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■人工知能で糖尿病合併症の発症を予測 藤田保健衛生大などがシステムを開発 [健康ダイジェスト]

 人間では処理し切れない膨大なデータを人工知能(AI)を使って分析し、糖尿病の合併症の一つ「腎症」の発症などを予測するシステムを、藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)と日本IBM、第一生命保険が共同開発しました。
 医療分野でもAIの活用は進んでいますが、藤田保健衛生大によると、日本人の生活習慣病に関する予測システムは初めてといいます。糖尿病の治療や診断はもちろん、今後の「AI医療」の進展にも期待が高まります。
 糖尿病は国内で300万人の患者がいる代表的な生活習慣病で、悪化すると腎臓の機能が低下し心筋梗塞などのリスクを高める腎症や、網膜症、脳梗塞といった重い合併症を引き起こすリスクがあります。
 共同研究では、藤田保健衛生大病院が、糖尿病患者6万4000人と、それ以外の患者6万8000人の約13万人ぶんの電子カルテのデータを匿名化して提供。合併症のうち「糖尿病性腎症」に着目し、日本IBMのAIシステム「ワトソン」が、人間の脳の神経回路をモデルにしたディープラーニング(深層学習)によって、自ら学習し解析しました。
 腎機能を示す検査データ「eGFR」値や血糖値はもちろん、因果関係が薄いとされがちな検査データも含め24項目の数値を分析。時間経過による変化や既往症の有無も踏まえました。
 その結果、現時点では腎症の予兆がない初期の糖尿病患者でも、近い将来の見通しとして180日後に発症するかどうか、高い精度で予測することができるようになったといいます。
 ワトソンは数値化されたデータだけでなく、電子カルテに記載された医療スタッフと患者とのやり取りなども解読できます。医療スタッフが患者の治療への取り組みを「褒めた」場合、患者の血糖値の改善傾向が強まることもわかり、心理面での治療支援にも活用できる可能性が出てきました。
 開発にかかわった藤田保健衛生大の鈴木敦詞(あつし)教授は、「あらゆるデータを把握して、病気の進行を極めて早い段階から予測することはこれまで不可能だった。症状が出る前から予測に基づいた指導や対策を始めることができこれまでの医療が変わり、医療費の削減にもつながる可能性がある」と話しました。
 藤田保健衛生大などが開発した糖尿病の合併症などの予測システムは、囲碁の名人を打ち負かしたり、車を自動運転したりと進化が著しいAIが医療分野でも不可欠となりつつあることを改めて示しました。
 AIの活用では東京大学が2015年、日本IBMと連携してがん治療の研究を開始。がんに関連する2000万件の論文や患者の遺伝子情報をAIシステムに学習させ、診療に役立てようとしています。2016年には血液のがん「急性骨髄性白血病」の女性患者について、AIが適切な治療法を助言し、回復に貢献するという成果を上げました。
 国立がん研究センターも、がん治療のAI活用を進めています。血液中に含まれる微小物質をAIを使って分析することで、ごく初期のがんを高い精度で発見できる可能性があります。このほか認知症や心疾患の診断にAIを生かそうという研究も、国内外で始まっています。
 国民病ともいわれる糖尿病での今回の活用は、AI開発で世界の先頭を走るIBMと、病院の病床数が国内最大級で、豊富な患者データを持つ藤田保健衛生大との協力で実現しました。同大は将来のAI活用をにらみ、5年前からカルテなどの電子処理にIBMのシステムを導入していました。
 同様のシステムは今後、他の病気でも開発が可能で、藤田保健衛生大の星長清隆学長は、「AIは医療の新しい可能性を開く。患者に、よりよい医療を提供していきたい」と話しています。

 2017年9月21日(木)

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