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■大気汚染物質に台風の発生を抑える影響 研究成果まとまる [健康ダイジェスト]

 アジア各国の工場などで排出された大気汚染物質には、日本やフィリピン周辺で台風の発生を抑える影響があったとする研究成果がまとまりました。
 地球温暖化が進むと台風の数は減るとされていますが、専門家は、環境対策の進展によって台風の減るペースが鈍くなる可能性もあると指摘しています。
 アメリカ海洋大気局(NOAA)、地球流体力学研究所の村上裕之研究員は、台風やハリケーンなど熱帯低気圧の発生数が世界でどう変わったか調べました。
 1980年から2000年までに比べて2001年から2020年までは、日本やフィリピン周辺の「北西太平洋」で13・8%減り、オーストラリア周辺などの「南半球」で15・9%減った一方で、アメリカの東海岸周辺の「北大西洋」では33・6%増えていました。
 地域ごとの差を調べるため、過去およそ40年間、大気や海洋の変化に加えて、工場などから排出される大気汚染物質の状況も考慮してシミュレーションしたところ、「北西太平洋」および「南半球」での台風など熱帯低気圧の減少と「北大西洋」での増加には、大気汚染物質の増減がかかわっていたことが確認できたとしています。
 大気汚染物質などの小さな粒子「エアロゾル」には日射を遮る「日傘」のような効果があるため、中国やインドなどで大気汚染物質が増えたことで周辺の陸地は海に比べて暖まりにくくなり、台風や熱帯低気圧の発生に必要な西からの風が抑えられたとしています。
 また、欧米の大気汚染物質が減ったことで北大西洋上空の風の流れが変わり、ハリケーンなどが発生しやすくなったとみられるということです。
 多くの研究結果では、地球温暖化が進むと台風などの熱帯低気圧は数は減る一方、強くなると予想されていますが、村上研究員は、今後、大気汚染物質を減らす取り組みが進められて、アジアのエアロゾルが削減されると、台風などの熱帯低気圧の減少のペースが鈍くなる可能性もあるとしています。
 村上研究員は「大気汚染物質を減らすことは健康にとって、非常に有益だが、台風の減り方を緩和させる副作用があることが初めてわかった。こうした副作用も考慮し、今後の防災対策を進める必要がある」と話しています。
 今回の研究について、気象学が専門で台風や積乱雲が発生するメカニズムに詳しい、慶応大学の宮本佳明准教授は「人為的に排出されるエアロゾルと、台風のできやすさとの関係に注目した研究は初めてで、社会的にも学術的にも非常に注目される成果だ。将来の影響が具体的にどうなるのかなど、今後、さらなる研究が期待される」と話しています。

 2022年5月20日(金)




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