■病気 絨毛がん [病気(さ行)]
妊娠した女性の胎盤を作っている絨毛組織から発生するがん
絨毛(じゅうもう)がんとは、妊娠した女性の胎盤を作っている絨毛組織から発生するがん。
胎盤は、子宮と胎児との間でガスや栄養、老廃物を交換する器官で、母胎由来の組織と胎児由来の組織からできています。絨毛組織は胎児由来の組織であり、母胎に接する部分にあります。この絨毛組織から発生する疾患には、絨毛がんのほかに胞状奇胎、侵入胞状奇胎などがあり、絨毛性疾患と総称されます。
ほとんどの絨毛がんは、妊娠の後に発生する妊娠性絨毛がんです。大部分は子宮に病巣を作りますが、肺などの転移巣だけが認められて、子宮に病巣が見付からないこともあります。まれに、妊娠とは無関係に、卵巣や精巣にある生殖細胞から非妊娠性絨毛がんが発生することがあります。
絨毛がんのほとんどを占める妊娠性絨毛がんは、約半数が胞状奇胎後に、4分の1が正常妊娠後に、残りの4分の1が流産や子宮外妊娠後に発生します。逆に、胞状奇胎の中の約20パーセントが侵入胞状奇胎や絨毛がんになります。
そのために、胞状奇胎の治療後は定期検診が重要です。胞状奇胎の治療後に定期検診を受けている場合は、無症状の段階で絨毛がんが発見できます。
自覚症状としては、生理以外の不正性器出血や、下り物の増量がみられます。子宮、卵巣のはれや腹腔(ふくくう)内出血による下腹部痛が起こることもあります。つわりが生じることもあります。肺への転移により、胸痛、せき、血痰たん、呼吸困難が起こる場合もあります。
かつては、絨毛がんが肺、腟(ちつ)、肝臓、脳などに血行性転移を非常に起こしやすかったため、致死的とされてきました。近年では、抗がん剤による化学療法により大部分が治癒するようになりました。
絨毛がんの検査と診断と治療
絨毛性疾患は初めは正常妊娠と変わらないので、早期発見は必ずしも容易ではありません。生理以外の不正性器出血を認めた場合、出産や流産の後に子宮が大きくなってきた場合、妊娠したのに予想したような胎児の動きを感じない場合は、婦人科、産婦人科の専門医を受診します。
医師の側では、絨毛がんなどの絨毛性疾患が疑われた場合には、血液中および尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンを測定します。絨毛性疾患では、このホルモンが高値となります。ただし、正常妊娠や流産、子宮外妊娠でもhCGは高値となります。
子宮およびその他の腹部臓器への病変の広がりは、婦人科的な診察や腹部超音波検査、MRI検査、CT検査によって調べます。超音波検査などにより、豊富な血流像が観察されます。骨盤内の血管造影を行うこともあります。
絨毛性疾患は肺への転移が高率にみられるので、胸部単純X線写真も撮影します。肺への転移や神経症状がある場合は、脳への転移の有無を頭部CT検査、MRI検査で調べます。
子宮、腟、肺などの病変を切除して、病理学的に診断を確定することもあります。しかし、hCGが異常に高い場合は病理学的診断を行わずに、臨床的に診断することも少なくありません。この場合は、経過や転移部位などを点数化した絨毛がん診断スコアを用いて、臨床的侵入奇胎と臨床的絨毛がんとの区別をします。
絨毛性疾患に対する治療としては、抗がん剤による化学療法が非常に有効です。侵入奇胎に対しては通常1種類の抗がん剤による治療を行いますが、絨毛がんの場合は3〜5種類の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法を行います。
化学療法のみで効果が不十分な時は、病巣を切除する手術や、高エネルギーX線を用いる放射線療法を組み合わせて行います。
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絨毛(じゅうもう)がんとは、妊娠した女性の胎盤を作っている絨毛組織から発生するがん。
胎盤は、子宮と胎児との間でガスや栄養、老廃物を交換する器官で、母胎由来の組織と胎児由来の組織からできています。絨毛組織は胎児由来の組織であり、母胎に接する部分にあります。この絨毛組織から発生する疾患には、絨毛がんのほかに胞状奇胎、侵入胞状奇胎などがあり、絨毛性疾患と総称されます。
ほとんどの絨毛がんは、妊娠の後に発生する妊娠性絨毛がんです。大部分は子宮に病巣を作りますが、肺などの転移巣だけが認められて、子宮に病巣が見付からないこともあります。まれに、妊娠とは無関係に、卵巣や精巣にある生殖細胞から非妊娠性絨毛がんが発生することがあります。
絨毛がんのほとんどを占める妊娠性絨毛がんは、約半数が胞状奇胎後に、4分の1が正常妊娠後に、残りの4分の1が流産や子宮外妊娠後に発生します。逆に、胞状奇胎の中の約20パーセントが侵入胞状奇胎や絨毛がんになります。
そのために、胞状奇胎の治療後は定期検診が重要です。胞状奇胎の治療後に定期検診を受けている場合は、無症状の段階で絨毛がんが発見できます。
自覚症状としては、生理以外の不正性器出血や、下り物の増量がみられます。子宮、卵巣のはれや腹腔(ふくくう)内出血による下腹部痛が起こることもあります。つわりが生じることもあります。肺への転移により、胸痛、せき、血痰たん、呼吸困難が起こる場合もあります。
かつては、絨毛がんが肺、腟(ちつ)、肝臓、脳などに血行性転移を非常に起こしやすかったため、致死的とされてきました。近年では、抗がん剤による化学療法により大部分が治癒するようになりました。
絨毛がんの検査と診断と治療
絨毛性疾患は初めは正常妊娠と変わらないので、早期発見は必ずしも容易ではありません。生理以外の不正性器出血を認めた場合、出産や流産の後に子宮が大きくなってきた場合、妊娠したのに予想したような胎児の動きを感じない場合は、婦人科、産婦人科の専門医を受診します。
医師の側では、絨毛がんなどの絨毛性疾患が疑われた場合には、血液中および尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンを測定します。絨毛性疾患では、このホルモンが高値となります。ただし、正常妊娠や流産、子宮外妊娠でもhCGは高値となります。
子宮およびその他の腹部臓器への病変の広がりは、婦人科的な診察や腹部超音波検査、MRI検査、CT検査によって調べます。超音波検査などにより、豊富な血流像が観察されます。骨盤内の血管造影を行うこともあります。
絨毛性疾患は肺への転移が高率にみられるので、胸部単純X線写真も撮影します。肺への転移や神経症状がある場合は、脳への転移の有無を頭部CT検査、MRI検査で調べます。
子宮、腟、肺などの病変を切除して、病理学的に診断を確定することもあります。しかし、hCGが異常に高い場合は病理学的診断を行わずに、臨床的に診断することも少なくありません。この場合は、経過や転移部位などを点数化した絨毛がん診断スコアを用いて、臨床的侵入奇胎と臨床的絨毛がんとの区別をします。
絨毛性疾患に対する治療としては、抗がん剤による化学療法が非常に有効です。侵入奇胎に対しては通常1種類の抗がん剤による治療を行いますが、絨毛がんの場合は3〜5種類の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法を行います。
化学療法のみで効果が不十分な時は、病巣を切除する手術や、高エネルギーX線を用いる放射線療法を組み合わせて行います。
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