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■iPS細胞の技術で、免疫細胞の若返りに成功 日本の2チーム [健康ダイジェスト]

 体のさまざまな細胞を作ることができるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の技術を応用し、体内の異物を敵と認識して攻撃する免疫の細胞を若返らせることに、東京大学と理化学研究所のチームがそれぞれ成功しました。エイズなどの感染症やがんの治療に役立つ可能性があると期待されています。
 4日付米科学誌セル・ステムセルにそれぞれ論文を発表した両チームが注目したのは、免疫を担う細胞の1つであるT細胞と呼ばれる免疫細胞。がん化したり、ウイルスに感染したりした細胞が持つ目印(抗原)をアンテナ分子で認識し、これらを殺す働きがあります。
 体内の免疫細胞を活性化させる従来の免疫療法では、がん細胞や感染細胞を認識するT細胞を体外で増やして患者に戻しますが、もともと数が少なく、1~2週間とされる寿命を終えつつあるものもあるため、効果は限定的。
 理化学研究所の河本宏チームリーダーらのチームは、皮膚がんの一種である悪性黒色腫の患者のT細胞に、「山中因子」と呼ばれる遺伝子を入れて初期化し、iPS細胞を作りました。さらに、分化という操作でT細胞に戻したところ、98パーセント以上ががん細胞の抗原を認識でき、生まれたばかりの元気な状態になっていました。
 試験管での実験段階ですが、iPS細胞から何万倍ものT細胞を量産できるといい、数の少なさの問題も克服できます。
 河本チームリーダーは、「再生したT細胞が健康な細胞を傷付けず、がん細胞だけを攻撃するかを確かめるのが次のステップ」と話しており、他のがん抗原での作用の確認を計画中。
 一方、東京大学医科学研究所の中内啓光教授らのチームは、エイズウイルスに感染した人の血液からT細胞を取り出し、特定の遺伝子を加えてiPS細胞に変化させました。そして、白血球の細胞などと一緒に10週間、培養した結果、新しいT細胞を作り出すことに世界で初めて成功したということです。
 この新しいT細胞は、エイズウイルスを異物として認識した一方で、増殖する力が元の細胞の10倍から100倍ほどに強まり、寿命も伸びていたということで、チームではT細胞の働きを維持したまま、若返らせることに成功したとしています。
 中内教授は、「攻撃力の強い若いT細胞をいくらでも作ることができる。安全性を確認しながら、体内でも機能するかどうか確かめていきたい」と話しています。
 臓器の再生や創薬で注目されるiPS細胞の技術が、感染症やがんの治療に用いられれば、iPS細胞の応用範囲は大きく広がることになります。

 2013年1月4日(金)




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