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■用語 爪部悪性黒色腫 [用語(そ)]

[手(パー)]メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞から発生するがん
 爪部(そうぶ)悪性黒色腫(しゅ)とは、メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞(メラノサイト、皮膚細胞)から発生するがん。爪下悪性黒色腫、爪(つめ)メラノーマとも呼ばれます。
 メラニン細胞は、色素を作り、皮膚の色を決める色素細胞です。日光(紫外線)がメラニン細胞を刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られて、悪性黒色腫(メラノーマ)を発生するリスクが高まります。
 悪性黒色腫は最初、正常な皮膚に新しくできた小さな濃い色の皮膚の増殖性変化として現れます。多くの場合、日光にさらされる皮膚にできますが、もともとあったほくろに発生する場合もあります。体のほかの部位に非常に転移しやすく、転移した部位でも増殖を続けて組織を破壊します。また、悪性黒色腫は遺伝することがあります。
 日本での悪性黒色腫の発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。
 日本での悪性黒色腫による死亡者は、年間約450人。40歳以上になると発症が多くなり、60~70歳代が最も多くなっています。男女差はありません。
 悪性黒色腫の外観は、さまざまです。平らで不規則な形の茶色の皮疹(ひしん)の中に黒い小さな点がある場合もあれば、盛り上がった茶色の皮疹の中に赤、白、黒、青などさまざまな色の点があるものもあります。黒か灰色の硬い塊ができることもあります。
 その外観や色などによって、いくつかのタイプに分類されています。悪性黒子型は高齢者の顔などの露出部に色素斑が発生するタイプ、表在拡大型はやや盛り上がった不整型の色素斑が発生するタイプ、結節型は盛り上がるタイプ、末端黒子型は手や足から発生するタイプ、粘膜型は口腔(こうくう)や陰部などの粘膜に発生するタイプ、またメラニン欠乏性は色素を持たないので発見されにくいタイプです。
 末端黒子型の一つに、爪部悪性黒色腫のほとんどは含まれます。爪部悪性黒色腫のほとんどは、手足の爪の主に爪母部(爪の基部)上皮のメラニン細胞のがん化によって、爪甲色素線条、すなわち黒褐色で縦の線状の染みとしてみられます。
 時には、爪床上皮や爪郭(そうかく)部表皮のメラニン細胞ががん化することもあり、表在拡大型や結節型に含まれます。
 爪甲色素線条がみられる爪部悪性黒色腫は、全悪性黒色腫の10パーセント近くを占め、手の親指の爪、足の親指の爪、手の人差し指の爪、手の中指の爪に好発します。しかし、爪部悪性黒色腫によく似た良性腫瘍(しゅよう)が、はるかに多く存在しています。
 悪性か良性かを一応判別する目安として、染みの横幅が6センチ以上、黒褐色の色調に不規則な濃淡がみられるか真黒色、20歳以後、特に中高齢者になって発生した色素線条、色素線条が爪の表面を越えて皮膚の部分にまで及んでいる状態であれば、爪部悪性黒色腫かもしれません。
 がん化したメラニン細胞が増えるにつれて、黒褐色の線状の染みが増えるだけでなく太くなっていき、長さも伸びていきます。やがて、爪全体が黒くなります。進行すると、爪が変形したり破壊されてしまいます。
 爪部悪性黒色腫は、がんの中でも繁殖しやすいタイプです。そのため、爪から全身に転移していくというデメリットもあります。短期間で転移してしまうため、爪の症状の変化に気付いたら、すぐに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。
[手(チョキ)]爪部悪性黒色腫の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診、視診、触診を行い、続いてダーモスコピー検査を行います。ダーモスコピー検査は、病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニンや毛細血管の状態を調べ、デジタルカメラで記録するだけの簡単なもので、痛みは全くありません。
 そして、爪部悪性黒色腫(メラノーマ)が疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もし爪部悪性黒色腫だった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。
 一方、悪性黒色腫の周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診などで診断する医師もいます。
 確定診断に至ったら、他の部位への転移の有無を調べるためのCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、などの画像検査や、心機能、肺機能、腎機能などを調べる検査を行います。
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は原則的に、爪部悪性黒色腫(メラノーマ)の部位を外科手術によって円形に切除します。
 手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで爪部悪性黒色腫が侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い爪部悪性黒色腫であれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。
 皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している爪部悪性黒色腫の場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移した悪性黒色腫は致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。
 とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえ爪部悪性黒色腫が転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。
 一度、爪部悪性黒色腫を発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科、皮膚泌尿器科で検査を受けるべきです。




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■用語 爪甲下角質増殖症 [用語(そ)]

[足]爪床側の角質の成長異常により、爪の甲が押し上げられるとともに、厚くなる状態
 爪甲下(そうこうか)角質増殖症とは、爪(つめ)の先端にある爪床側の角質部分の不全角化という成長異常によって、爪の甲が爪床から押し上げられるとともに、押し上げられた爪の甲が厚くなる状態。
 爪床と爪の甲の間には、もろくなった爪が角質塊という粉となって充満します。
 爪甲下角質増殖症の多くは、爪や指先に受けた外傷や、爪の水虫(爪白癬〔はくせん〕)、乾癬(かんせん)、指先の湿疹(しっしん)などの皮膚病に伴う爪の二次的な変化として生じます。ごくまれに、先天性ないし遺伝性の爪甲下角質増殖症をみることもあります。
 また、爪甲下角質増殖症単独ではなく、爪の甲が爪床からはがれる爪甲剥離(はくり)症や、爪の甲の先端あるいは全体がスプーン状にへこむ匙状(さじじょう)爪(スプーンネイル)を併発することも少なくありません。爪甲剥離症や匙状爪を併発する場合、何かの病気が原因になっていることがほとんどです。
 爪の水虫に伴う爪甲下角質増殖症は、最も一般的にみられるもので、著しい爪甲下角質増殖を呈します。足の親指の爪に生じることが多く、爪甲表面には爪の水虫の特徴の一つである白い濁りを認めます。
 乾癬に伴う爪甲下角質増殖症は、爪の水虫と似た症状が現れ、爪甲が白濁化して、悪化すると表面がはがれ落ちます。爪の周囲に乾癬による皮膚病変を認め、頭部、腰部、下腿(かたい)前面などの好発部位にも、乾癬特有の皮膚病変を認めます。
 指先の湿疹に伴う爪甲下角質増殖症は、多くは爪の縁の変化を伴います。また、爪の回りには、紅斑(こうはん)や丘疹などの湿疹性変化をみます。
 爪甲下角質増殖症に気付いたら、すぐに皮膚科、皮膚泌尿器科を受診することで、早期治療が可能です。遺伝子に問題があると判明するのを早めるためにも、医療機関での検査は早いほうがよいといえます。
[足]爪甲下角質増殖症の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の先端部分に角質増殖を起こし得る外傷や外的物質、薬品、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査します。
 主に遺伝的な問題があることもあり、外服薬や内服薬での治療で完治させられない場合には、遺伝子検査などをすることも大切です。
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、外傷などの原因となっているものを優先的に除去ないし治療し、その後、外服薬よりも内服薬による治療を中心に行います。
 爪の水虫に伴う爪甲下角質増殖症の場合、水虫の外服薬はほとんど効果がなく、グリセオフルビン、イトラコナゾールなどの内服が必要です。少なくても、3〜6カ月間内服します。
 硬く厚くなった爪の外側から外服薬を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。
 乾癬に伴う爪甲下角質増殖症の場合、まだ根本的な治療法はなく、外服薬、内服薬、光線療法など、症状に合わせたいろいろな治療を行います。症状が軽い場合には主に外服薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。いずれの治療法も治療を中止すると、再発することがあります。
 外服薬には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、活性型ビタミンD3外服薬も副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。古くから用いられてきた外服薬にタールやアンスラリンなどがありますが、現在は一部の病院でしか使用されていません。
 内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。
 爪甲剥離症や匙状爪(スプーンネイル)を併発する場合、内的疾患が理由になっているため、爪自体は治療しません。肺疾患や心疾患といった原因となる疾患の検索と、それに対する治療を優先します。
 爪甲下角質増殖症を予防するには清潔な足を維持し、食生活をきちんと管理することが大切です。足を蒸れたままにせず、しっかりときれいに洗って乾燥させるなどの工夫が必要です。健康を維持していればそれほど悪化することもなく、爪の水虫も早い時期に治療できるため、重症化せずに治せます。




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■用語 造精機能障害 [用語(そ)]



[クリスマス]精巣で精子を作る機能に障害がある状態で、男性不妊症の原因の一つ
 造精機能障害とは、男性の精巣(睾丸〔こうがん〕)で精子を作る機能に障害がある状態。男性不妊症の原因の一つになっています。
 男性不妊症は、避妊をせずに性交の機会を持ち続けているにもかかわらず、1年以上子供ができない不妊の原因が男性側にある状態です。その原因の9割を造精機能障害が占めています。
 造精機能障害では、精巣で精子を作る機能に障害があるために、射精される精液中の精子の数、運動率、形態などに問題があり、無精子症、乏精子症、精子無力症、精子不動症、精子奇形症、精子死滅症に分けられます。
無精子症
 無精子症は、男性の精液の中に、卵子と結合して個体を生成する精子が認められない状態。
 男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。
 運動能力を持つ男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。
 男性の100人に1人は、無精子症といわれています。この無精子症は、閉塞(へいそく)性無精子症と非閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。
 閉塞性無精子症は、精巣の中で精子が作られているものの、精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞しているために、精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、精液中に精子が認められない状態を指しています。無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。
 原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。
 一方、非閉塞性無精子症は、精子が精巣から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射精された精液中に精子が認められない状態を指しています。無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。
 原因となる疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張しこぶができた精索静脈瘤(りゅう)などです。
乏精子症
 乏精子症は、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。
 乏精子症は男性不妊症の原因となり、日常生活におけるパートナーの自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。
 精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。
精子無力症
 精子無力症は、男性の精液内の精子の運動率が低下した状態。
 運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。
 この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。
 精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。
精子不動症
 精子不動症は、男性の精液中に精子を認めるものの、ほとんどの精子の動きがない状態。重度の精子無力症であり、精子の運動率が低下した状態にあります。
 精子不動症の多くでは、精子の少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。
 例えば、常染色体の劣勢遺伝でカルタゲナー症候群を発症した人では、慢性副鼻腔(びくう)炎、右胸心、気管支拡張症を合併していて、精子の鞭毛のみならず全身の線毛の機能障害が特徴的で、精子も完全に不動化しています。
 精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。
 精子が不動化する原因は、尾部の鞭毛を構成している中心部分の2本、および周囲の9本の軸糸の配列が壊れていて、運動のエネルギー源となる中片部のミトコンドリア鞘(しょう)の発育が不十分なためです。
 精子不動症になってしまう原因は、精子無力症と同じで先天的なものが大半を占めます。
精子奇形症
 精子奇形症は、精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。奇形精子症とも呼ばれます。
 男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、精子奇形症に相当します。
 精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。
 精子奇形症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。
 2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。
 精子奇形症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。
精子死滅症
 精子死滅症は、男性の精液中に精子を認めるものの、その精子が全く動いておらず、しかもほとんどが死んでいる状態。死滅精子症とも呼ばれます。
 精液検査における精子濃度には問題はないものの、精子のほとんどが死滅してしまっているという状態です。精子不動症とともに重度の精子無力症であり、精子不動症では精子の運動率が数パーセントに低下した状態にあるのに対して、精子死滅症では運動率が0パーセントに低下した状態に陥っています。
 運動能力を持つ男性の精子は、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精巣上体において成熟しますので、この精子を作る造精機能や造精過程に何らかの障害があると、ほとんどの精子が死んでしまうことになります。
 精巣の中で精子となる細胞自体にもともと何らかの原因があるケースと、精巣上体の分泌液に異常があって精子が死んでしまうケースなどがあります。それがどの過程で起こり、なぜ起こるのかについては、不明な点が多く残っています。
 精子死滅症になる原因は、精子無力症や精子不動症と同じで先天的なものが大半を占めます。
[クリスマス]造精機能障害の検査と診断と治療
無精子症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。
 精巣の大きさに問題がなく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が正常値で、精管に閉塞部位が認められれば、ほぼ閉塞性無精子症と判断できます。ただし、性腺刺激ホルモンの値が正常値でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。
 また、精液検査の結果、精液中に精子が一つも存在しないという場合でも、数少ない精子が精巣内で作られていることがあり、それを調べるために精巣組織検査を行うことがあります。
 泌尿器科の医師による閉塞性無精子症の治療では、精子が精巣から体外へ出ていく精路を再開させる精路再建手術を行います。閉塞部位が短く手術でつなぎ合わせることができれば、精液に精子が出るようになり、自然妊娠も期待できます。
 先天性の精管欠損症などで閉塞部位が長い場合は、手術では治療できません。この場合は、閉塞性無精子症の人では精巣で精子が作られているため、精巣精子採取法によって、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出し、排卵誘発によって採卵した卵子とともに体外受精という方法を用いて妊娠を期待します。
 泌尿器科の医師による非閉塞性無精子症の治療では、精巣組織検査で数少ない精子が精巣内で作られていることが確認された場合に限り、顕微鏡下精巣精子採取法によって精巣の中を隅々まで観察し、精子がいる可能性の高い精細管を採取して精子を探し出し、排卵誘発によって採卵した卵子とともに顕微受精という方法を用いて妊娠を期待します。精子が一つでも探し出せれば、妊娠する確率はゼロではありません。
 何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。
乏精子症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。
 精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。
 泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。
 精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。
 外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。
 何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。
精子無力症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。
 泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。
 薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。
 中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。
精子不動症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に数パーセント以下の場合に精子不動症と判断します。
 泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが妊娠できる可能性を高めます。
 明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の授精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。
 まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。
 HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。
 それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子不動症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。
精子奇形症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、 マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。
 クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。
 泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。
 パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である精子奇形症では自然妊娠が見込めないためです。
 通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。
 射出精子中には奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。
精子死滅症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に0パーセントの場合に精子死滅症と判断します。
 泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが受精、妊娠できる可能性を高めます。
 明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の受精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。
 まずHOSテストを行い、浸透圧の異なる培養液に採取した精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。精子死滅症の場合は3回程度精液を採取し、その中に1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。
 HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。


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■用語 足舟状骨骨折 [用語(そ)]

[足]足部の内側縦アーチの頂点に位置する舟状骨に生じる骨折
 足舟状骨(そくしゅうじょうこつ)骨折とは、足部の内側縦アーチ(土踏まず)の頂点に位置する舟状骨に生じる骨折。
 足部の舟状骨は、船底のような湾曲をしているため、船のような格好の骨ということで舟状骨といいます。足部の内側縦アーチの頂点に位置し、また距骨(きょこつ)との間で距舟関節、距骨と踵骨(しょうこつ)との間で距踵舟関節、内側楔状骨(きつじょうこつ)と中間楔状骨と外側楔状骨との間で楔舟関節を形成しており、体重を支えたり、足のけり出しの際などに重要な骨です。
 足舟状骨骨折は、受傷した部位により骨体部骨折、背側近位関節縁骨折、結節部骨折の3種類に分けられます。
 骨体部骨折は、直接もしくは間接的に舟状骨に外力が加わって生じる骨折です。発生頻度としては非常にまれですが、発症した時は重症であり、ほかの2つの骨折より痛みが残存しやすいという特徴があります。
 背側近位関節縁骨折は、足の裏を内反させた形で受傷しやすく、舟状骨を距舟靭帯(じんたい)に引っ張られて生じる剥離(はくり)骨折です。足舟状骨骨折の中では、最も多く生じています。
 結節部骨折は、足の裏を外反させた形で受傷しやすく、舟状骨を後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)に引っ張られて生じる剥離骨折です。
 背側近位関節縁骨折と結節部骨折はともに、足関節を捻挫(ねんざ)した時に合併しやすいという特徴があります。
 足舟状骨骨折を起こすと、舟状骨部の圧痛があり、明らかなはれがみられます。背側近位関節縁骨折では、足関節の内反により痛みが生じるため、歩行によって痛みが生じる場合もあります。結節部骨折では、足関節の内側、内くるぶしの後方から下方を通っている後脛骨筋の収縮、伸張により痛みが発生します。
 舟状骨は内側縦アーチを形成する重要な骨であるため、受傷後の治癒が遅れると内側縦アーチの低下がみられる場合があるため、速やかに整形外科などを受診することが勧められます。
[足]足舟状骨骨折の検査と診断と治療
 整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による診断では、問診で骨折の受傷状況を聞き、舟状骨背側に圧痛が局在していれば背側近位関節縁骨折、舟状骨内側に圧痛があれば結節部骨折を疑います。
 足関節の捻挫に合併している場合は、捻挫損傷部だけにとらわれて、足舟状骨骨折を見逃さないよう注意します。また、X線(レントゲン)検査を行い、足舟状骨を3方向から撮影します。場合により、CT(コンピュータ断層撮影)検査も利用します。
 整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による治療では、3種類の骨折にかかわらず、一般的には保存療法を行います。8週間程度の安静と、足関節のギプス固定によって、骨癒合を図ります。
 骨体部骨折で、骨の位置が強くずれる転位があるものや、関節部ではないのに関節のように動くようになる偽関節があるものでは、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を行います。
 固定による安静期間の間に、筋力の低下や骨委縮が起こるので、徐々にリハビリを開始します。
 骨癒合が得られた後は、内側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になってる足底板は、内側縦アーチにかかる負荷を小さくすることができます。




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