されます。この側副血行路と呼ばれる海綿状血管のバイパスによって、正常な体では肝臓で血液から取り除かれるはずの物質が、体循環に入り込むようになります。
側副血行路は特定の部位で発達しますが、食道の下端にできた場合は特に注意が必要で、血管が拡張し曲がりくねって、食道静脈瘤(りゅう)を形成します。拡張した血管はもろくなって出血しやすく、時に大出血を起こし、吐血や下血などの症状が現れます。
側副血行路はへその周辺部や直腸で発達することもあり、胃の上部にできた静脈瘤も出血しやすく、時には大出血となりますし、直腸にできた静脈瘤もまれに出血することがあります。
脾臓は脾静脈を通じて門脈に血液を供給しているため、門脈圧の高進はしばしば脾臓のはれを引き起こします。脾機能高進による血球破壊のために、貧血を生じることもあります。
蛋白(たんぱく)質を含む体液である腹水が肝臓と腸の表面から漏れ出して、腹腔(ふくくう)が膨張することもあります。
肝外門脈閉塞症では門脈圧が高い傾向にあり、食道静脈瘤、胃静脈瘤からの出血頻度が高いのが特徴となっています。
肝外門脈閉塞症の検査と診断と治療
内科、消化器科の医師による診断では、超音波検査、血管造影で側副血行路の海綿状血管の増生を証明することが重要で、ほかには門脈圧高進症に伴う検査を行います。
内科、消化器科の医師による治療は、門脈圧高進症に伴う食道静脈瘤、胃静脈瘤、脾腫、腹水などに対する対症療法が主体となります。中心になるのは食道静脈瘤、胃静脈瘤に対する治療で、予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。
予防的治療は、内視鏡検査により、出血しそうと判断した静脈瘤に対して行います。待機的治療は、静脈瘤の出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療は、出血している症例に止血を目的に行う治療です。緊急的治療では、出血している静脈を収縮させる薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。大出血に際しては、内視鏡的に静脈瘤を治療します。
静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法が第一選択として行われています。
内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。どちらも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への側副血行路と呼ばれるバイパスを遮断するのが目的です。
静脈瘤結紮療法は、特殊なゴムバンドで縛って静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目的となります。
胃静脈瘤に対しては、血管造影を用いた塞栓(そくせん)療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、手術では側副血行路の遮断や血管の吻合(ふんごう)術が行われます。
出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と体循環の静脈系の間にシャントと呼ばれるバイパスを形成し、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作ることがあります。静脈系の血圧のほうがはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。
脾腫を伴う場合は脾臓摘出術あるいは脾動脈塞栓術、腹水を伴う場合には利尿剤の投与などが行われます。
多くの症例では、肝機能がほぼ正常に保たれています。食道静脈瘤、胃静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば、経過は良好です。
肝外門脈閉塞(かんがいもんみゃくへいそく)症とは、腸などから肝臓につながる静脈である門脈が肝臓の入り口付近で詰まる疾患。この位置で門脈が詰まると、門脈の血圧が上昇して門脈圧高進症という病態になり、さまざまな症状が起こります。
原因となる疾患の有無により、一次性と二次性に分けられます。原因が明らかでない一次性は小児に多く、二次性は成人に多いといわれています。
一次性の考えられる原因としては、門脈の先天性の奇形、新生児期や乳児期の臍(さい)炎、敗血症、腹膜炎などの炎症に伴う門脈系の凝固異常などが推測されています。二次性の原因としては、肝硬変、特発性門脈圧高進症、腫瘍(しゅよう)、血液疾患、肝外胆管炎、膵(すい)炎、開腹手術などがあります。
男性、女性を問わずに、肝外門脈閉塞症は起こり、特に男女差はありません。発症年齢では、10歳代以下と40歳代以降に好発します。一次性の年間発生者数が40~60人、二次性の年間発生者数が300~400人と推定されています。
大静脈である門脈には、腸全体を始め、脾(ひ)臓、膵臓、胆嚢(たんのう)から流れ出る血液が集まります。門脈は肝臓に入ると左右に分かれ、さらに細かく枝分かれして肝臓全体に広がります。血液は肝細胞との物質の交換を行った後は、末梢(まっしょう)の肝静脈に流れ出して、大きな3本の肝静脈に集められ、さらに下大静脈を介して体循環に戻り心臓へと向かいます。
門脈が肝臓の入り口付近で詰まり、門脈の血圧が上昇して門脈圧高進症になると、門脈から体循環に直接つながる静脈の発達が促され、肝臓を迂回(うかい)するルートが形成されます。この側副血行路と呼ばれる海綿状血管のバイパスによって、正常な体では肝臓で血液から取り除かれるはずの物質が、体循環に入り込むようになります。
側副血行路は特定の部位で発達しますが、食道の下端にできた場合は特に注意が必要で、血管が拡張し曲がりくねって、食道静脈瘤(りゅう)を形成します。拡張した血管はもろくなって出血しやすく、時に大出血を起こし、吐血や下血などの症状が現れます。
側副血行路はへその周辺部や直腸で発達することもあり、胃の上部にできた静脈瘤も出血しやすく、時には大出血となりますし、直腸にできた静脈瘤もまれに出血することがあります。
脾臓は脾静脈を通じて門脈に血液を供給しているため、門脈圧の高進はしばしば脾臓のはれを引き起こします。脾機能高進による血球破壊のために、貧血を生じることもあります。
蛋白(たんぱく)質を含む体液である腹水が肝臓と腸の表面から漏れ出して、腹腔(ふくくう)が膨張することもあります。
肝外門脈閉塞症では門脈圧が高い傾向にあり、食道静脈瘤、胃静脈瘤からの出血頻度が高いのが特徴となっています。
肝外門脈閉塞症の検査と診断と治療
内科、消化器科の医師による診断では、超音波検査、血管造影で側副血行路の海綿状血管の増生を証明することが重要で、ほかには門脈圧高進症に伴う検査を行います。
内科、消化器科の医師による治療は、門脈圧高進症に伴う食道静脈瘤、胃静脈瘤、脾腫、腹水などに対する対症療法が主体となります。中心になるのは食道静脈瘤、胃静脈瘤に対する治療で、予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。
予防的治療は、内視鏡検査により、出血しそうと判断した静脈瘤に対して行います。待機的治療は、静脈瘤の出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療は、出血している症例に止血を目的に行う治療です。緊急的治療では、出血している静脈を収縮させる薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。大出血に際しては、内視鏡的に静脈瘤を治療します。
静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法が第一選択として行われています。
内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。どちらも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への側副血行路と呼ばれるバイパスを遮断するのが目的です。
静脈瘤結紮療法は、特殊なゴムバンドで縛って静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目的となります。
胃静脈瘤に対しては、血管造影を用いた塞栓(そくせん)療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、手術では側副血行路の遮断や血管の吻合(ふんごう)術が行われます。
出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と体循環の静脈系の間にシャントと呼ばれるバイパスを形成し、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作ることがあります。静脈系の血圧のほうがはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。
脾腫を伴う場合は脾臓摘出術あるいは脾動脈塞栓術、腹水を伴う場合には利尿剤の投与などが行われます。
多くの症例では、肝機能がほぼ正常に保たれています。食道静脈瘤、胃静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば、経過は良好です。
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