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■アスベスト健康被害、国の責任を認める 最高裁が初めて判断 [健康ダイジェスト]

 大阪府南部の泉南地域のアスベスト(石綿)加工工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡しました。
 小法廷は、「健康被害の医学的知見が確立した1958年時点で規制すべきだった」と述べました。アスベストの健康被害を巡って最高裁が国の責任を認めたのは初めてで、各地で起こされている同様の訴訟にも影響を与えそうです。
 元従業員は1、2陣に分かれて集団提訴。1審はいずれも勝訴しましたが、2審の大阪高裁で国の責任の有無について判断が分かれ、双方が上告していました。
 小法廷はまず、「労働環境を整備し、生命、身体に対する危害を防止するため、国は技術の進歩や医学知識に合うよう適時・適切に規制権限を行使すべきだ」との枠組みを示しました。
 その上で、粉じん排気装置の設置義務化(1971年)、粉じんの濃度規制強化(1988年)、防じんマスク着用義務化(1995年)の3点について、時期が適切だったか検討。
 排気装置の設置については「1958年には実用的な技術も普及しており、義務化が可能だった」と指摘し、設置義務化が13年遅れた点を認めました。
 一方で、濃度規制については「1988年以前から専門的知識に基づき一定の規制がされていた」、マスク着用につては「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段に過ぎない」として、いずれも元従業員側の主張を退けました。
 裁判官5人全員の意見が一致。これにより、2審の2陣54人の勝訴が確定し、計約3億3200万円の賠償を国に命じました。2審敗訴の1陣28人については、賠償額を確定させるために審理を差し戻しました。審理を経て勝訴が確定します。
 1971年以降に作業に従事した7人については、国の責任はないとして敗訴が確定。7人のうち、濃度規制強化とマスク着用義務化の遅れを理由に賠償が認められていた2陣の1人は、逆転敗訴となりました。
 1審判決は1陣で約4億3500万円、2陣で約1億8000万円の賠償を命じました。2審判決は1陣が「厳しすぎる規制は産業社会の発展を阻害する」として国の責任を否定して原告の逆転敗訴とした一方、2陣は国の責任の範囲を拡大し、賠償額を約3億4500万円に増額していました。
 アスベスト(石綿)は繊維状の天然鉱物。耐火材や断熱材として使用されました。吸い込むと中皮腫や肺がんを発症する恐れがあるため、2012年に使用が全面禁止されました。潜伏期間は数十年に及びます。厚生労働省によると、中皮腫だけで2013年までの10年間に1万1000人余が死亡し、死者は年々増え続けています。

 2014年10月10日(金)

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