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■保険外診療での、がん遺伝子治療でトラブル相次ぐ 学会が患者や家族に注意喚起 [健康ダイジェスト]

 がん細胞の増殖を防ぐとされる抑制遺伝子を注入する国内未承認の「がん遺伝子治療」を行うクリニックで、期待した効果を得られなかったとする患者側とのトラブルが相次いでいます。
 効果や安全性が立証されないまま、保険適用外の高額な自由診療で実施するクリニックが問題となっており、日本遺伝子細胞治療学会(東京都港区)が患者や家族に注意を喚起するとともに、国に対策を求めています。
 東京都内のクリニックでがん遺伝子治療を受け、その後に亡くなった男性患者の妻(49歳)は「生きられると喜んでいた夫は、裏切られた思いに突き落とされました」と話しています。男性は2014年6月、舌がんが再発し、入院先の大学病院で余命半年と告げられたといいます。息子が何か治療法はないかとインターネットで探し、クリニックを見付けました。面談した妻に、クリニックの院長(当時)は「ここで命が助かります。遺伝子が変異した状態では抗がん剤や放射線は効かないので、すぐに中止してください」などと説明しました。
 男性は大学病院での治療を中止。がんを抑える遺伝子が入っているとする点滴を8回受けましたが、大学病院での検査で、がんは逆に大きくなっていたことがわかりました。しかし、クリニックの院長はさらに点滴を促し、再点滴後に震えが止まらず、全身から汗が噴き出しました。疑念を持ち、それ以降の治療をやめましたが、すでに546万円の治療費を払っていました。その後、男性はがん専門病院に転院し、2014年9月に亡くなりました。
 2016年3月、妻は治療費や慰謝料など1150万円の損害賠償を求めて提訴し、クリニック側は訴えを全面的に受け入れました。「クリニックを見付けた息子や家族も傷付いた。同じ思いをする人が出ないように、正しい情報が行き渡ってほしい」と妻は訴えています。このクリニックはほかにも患者側との訴訟が2件ありましたが、いずれも和解しました。
 ほかにも多くのクリニックが、がん遺伝子治療の案内をホームページに掲載。東京都渋谷区のクリニックは、「代表的ながん抑制遺伝子であるp53、PTEN、p16とCDC6kdRNAを最も有効的なベクター(運び役)を用いて導入します。これらの治療タンパクは、点滴投与によって全身のがん細胞に効果を発揮します」と説明しています。
 日本遺伝子細胞治療学会には、がん遺伝子治療に関する相談が寄せられています。専門家などは、患者が治療に疑問を抱くとクリニックが治療費を返還することもあり、トラブルが表面化するのはごく一部とみています。
 日本遺伝子細胞治療学会の金田安史理事長は、「どのような治療が行われ、安全が確保されているのか不透明。有効性が立証されていない治療は制限されるべきだ」と話しています。
 がん遺伝子治療は、がん細胞の増殖を抑える遺伝子をベクター(運び役)となる体に無害なウイルスなどに入れて、体内に注入します。アメリカや中国、ロシア、フィリピンで医薬品として承認された遺伝子治療製剤はありますが、日本国内では千葉大学病院、九州大学病院、岡山大学病院などの研究機関で有効性を確認する臨床研究が進められている段階で、医薬品として承認された遺伝子治療製剤はありません。

 2017年8月15日(火)

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