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■用語 ボクサー骨折 [用語(ほ)]

[パンチ]拳を握った状態での殴打により、自らの中手骨の頸部が折れる外傷
 ボクサー骨折とは、ボクシングや空手などのスポーツで、拳(こぶし)を握った状態で相手や物を殴打することによって、自らの手のひらの骨である中手骨(ちゅうしゅこつ)の頸部(けいぶ)が折れる外傷。中手骨頸部骨折とも呼ばれます。
 パンチ力の強いボクシング選手が、対戦相手の頭を強く殴打し、拳を握った状態でできる平らな面で、親指以外の4本指の第2、第3関節の間の部分、いわゆるナックルパートで正確に当たっていない場合に、よく発生します。
 実際には、ボクシングでの発生は意外に少なく、一般の人がけんか相手やゲームセンターのパンチングマシーンを殴打して発生するケースがほとんどを占めます。また、乗り物のハンドルを握ったまま正面から交通事故に遭うなどしたケースでも、衝撃による外力が手指の付け根にある中手指節関節(MP関節)から中手骨の長軸に向かうことで発生します。
 ボクシング選手では人差し指や中指の中手骨に、一般の人では薬指や小指の中手骨に発生することが多く、外傷の衝撃後に激痛、特定部位の圧痛、手の甲や時に指先までのはれ、変形、手や手指の機能不全、運動障害などが急激に現れます。
 とりわけ、中手骨頸部の骨頭が手のひら側に曲がる屈曲変形を来すため、拳がつぶれた状態になります。後遺症として、指の動きが悪くなる、握ると指が重なる、指の力が弱くなるなどが現れることもあります。
 ボクサー骨折が発生した際は、応急処置として患部を氷などで冷やしてはれを抑え、患部を固定し、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。
 患部の固定には添え木とテーピングが必要ですが、応急措置で適当な添え木がない場合は、親指以外なら隣の指を添え木として利用できます。例えば、中指の中手骨を骨折した場合は中指と薬指を2本まとめてテープで巻けば十分です。
[パンチ]ボクサー骨折の検査と診断と治療
 整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、手指の付け根の中手指節関節(MP関節)にあって、握ると盛り上がる拳がへこんでいて、痛みやはれを認めることで、ボクサー骨折と判断します。
 X線(レントゲン)検査を行うと、中手骨に骨折線を確認でき、特に側面から見た画像で骨折の屈曲変形が明らかになります。
 整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、屈曲変形を手で整復した上で、スプリント材で手全体にスプリント固定を施し、三角巾などを使って吊(つ)り包帯での挙上を行います。
 屈曲変形の整復状態を保存療法で保持するのが困難な場合は、ピンなどを用いて中手骨頸部を固定する手術的処置を行います。腱の損傷を合併した場合も、手術的処置を行います。
 予防法としては、正確にナックルパートで当たるように打つこと、厚めのグローブを使用することなどです。




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■用語 母子血液型不適合妊娠 [用語(ほ)]

[雷]母親と胎児の血液型や産生抗体の相性が悪いために、新生児溶血性黄疸が引き起こされる可能性のある妊娠
 母子血液型不適合妊娠とは、母親と胎児の血液型や産生抗体の相性が悪いために、新生児溶血性黄疸(おうだん)が引き起こされる可能性のある妊娠。血液型不適合妊娠とも呼ばれます。
 新生児溶血性黄疸は、さまざまな原因により新生児の赤血球が急激に破壊され、生後24時間以内に出現する早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患で、この母子血液型不適合妊娠や母体の疾患によるもの、新生児の赤血球の先天異常によるもの、薬剤や感染によるものの大きく3つに分けられます。
 この中では、母子血液型不適合妊娠に伴う新生児溶血性黄疸が最も多くみられ、母親と新生児の間のABO式血液型不適合妊娠、およびRh式血液型不適合妊娠が代表的です。
 ABO式血液型不適合妊娠は、O型の母親がA型もしくはB型の子供を妊娠した場合に起こるものです。このABO式血液型不適合妊娠は全出生の約2パーセントに認められ、ABO式血液型不適合溶血性黄疸の発症頻度は3000人に1人です。
 Rh式血液型不適合妊娠は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を妊娠した場合に起こるものです。Rh式血液型不適合妊娠は、ABO式血液型不適合妊娠に比べて重症化することが多くなっています。
 どちらの場合も、新生児の血液型抗原が母親に欠如している場合、その血液型抗原に感作されて、これに対する抗体が母親の血液中に産生されます。この抗体は、流産や出産時の胎盤剥離(はくり)の際に、少量の胎児赤血球が母体の血液に入って産生されることが多いため、普通、初回の妊娠では新生児溶血性黄疸は起こりません。
 2回目以降の妊娠中には、母親の血液中の抗体が胎盤を通過して胎児の血液中に入ると、抗原抗体反応が起こり、胎児の赤血球が破壊(溶血)される際に、その中のヘモグロビン(血色素)から作られる大量のビリルビン(胆汁色素)ができてしまうことがあります。ビリルビンが胎児の体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなる黄疸を来します。
 ABO式血液型不適合溶血性黄疸は、初回の妊娠から起こり、第1子から発症する可能性もあります。一方、Rh式血液型不適合溶血性黄疸は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を産み、次回の妊娠で胎児がRh陽性である場合に問題になります。日本人のRh陰性の頻度は、約0・5パーセントとされ、200人に1人です。
 なお、輸血歴のある女性が輸血血液に感作され、妊娠出産時に特殊な母子血液型不適合妊娠を示す可能性もあります。
 赤血球の破壊(溶血)は、胎児や新生児に貧血をもたらすほか、出生後の新生児に重症黄疸をもたらします。
 妊娠中は、大量にできたビリルビンが胎盤を通じて母体へ排出されるため、胎児の黄疸は軽くてすみます。ところが、破壊(溶血)が強い場合は、貧血によって心不全、胎児水腫(すいしゅ)となり、胎内で死亡することもあります。
[雷]母子血液型不適合妊娠の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断では、ABO式、Rh式血液型など母子間の血液型不適合の有無を調べます。母子間に血液型不適合があり、母体血液中に胎児の赤血球に感作された結果生じた抗体が認められた場合や、新生児の赤血球に胎盤を通して移行してきた母親由来の抗体が認められた場合に、診断が確定します。
 小児科の医師による治療では、新生児の血液中のビリルビン値により、光線療法や、免疫グロブリンの点滴静注を行い、新生児溶血性黄疸の改善に努めます。重症例では、交換輸血が必要です。
 光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、脂溶性の間接型ビリルビンを水溶性のサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。水に溶けやすいサイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。
 光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。
 免疫グロブリンの点滴静注は、第2子以降のRh式血液型不適合溶血性黄疸を予防するための治療で、第1子出産直後に、抗Rh抗体を含むγ(ガンマ)グロブリンを母体に点滴静注し、2回目以降の妊娠の際に胎児の血液中で抗原抗体反応が起こらないようにします。
 なお、Rh式血液型不適合妊娠において、妊娠中に胎児が溶血性黄疸にかかって極度の貧血になり死亡してしまう恐れが場合は、治療として早期に出産させて交換輸血を行うか、子宮内胎児輸血を行う必要があります。
 子宮内胎児輸血には、超音波ガイド下に胎児の腹腔(ふくくう)内に母体側の抗体によって溶血されないRh陰性の濃厚赤血球を注入する胎児腹腔内輸血法と、直接胎児の血管内に輸血する胎児血管内輸血法の2つがあります。

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■用語 ボーエン様丘疹症 [用語(ほ)]

[ダイヤ]ヒト乳頭腫ウイルスが感染して、性器にいぼができる疾患
 ボーエン様丘疹(きゅうしん)症とは、主にヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)16型が感染して、性器や肛門(こうもん)周囲などにいぼができる疾患。ボーエン様丘疹症は皮膚科での呼び名で、婦人科では外陰上皮内腫瘍(しゅよう)と呼ばれます。
 性行為感染症の1つとされており、一般に20~30歳代の性活動が盛んな年代に多くみられ、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。
 性的パートナーがウイルスを体内に保有しているキャリアならほぼ感染するほど、ヒト乳頭腫ウイルスの感染力は強く、皮膚や粘膜との直接的または間接的な接触により感染し、唾液(だえき)、血液、生殖器からの分泌液などの体液からは感染しません。
 感染後3週間から6カ月程度で、性器に2ミリから1センチくらいの黒褐色のいぼ、すなわち丘疹が多発します。個々の丘疹が癒合して、大きな平面状になることもあります。
 同じ性行為感染症の1つで、ヒト乳頭腫ウイルス6型と11型が感染して、性器に1ミリから3ミリくらいのカリフラワー状の丘疹を生じる尖圭コンジロームと、区別が付きにくい場合もあります。混合感染して、ボーエン様丘疹症と尖圭コンジロームを一緒に発症することもあります。
 また、ボーエン様丘疹症の病変は、病理組織学的にはボーエン病の病変に類似しているとされています。ボーエン病は、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病で、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つです。
 しかし、比較的若い人に生じたボーエン様丘疹症が悪性化することは少なく、90パーセントは体内の免疫力で数カ月から3年以内で、ウイルスは自然消滅します。
 10パーセントはウイルスが細胞の中に残り、その中の10パーセントから20パーセントは悪性で、さらにその中の10パーセントは子宮頸(けい)がんや口腔(こうくう)がん、舌がん、喉頭(こうとう)がん、肛門がんを発症するリスクがあります。
 ボーエン様丘疹症の受診科は、泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科(女性)となります。
[ダイヤ]ボーエン様丘疹症の検査と診断と治療
 泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尖圭コンジロームや、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジロームなどのほかの疾患と鑑別します。
 判断が難しい場合は、いぼの一部を切除して顕微鏡で調べる組織検査で判定することもあります。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。
 泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による治療では、一緒にできることもある尖圭コンジロームの場合と同じで、いぼが小さくて少数なら、局所免疫調節薬であるイミキモド軟こう、ポドフィリン液、5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれています。
 一般的には、液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。改善しない場合や悪性化が疑われる場合は、外科的切除も考慮します。
 診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。また、子宮頸がんなどの発症の可能性があるという観点から、治癒が確認できるまで治療、あるいは経過観察を怠らないようにすべきです。ヒト乳頭腫ウイルス16型に長期間感染していると、子宮頸がんを発症する可能性があると考えられています。
 なお、ボーエン様丘疹症を生じた男性の性的パートナーである女性は、子宮頸がんの発症に注意し、検診を定期的に行うことが勧められます。




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■用語 捕捉性ニューロパチー [用語(ほ)]

[ダイヤ]末梢神経が周りの組織に圧迫されて異常を生じ、しびれや痛みなどの神経障害を招く疾患
 捕捉(ほそく)性ニューロパチーとは、末梢(まっしょう)神経が周りの組織に圧迫されて異常を生じ、しびれや痛み、筋力低下などの神経障害を招く疾患。機械的神経障害、あるいは絞扼(こうやく)性神経障害とも呼ばれます。
 ニューロパチーは、脳や脊髄(せきずい)から分かれた後の、体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態で、末梢神経障害とも呼ばれ、以前は神経炎と呼ばれていました。
 捕捉性ニューロパチーは普通、1本の神経にだけに起こる単神経炎の形をとり、上肢では正中(せいちゅう)神経まひ、尺骨(しゃくこつ)神経まひ、橈骨(とうこつ)神経まひ、下肢では腓骨(ひこつ)神経まひがよく起こります。
[ダイヤ]手にとって最も重要な神経が障害を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす正中神経まひ
 正中神経まひは、手にとって最も重要な神経である正中神経が障害を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす疾患。その傷害は、鋭敏な感覚と巧緻(こうち)性を要求される手にとって致命的なダメージになります。
 正中神経は、親指から薬指の親指側2分の1までの手のひら側の感覚を支配し、前腕部では前腕を内側にひねるように回す運動である回内や、手首の屈曲、手指の屈曲を支配しています。さらに、手部では親指の付け根の母指球筋という筋肉などを支配していて、親指を手の平と垂直に立てる運動である外転、親指と小指をつける運動である母指対立などを支配しています。
 正中神経の傷害がどこで生じているかによって、正中神経まひの症状は異なります。
 正中神経は手首部にある手根管という狭いトンネルを通り抜ける構造になっており、周囲三方向を手根骨の壁、残りの一方は強靭(きょうじん)な横手根靱帯(じんたい)によって囲まれています。そのため、この部分で正中神経が圧迫されやすい構造になっており、容易に正中神経が損われて正中神経まひを起こします。これを手根管症候群といいます。
 手根管症候群の初期には人差し指、中指がしびれ、痛みが出ますが、最終的には親指から薬指にかけての親指側にしびれ、痛みが出ます。
 このしびれ、痛みは明け方に強く、目を覚ますと指がしびれ、痛みます。ひどい時は夜間の睡眠中に、痛みやしびれで目が覚めます。この際に手を振ったり、指を曲げ伸ばしすると、楽になります。手のこわばり感もあります。
 進行すると親指の付け根の母指球筋がやせてきて、親指と人差し指できれいな丸(OKサイン)ができなくなります。細かい作業が困難になり、縫い物がしづらくなったり、細かい物がつまめなくなります。
 手根管症候群は原因が見いだせない特発性というものが多く、原因不明とされています。妊娠期や出産期、更年期の女性に多く生じるのが特徴で、骨折や脱臼(だっきゅう)などのけが、仕事やスポーツでの手の使いすぎ、腎不全のために人工透析をしている人などにも生じます。腫瘍(しゅよう)や腫瘤(しゅりゅう)などの出来物でも、生じることがあります。
 妊産婦と中年の女性にはっきりした原因もなく発症する特発性の手根管症候群は、女性のホルモンの乱れによって、正中神経とともに手根管を通っている滑膜性の腱鞘(けんしょう)がむくむのが誘因と考えられ、手根管の内圧が上がり、圧迫に弱い正中神経が偏平化して症状を示すと見なされています。けがによるむくみや、手の使いすぎによる腱鞘炎などでも、同様に正中神経が圧迫されて症状を示すと見なされています。
 前腕から手首までの間の正中神経の傷害では、手根管症候群と同様に、親指から薬指にかけての親指側のしびれと痛み、親指の付け根の母指球筋の障害を示します。肘(ひじ)より上のレベルの外傷による正中神経の傷害では、まひの程度はさまざまです。
 指にしびれ、痛みがあり、朝起きた時にひどかったり、夜間睡眠中に目が覚めるようなら、整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。
[ダイヤ]肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる尺骨神経まひ
 尺骨神経まひは、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる疾患。
 尺骨神経の働きは、手首の屈曲、小指と薬指の屈曲、親指を人差し指の根元にピッタリつける内転、親指以外の4本の指を外に開く外転、4本の指を互いにくっつける内転です。 知覚神経は、小指、薬指の小指側半分、手のひらの小指側半分を支配します。
 尺骨神経には2カ所、圧迫を受けやすい部位があります。最も多いのは肘関節部で、机の上で肘をついていて手がビリビリした経験は多くの人が持っているはずですが、その部位を長時間に渡って圧迫したり、無理に肘を曲げる姿勢をとることで症状が現れ、肘部管(ちゅうぶかん)症候群と呼ばれます。
 リウマチや肘の骨折、腫瘍、腫瘤などで肘関節に変形のある場合には、特に誘因がなくても圧迫症状が起こり得ます。
 次に多い圧迫部位は小指側の手のひらで、長距離自転車選手、繰り返す腕立て伏せ、タイル張りなど長時間の床仕事などで、手のひらを圧迫することにより症状が現れ、ギヨン管症候群(尺骨神経管症候群)と呼ばれます。
 尺骨神経が侵されると、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋がまひし、細かい動きがうまくできない巧緻運動障害が生じます。また、小指と薬指が伸びにくくなったり、親指以外の4本の指での内外転と、親指の内転ができなくなります。
 日常生活で気付くことには、小指の内転困難によってポケットに手を入れようとすると小指が引っ掛かってしまうこと、親指の内転困難によって親指と人差し指で新聞紙などを挟む力が弱くなることなどがあります。また、小指と薬指にしびれや感覚障害を起こします。
 重症で慢性の尺骨神経まひでは、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮が生じ、筋肉が固まって指が曲がったままになる鉤(かぎ)爪変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる現象が起こります。
[ダイヤ]腕に走る橈骨神経が圧迫されて、腕がしびれたり、動かなくなる橈骨神経まひ
 橈骨神経まひは、腕の骨を巻くように、鎖骨の下から手首、手指まで走っている神経が、外から圧迫されることで起こる障害。腕がしびれたり、手首や手指が動かなくなったりします。
 橈骨神経は腕に走る大きな神経の1つで、主に肘関節を伸ばしたり縮めたり、手首や手指を伸ばしたりするなどの動きを支配している神経です。感覚領域は手の背部で、親指、人差し指とそれらの間の水かき部を支配しています。
 腕に走る大きな神経はほかに、正中神経、尺骨神経がありますが、橈骨神経は障害を受けやすく、腕の神経まひのほとんどを占めます。
 この橈骨神経は鎖骨の下からわきの下を通り、上腕の外側に出てきて上腕中央部で上腕骨のすぐ上を走り、肘のあたりで腕の内側を走り、手首の近くでまた表面に出てきます。このようにいろいろな方向に走っていますので、いろいろな部位で圧迫を受ける可能性があります。中でも、橈骨神経が障害されやすい部位は2カ所あります。
 1カ所はわきの下での圧迫、もう1カ所は上腕の外側での圧迫です。特に上腕の外側、いわゆる二の腕の部位は、上腕骨に接するように橈骨神経が走行し、筋肉が薄い部位であるために、上腕骨に橈骨神経が圧迫されやすい状況にあり、最も障害を受けやすい部位です。
 橈骨神経まひの原因は、大きく分けて2つあります。一番多いのが、腕の橈骨神経を体外から強く圧迫したことで起こる末梢性の神経まひです。
 典型的には、前夜から腕枕をして寝ていた、ベンチの背もたれにわきの下を挟むような姿勢を続けていた、電車で座席の横のポールに腕を当てて寝ていた、飛行機で肘掛けに寄り掛かるように寝ていた、浴槽でわきの下を圧迫するようにうたた寝していたなど、わきの下や上腕の外側を強く圧迫するような姿勢を一定時間続けると、気付いた時には腕はしびれ、動かなくなっていたというように発症するケースが多く認められます。飲酒後、寝て起きたら、橈骨神経まひになっていたというケースも多く認められます。
 何らかの思い当たる原因があって手が動かなくなったのであれば、まず末梢性のもので一時的な神経まひと考えられます。逆に、全く何の覚えもなく発症した時は、腫瘤などほかの原因から起きている場合もありますので、要注意です。
 橈骨神経まひのもう1つの原因は、骨折、脱臼などの外傷による外傷性の神経まひで、外からの圧迫で神経を傷付けたり、骨折した骨が神経を傷付けたりといったケースです。
 橈骨神経が上腕の中央部で傷害されると、手首と手指の付け根の関節に力が入らず伸ばしにくくなり、手首と手指がダランと垂れる下垂手になります。親指、人差し指、中指の伸ばす側を含む手の甲から、前腕の親指側の感覚の障害も生じます。
 橈骨神経が肘関節の屈側で傷害されると、手首を伸ばすことは可能ですが、手指の付け根の関節を伸ばすことができなくなり、指のみが下がった状態になる下垂指になります。手の甲から前腕の感覚の障害がありません。
 橈骨神経が前腕から手首にかけての親指側で傷害を受けると、障害の部位によりいろいろな感覚の障害が起こりますが、下垂手にはなりません。
 共通する症状は、グーが握れなくなる、パーに開けなくなる、しびれです。まひの程度が重いほど、パーに開けなくなる症状が顕著です。手首の筋力が著しく弱くなるため、ちょっとした物でも持ち上げられなくなります。また、感覚の鈍さが現れ、親ペンなどをうまく持てず、字もうまく書けません。親指と人差し指の水かき部分のしびれ、腕のだるさや痛み、腕や手のひらのむくみなどがよくみられる症状です。
 まひの状態が長く続くと、筋肉の委縮が起こり、腕の筋肉がやせ細ってきます。
 手がしびれ、動かなくなった場合のほとんどは、末梢性のもので一時的な神経まひと考えられますが、中には重症の場合があるので、念のために整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。
[ダイヤ]自力で足首、足指を上げることができなくなり、感覚の障害、しびれが生じる腓骨神経まひ
 腓骨神経まひは、足関節と足指、下腿(かたい)外側に支配領域を持っている腓骨神経がまひし、自力で足首や足指を上げることができなくなる疾患。
 腓骨神経は、下腿を走行する神経であり、膝(ひざ、しつ)関節の後方で坐骨(ざこつ)神経から分岐し、膝の外側を通り、腓骨の側面を下降して、足関節を通り足指に達します。
 腓骨神経まひの原因として最も多いのは、膝の外側(腓骨頭部)への外部からの圧迫により生じるものです。車に同乗中、交差点で出合い頭の衝突事故が起こり、膝の外側をダッシュボードに打ちつけるといった形での腓骨頭骨折や、その他の膝の外傷、開放創や挫傷(ざしょう)などによって生じます。下肢の牽引(けんいん)などで仰向けに寝た姿勢が続いたり、ギプス固定をしている時に、膝の外側が後ろから圧迫されて生じることもあります。
 長時間に渡って足を組む姿勢をとることや、草むしりのような膝を曲げた姿勢をとること、硬い床の上で横向きに寝ることで生じることもあります。関節リウマチによる関節の変形、ガングリオン(結節腫)などの腫瘤、腫瘍によっても生じます。
 腓骨神経まひが生じると、足首や足指が下に垂れたままの状態となり、自力で背屈ができなくなります。これを下垂足(垂れ足)といいます。下腿の外側から足背(足の甲)ならびに小指を除いた足指背側にかけて感覚が障害されて、しびれたり、触った感じが鈍くなります。
 具体的には、下垂足が明らかでない時でも、障子の敷居で足を引っ掛けたり、スリッパやサンダルが歩いているうちに脱げやすいといった症状がみられることがあります。
 下垂足が明らかになると足首と足指が下に垂れた状態となるため、靴下や靴を履く際には、その都度座って片手で足を支えないと、うまく履くことができません。車の運転でも、右足にまひが起こればアクセルやブレーキを踏むことはできません。
 重症になると、正座、和式トイレの使用はできず、下腿をしっかり保持できないので、杖(つえ)の使用が常時必要となります。深刻なのは、下腿部の疼痛(とうつう)と筋拘縮(こうしゅく)です。下腿部には常にしびれたような疼痛が持続して、血流障害が発生し、下腿全体の筋肉が拘縮、委縮を示します。放置すれば、下腿は廃用性委縮となり、スカートを身に着けることができなくなります。
[ダイヤ]捕捉性ニューロパチーの検査と診断と治療
 整形外科、神経内科の医師による正中神経まひの診断では、神経伝導検査と筋電図検査を行うことで、正中神経の障害の程度や正確な障害部位が評価できます。
 手根管症候群による正中神経まひの場合は、手首の手のひら側を打腱器などでたたくとしびれ、痛みが指先に響きます。これをティネル様サイン陽性といいます。手首を手のひら側に最大に曲げて保持し、1分間以内にしびれ、痛みが悪化するかどうかをみる誘発テストを行い、症状が悪化する場合はファレンテスト陽性といいます。母指球筋の筋力低下や筋委縮も診ます。
 神経伝導検査と筋電図検査を行い、手根管を挟んだ正中神経の伝導速度を測定します。正中神経を電気で刺激してから筋肉が反応するまでの時間が、手根管症候群では長くなります。知覚テスターという機器で感覚を調べると、手根管症候群では感覚が鈍くなっています。腫瘤が疑われるものでは、エコーやMRIなどの検査を行います。
 首の病気による神経の圧迫や、糖尿病性神経障害、手指のほかの腱鞘炎との鑑別も行います。
 整形外科、神経内科の医師による治療では、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服薬、塗布薬、運動や仕事の軽減、手首を安静に保つための装具を使用した局所の安静、腱鞘炎を治めるための手根管内腱鞘内へのステロイド剤注射など、保存的療法が行われます。
 保存的療法が効かない難治性のものや、母指球筋のやせたもの、骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものなどは、手術が必要になります。以前は手のひらから前腕にかけての大きな皮膚切開を用いた手術が行われていましたが、現在はその必要性は低く、靭帯を切って手根管を開放し、神経の圧迫を取り除きます。手根管の上を4~5cm切って行う場合と、手根管の入り口と出口付近でそれぞれ1~2cm切って内視鏡を入れて行う場合とがあります。
 とりわけ母指球筋のやせたものは、手術を含めた早急な治療が必要となります。母指球筋のやせた状態が長く続くと、手根管を開放する手術だけでは回復せず、腱移行術という健康な筋肉の腱を移動する手術が必要になります。
 整形外科、神経内科の医師による尺骨神経まひの診断では、損傷した神経の位置の特定するために、神経伝導試験を行います。親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮や鉤爪変形、両手の親指と人差し指で紙をつまみ、紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。
 感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。
 整形外科、神経内科の医師による治療は通常、筋肉の硬直を防ぐために理学療法で治療します。肘の圧迫や長時間の肘の屈曲など、明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善と局所の安静で軽快することが多い傾向にあります。ビタミン剤の内服も有効と考えられます。
 筋委縮を起こしている場合や、骨折や腫瘤などよって肘関節に変形を起こしている場合では、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱移行手術が行われます。
 整形外科、神経内科の医師による橈骨神経まひの診断では、上腕の中央部の傷害で下垂手を示して感覚障害があり、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。
 知覚神経が傷害されていれば、チネルサインと感覚障害の範囲で、傷害部位の診断が可能です。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。
 整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものに対しては、局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具、運動療法などの保存療法を行います。薬剤内服では、発症早期にメチルコバラミンや副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤などを服用することが有用です。予後はおおむね良好で、多くの場合1~3カ月で完治します。
 3カ月ほど様子を見て全く回復しないもの、まひが進行するもの、骨折などの外傷で手術が必要なもの、腫瘤のあるものでは、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱移行手術が行われます。
 整形外科、神経内科の医師による腓骨神経まひの診断では、下垂足を示して感覚障害があり、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。
 腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアや坐骨神経障害との鑑別診断が、必要なこともあります。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行います。
 整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものは、保存療法を行います。保存療法には、圧迫の回避・除去、局所の安静、薬剤内服、運動療法などがあります。症状が軽く、足を組むなどの明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善で軽快することがほとんどです。
 3カ月ほど様子を見て回復しないもの、まひが進行するものでは、手術が必要になります。骨折などの外傷や腫瘤によるものは、早期に手術が必要です。
 神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱移行手術が行われます。下垂足のままだと、歩くことも困難で日常生活を送るのにも非常に不便ですから、足首を固定する距腿(きょたい)関節固定術が行われることもあります。




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