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■用語 性器閉鎖症 [用語(さ行)]



[ダイヤ]先天的に、あるいは後天的に女性性管の一部が閉鎖した状態
 性器閉鎖症とは、処女膜、 膣(ちつ)、子宮などの女性性管の一部が閉鎖した状態。鎖陰(さいん)とも呼ばれます。
 先天的に発生することが多いものの、後天的に外傷や炎症などのために起こることもあります。性器閉鎖症に属する主なものに、処女膜閉鎖症、膣閉鎖症(膣横隔)、膣狭窄(きょうさく)症、膣欠損症があります。
 処女膜閉鎖症は、膣口部を取り囲むヒダ状の器官で通常、中央部は開いているはずの処女膜が、完全にふさがっている状態。そのために閉鎖した膣内や子宮、卵管に月経血、分泌物などがたまり、下腹部痛を起こしたり、しこりを生じたり、腰痛を起こしたりします。また、膀胱(ぼうこう)刺激症状や排便痛を起こすこともあります。
 膣閉鎖症は、ほとんどが膣の上部3分の1と膣の下部3分の2との境界部に好発し、腎臓(じんぞう)の奇形を合併することもあります。処女膜閉鎖症と同様、思春期以降に潜伏月経が起こっても、流出路が閉鎖しているために月経血が排出されずに膣内や子宮、卵管にたまり、月1回、定期的にかなり強い下腹部痛を起こします。
 月経血の貯留が高度になると、下腹部にしこりを感じ、排尿障害、排便障害、腰痛、持続的な腹痛が起こることもあります。大量の貯留が長期間放置されると、子宮や膣が過伸展、変形して、後に不妊症の原因になることもあります。
 膣狭窄症は、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じる先天性のものと、小児期のジフテリアや、はしか(麻疹〔ましん〕)などによる膣炎の後遺症として生じた癒着による後天性のものとがあります。
 狭窄の程度によって全く症状を欠く場合もありますが、高度の場合は月経血の排出障害、分泌物の貯留を起こしたり、膣炎が起きたり、異常な下り物をみることもあります。膣が狭いために、性行為に問題を抱えます。
 処女膜閉鎖症、膣閉鎖症、膣狭窄症はいずれも、思春期に初経がこないため婦人科を受診し、発見される例がほとんどです。
 膣欠損症は、先天的に女性の膣の一部、または全部が欠損した状態で、膣や子宮の異常がさまざまな程度に起こります。染色体は正常女性型で、卵巣はほとんど正常にあり、女性ホルモンも正常に出ています。外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常です。
 膣狭窄症と同様、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じ、子宮はわずかに痕跡(こんせき)を残す程度にしか発育せず、膣も長さが2~3センチと短いか、全くない状態になります。はっきりした原因はまだわかっていませんが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなり、正常な発生ができなくなると推測されています。
 膣欠損症は、医学的には上部膣欠損、下部膣欠損、全膣欠損に分類されます。頻度は4000~5000人に1人とされ、そのうち95パーセントは月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。
 全膣欠損で機能性子宮を持たない場合をロキタンスキー症候群と呼び、膣欠損の中で最も頻度が高いものです。月経機能を失っている状態で、月経血の貯留による症状はなく、無月経がほぼ唯一の症状となります。卵巣からの排卵はありますが、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。
 一部の膣欠損で機能性子宮を持つ場合には、思春期以降、月経に伴って子宮や卵管への月経血の貯留を起こすため、月経血をみないまま周期的な腹痛が出現する月経モリミナという症状が現れます。
 また、機能性子宮の有無にかかわらず、普通の性行為はできません。まれに、骨の異常があることもあります。
 膣欠損症に気付いたら、婦人科医、ないし産婦人科医を受診してください。
[ダイヤ]性器閉鎖症の検査と診断と治療
 婦人科、産婦人科、あるいは小児科の医師による性器閉鎖症の診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。
 医師による処女膜閉鎖症、膣閉鎖症(膣横隔)の治療は、閉鎖部位を切開して、月経血や分泌物などの通り道を作れば解決し、後遺症もなく治ります。軽度の処女膜閉鎖症では、簡単な十字切開手術ですみます。膣閉鎖症では、膜様閉鎖では切開のみで問題ありませんが、閉鎖部が厚い場合には輪状切開を行います。この輪状切開を行った場合には、手術後の瘢痕(はんこん)性委縮に注意する必要があります。
 処女膜閉鎖症、膣閉鎖症の場合には、閉鎖している部分を切開して完治するので性交渉も可能になります。卵巣および子宮は正常なので、その後の月経も含めて問題はなくなり、正常な妊娠、出産も可能になります。ただし、長期間放置して診断が遅れた場合には、卵管卵巣の壊死(えし)や破裂による腹膜炎を来すことがあります。
 膣狭窄症の治療は、程度に応じて頸管(けいかん)拡張器による膣腔(ちつくう)の拡大、狭窄部の小切開、さらに全体的膣形成までさまざまな手術が行われます。
 膣欠損症の治療では、性行為ができるように人工的に膣を造る造膣手術を行います。子宮に異常を伴う場合には妊娠が不可能な場合もあり、造膣手術により性行為を可能にして精神的不具感をいやすことが治療の主眼となります。手術は、思春期以降の性的関係を持つ時期を目安に行われます。
 造膣手術には数多くの術式があり、今なおさまざまな工夫が試みられています。主な術式は、フランク法、マッキンドー法、ダビドフ法、ルーゲ法の4つです。
 フランク法は、膣前庭(ぜんてい)をヘガール持針器などで圧伸して膣腔を形成したのち、その膣腔を拡張する方法。マッキンドー法は、出血を余儀なくされる処置で膣腔を形成したのち、皮膚移植により膣壁を形成する方法。ダビドフ法は、出血を余儀なくされる処置で膣腔を形成したのち、骨盤腹膜を利用して膣壁を形成する方法。ルーゲ法は、出血を余儀なくされる処置で膣腔を形成したのち、開腹してS状結腸を切り離し、膣壁として利用する方法。
 以上4つの方法が従来行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術が行われることも増えてきました。患者の体にかかる負担を軽減し、骨盤腹膜やS状結腸を使った手術が可能となっています。
 このような手術の後には、膣管の状態を維持する必要があります。定期的な性交渉やプロテーゼ(膣ダイレーター)により、状態を保たなければいけません。プロテーゼ(膣ダイレーター)とは、筒状の拡張器具のことを指し、皮膚を伸展させて膣管を形成する目的で使用されます。


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