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■慶大先端研など、大腸がんの代謝が変化する仕組みを解明 原因の遺伝子特定 [健康ダイジェスト]

 慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)は8月29日、曽我朋義教授を中心とする研究チームが大腸がんのメカニズムを解明したと発表しました。
 100年来の謎とされてきた、がん細胞特有のエネルギー代謝の仕組みをメタボローム(代謝物質)解析技術で調べ、原因となるがん遺伝子「MYC」を特定しました。MYCの抑制による治療への応用が期待されます。
 がん細胞は正常細胞と異なる代謝を使って生存に必要なエネルギーを産生していることが知られており、この現象は1920年代にドイツの生理学者オットー・ワールブルグが発見し、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。近年、この代謝以外にも、がんに特異的な代謝がいくつか見付かり、がん細胞はこれらの代謝を使って増殖に必要な生体分子をつくり出していることがわかっています。
 現在では、がんが示す代謝を阻害してがん細胞を死滅させようとする抗がん剤の開発が世界中で行われていますが、がん細胞がどのような仕組みで代謝を変化させるかについては、よくわかっていませんでした。
 今回、研究チームは、曽我教授が開発を主導したメタボローム解析装置「キャピラリー電気泳動質量分析計」で、香川大学医学部を通じて採取した大腸がん患者275人のがん細胞と正常細胞に存在する代謝物質を網羅的に調べました。
 その結果、正常細胞に比べ、がん細胞内で約8倍に増えるMYCが、215の代謝反応を介して大腸がんの代謝を変化させていることを突き止めました。MYCの発現を抑えることで、ほかのがん遺伝子も抑制できることが臨床検体を通じてわかり、曽我教授は「MYCがほかの代謝反応をコントロールしている」と説明し、MYCの制御が今後の大腸がんの治療法の開発に有用としています。
 また、大腸がん細胞の代謝は良性腫瘍の段階でも変化し、がんの進行に連動しないこともわかりました。
 曽我教授は、「がんが進めば、代謝も変化していくというのが一般的な見方。大腸がんになる以前から変化することがわかった。また、がんの謎であったがんが代謝を変化させるメカニズムを、臨床検体を用いて初めて解き明かすことができた。この成果によって大腸がんの予防法や治療法の開発が進展すればうれしい」と強調しています。
 研究成果は8月29日付で、アメリカの学術誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載されました。

 2017年9月2日(土)

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