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■用語 腰椎すべり症 [用語(や行)]

[位置情報]腰椎がずれて、背骨の中の神経を圧迫し、腰痛や下肢の痛み、しびれが生じる疾患
 腰椎(ようつい)すべり症とは、腰に5つある腰椎の1つ、または複数が前後にずれて、背骨の中の神経を圧迫し、腰痛や下肢の痛み、しびれが生じる疾患。
 腰椎は通常、簡単にずれたりしないようになっていますが、腰椎を連結している左右1対の椎間関節と呼ばれる背骨の関節が壊れたり、腰椎をつないでいる椎間板の異常などによってずれてしまうことがあります。
 腰椎すべり症には、骨が後ろ側へずれる後方すべりと、骨が前側へずれる前方すべりがありますが、ほとんどは前方すべりです。
 その原因によって、形成不全性すべり症、分離すべり症、変性すべり症(無分離すべり症)の大きく3つのタイプに分けられます。そのほか、外傷によるすべり症や、腫瘍(しゅよう)や感染に基づく骨破壊によるすべり症が生じることもありますが、まれです。
 形成不全性すべり症は、生まれ付き脊椎(せきつい)の発育に問題があるために起こります。非常にまれながら、比較的若いうちから症状が出てくることがあります。
 分離すべり症は、腰椎分離症が原因でずれるものです。腰椎分離症は、腰椎の椎間板の付いている前方部分の椎体と、椎間関節の付いている後方部分の椎弓との間にある椎弓根が割れて、椎体と椎弓、つまり背骨の前方部分と後方部分の連続性が絶たれて離れ離れになった状態です。これにより、椎体が前方へすべるのが分離すべり症です。
 この場合、椎弓は後方に残ったままの形になるので、変性すべり症とは症状の出方が少し異なります。また、分離すべり症は、第5腰椎に多いのが特徴です。
 腰椎分離症自体は、日本人の5~7パーセントくらいにあるといわれています。そのうちの一部が分離すべり症を発症しますが、椎弓根の大きさや靭帯(じんたい)の幅などの特徴によって、すべりやすい人とそうでない人がいるといわれています。
 変性すべり症は、最も頻度が高いものです。第4腰椎が前にすべることが多く、第5、第3腰椎でもずれが生じます。
 女性に多い疾患で、50~60歳くらいの閉経のころにかけて多く発症します。このことから、女性ホルモンの影響や、女性ホルモンの減少による骨粗鬆(こつそしょう)症の進行によって、それまで支えられていた骨が支えられなくなって、変性すべり症が起こると見なされています。
 また、椎間関節の傾きが前方にすべりやすい形をしているので変性すべり症が起こるという説、あるいは、年齢とともに膝(ひざ)や股(こ)関節が悪くなるのと同じように腰椎も変性して変性すべり症が起こるという説もあります。ただし、詳しい原因はまだわかっていません。
 症状は形成不全性すべり症、分離すべり症、変性すべり症のタイプによって違いがありますが、変性すべり症の主な症状は、腰痛、下肢痛、下肢のしびれです。腰椎がずれても安定していれば軽い症状が多いものの、不安定だと日常の行動でも、背骨の中にある神経がより刺激され、腰痛や下肢痛などが生じ、日によってよかったり、悪かったりします。
 症状が進行すると、腰椎のずれによって神経組織が圧迫されて、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症と同じような状態になるので、足のしびれや痛みで歩けなくなり、一休みするとまた歩ける間欠性跛行(はこう)などの歩行障害、足のしびれや冷感、違和感などさまざまな下肢の症状を示すことがあります。
 座っているなど安静時にはあまり症状が出ずに、立ったり、動いたり、長時間歩いたりすることによって、腰痛や下肢痛、下肢のしびれが増強するのが特徴です。さらに症状が進行すると、安静時でも痛くなるようになります。
 また、変性すべり症の起こる部位は、馬尾(ばび)神経がまとまってある部分で、尿や便など排泄(はいせつ)の機能を支配している神経も通っているため、膀胱(ぼうこう)直腸障害を来すこともあります。さらに、会陰(えいん)部障害といって、股関節から陰部にかけての知覚障害やほてり感が出ることもあります。
 症状が悪化する前に、整形外科の医師を受診し、病態を理解することも大切です。
[位置情報]腰椎すべり症の検査と診断と治療
 整形外科の医師による診断では、一般的には、体の正面と側面のX線(レントゲン)検査を行います。腰椎すべり症の人の中には、ふだんは何ともなく前かがみになると腰椎がずれという人もいるため、前屈位でのX線検査も行うこともあります。
 腰椎分離症を合併していれば分離すべり症、骨盤の中心にある仙骨上縁のドーム化や分離、二分脊椎などの形成不全を合併していれば形成不全性すべり症、それらがなければ変性すべり症とされます。
 圧迫されている部位、神経の圧迫の度合、腰椎すべり症以外の狭窄を詳しく調べるためには、MRI(磁気共鳴画像)検査を行います。ただし、このMRI検査も寝ている状態で行うので、動いている時の状態を調べるために、入院の上、脊髄造影検査やCT(コンピューター断層撮影)検査を行うこともあります。
 腰椎すべり症と診断されても、すべり症以外の部位に狭窄が見付かるということも実際にあり、その場合は治療や手術の方法も違ってくるため、正確な診断が必要となります。
 ほかの疾患との鑑別も、重要です。椎間板ヘルニアや、腰部脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、閉塞(へいそく)性動脈硬化症という血管性の病変によっても、下肢痛やしびれ、歩行障害を来す場合があるからです。
 整形外科の医師による治療では、軽い腰痛や下肢痛、しびれがある場合、コルセットで腰をサポートし、痛み止め、神経の循環を改善させる薬剤などを使います。
 下肢痛がひどい場合には、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。神経ブロックは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法で、血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができます。
 これには、腰の左右に5から6対ある神経根に直接針を刺して局所麻酔剤を注入する神経根ブロックと、腰椎を覆っている一番外にある硬膜の外側の空間へ局所麻酔剤を注入する硬膜外ブロックがあります。
 神経の圧迫や刺激がひどくなると、手術が必要です。手術では、神経の圧迫を取り除くため、腰椎の後方部分の椎弓を部分切除します。すべりの程度や不安定性が強い場合は、グラグラの部分を固める脊椎固定術を追加します。
 脊椎固定術には、前方固定、後側方固定、後方椎体間固定などの方法があり、一長一短があります。固定術には、すべりの矯正、確実な骨癒合のために、脊椎にスクリューやワイヤーやロッドなどの金属を用いる方法が併用されています。
 予防では、日ごろから腰の使い方に気を付けて、負担のかからないよう配慮することが最も大切。腹筋、背筋の筋力や足のストレッチなどで体をほぐし、体の状態を良好に保つことも必要です。




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■用語 薮チフス [用語(や行)]

[クリスマス]ダニ類のツツガムシの幼虫に刺され、引き起こされる感染症
 薮(やぶ)チフスとは、細菌のリケッチアを保有するダニ類のツツガムシの幼虫に刺されることによって、引き起こされる感染症。一般にはツツガムシ病と呼ばれます。
 日本海側の河川領域にいるネズミに寄生するアカツツガムシの幼虫、日本海側の山林にいるネズミに寄生するフトゲツツガムシの幼虫、太平洋側の山林にいるネズミに寄生するタテツツガムシの幼虫に刺されることによって、薮チフスは引き起こされます。
 かつては秋田県の雄物川、山形県の最上川、新潟県の阿賀野川、信濃川などの河川敷で、夏季にアシ原に多くみられるアカツツガムシの幼虫に刺されて感染する風土病(古典型薮チフス)でしたが、戦後はフトゲツツガムシ、タテツツガムシの幼虫に刺されて感染する新型薮チフスの出現により、北海道、沖縄県など一部の地域を除いて、全国で発症がみられるようになりました。
 感染しやすい時期は、フトゲツツガムシの活動する春から初夏と、タテツツガムシおよびフトゲツツガムシの活動する秋から初冬の2つの時期で、近年は毎年500人程度の報告があります。1950年に伝染病予防法による薮チフス(ツツガムシ病)の届け出が始まり、1999年4月からは感染症法により4類感染症全数把握疾患として届け出が継続されています。
 ツツガムシの生息場所は、草むら、藪、林の土の中。ツツガムシの幼虫は成長過程で一度地表に出て、アカネズミ、ハタネズミといった野ネズミなどの動物に吸着して組織液を吸います。その後は、土壌中で昆虫の卵などを摂食して生活します。
 人間は、リケッチアを保有するツツガムシの幼虫に刺され、吸着されると、皮膚から感染します。潜伏期間は、5~14日で、人から人への感染はありません。
 よく刺される部位は、頭髪部、わきの下、腰など。刺し口は、刺されてから2~3日で赤くはれ、4~5日で水疱(すいほう)、その後潰瘍(かいよう)となり、10日目ごろには周囲が赤い陥没した黒いかさぶたとなります。
 刺されてから10日目前後から、全身の倦怠(けんたい)感、手足の痛み、頭痛を伴う発熱が起こります。高熱は1~2週間続き、発疹(はっしん)は2~5日間に現れます。径5mm前後、紅斑性、丘疹性で全身に出現しますが、胸、腹部、背部に多くみられます。7日程度で、発疹は消退に向かいます。
 刺し口近くのリンパ節のはれは、ほとんどでみられ圧痛を伴います。全身のリンパ節のはれも、約半数にみられます。肝臓が大きくなる肝腫大と脾(ひ)臓が大きくなる脾腫大は通常、軽度です。
 重症例では、播種(はしゅ)性血管内血液凝固症候群(DIC)による出血傾向、髄膜刺激症状、昏睡(こんすい)やけいれんなどの中枢神経症状、肝障害による黄疸(おうだん)、末梢(まっしょう)血管抵抗の弱まりや心筋障害による血圧低下、間質性肺炎や胸膜炎などを合併します。
 重症例で治療が遅れると、多臓器不全で死亡することもあります。
 発熱、刺し口、発疹があって、感染する可能性のある場所への立ち入り、発症した時期から薮チフスの可能性を疑ったら、直ちに治療を受けるべきです。発症後7日以後になると重症化の傾向が高いので、早期診断、早期治療が重要となるからです。
[クリスマス]薮チフスの検査と診断と治療
 内科、感染症内科、皮膚科の医師による診断では、一般検査で、細菌などに感染すると血液中で一気に増えるCRP(C反応性タンパク)強陽性、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)およびALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)などの肝酵素の上昇がほとんどの例にみられます。
 確定診断は、主に間接蛍光抗体法または間接免疫ペルオキシダーゼ法という方法によって、リケッチアに対する血清抗体価の4倍以上の上昇、またはIgM(免疫グロブリンM)抗体の有意の上昇を測定することで行われます。
 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法などによって、リケッチアの遺伝子の検出も行うこともあります。検査所見は日本紅斑熱のものと類似するため、鑑別が必要となります。
 内科、感染症内科、皮膚科の医師による治療では、テトラサイクリン系の抗菌薬(抗生物質)を第一選択として、点滴静脈内注射か内服で使用します。そのほか、クロラムフェニコールも使用されます。通常1~2日で速やかに解熱し、症状も軽快します。ただし、薬剤の投与は7~10日継続します。
 細胞壁がペプチドグリカンを持たないというリケッチアの生物学的特性のため、ペニシリンを始めとするβ—ラクタム系抗菌薬は無効です。
 薮チフス(ツツガムシ病)の予防ワクチンはないため、ダニ類のツツガムシの幼虫に刺されないことが、唯一の感染予防法です。
 そのポイントは、レジャーや作業などで、草むらや薮などツツガムシの幼虫が多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖、長ズボン、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。山野などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。
 ツツガムシの幼虫に刺され、吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、できるだけ病院で処理してもらうことです。




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■用語 優性遺伝性若年性視神経委縮症 [用語(や行)]

[目]常染色体優性遺伝性を示し、10歳未満で発症する視神経症
 優性遺伝性若年性視神経委縮症とは、常染色体優性遺伝性の形で遺伝し、10歳未満で発症する視神経症。常染色体優性遺伝性視神経委縮、若年性家族性視神経委縮とも呼ばれます。
 種々のものがあり、いずれもまれで、難治な疾患である遺伝性視神経症の一種で、その中では最も多いと考えられており、有病率は1万人から5万人に1人の割合とされています。
 日本で確認された家系数は少なく、男女差はないとされます。遺伝性ですが、必ずしも同一家系内に類似した症状の発症者がみられるとは限りません。
 発症の初期には、早発の視神経の変性により両眼の視力障害が生じます。中心視カの低下のほかに中心視野が侵されるために、第3色覚異常様の色覚異常を示し、青と黄と灰色が同じに見える青黄色盲の症状を生じます。網膜の変化は少なく、視カ低下は緩やかに進行し、多くのケースでは0・2〜0・3以上の視カを保持します。
 しかし、やがて視力の回復を十分に示さぬまま、視神経が委縮を強めていきます。網膜の神経線維が集まっている視神経乳頭は、耳側から次第に退色して蒼白(そうはく)となり、血管が見られないのが特徴です。
 通常、晩年に至るまで視力低下は軽度ですが、高齢になると視力低下がさらに進行するケースもあります。
 ほとんどの発症者は神経症状を合併しないものの、時には、自分の意思とは関係なく眼球が動く眼振(がんしん)、及び難聴を合併する場合もあります。
[目]優性遺伝性若年性視神経委縮症の検査と診断と治療
 眼科の医師による診断では、蛍光眼底造影検査、視力検査、視野検査、画像検査、電気生理学的検査、心電図検査が行われます。確定診断のために、遺伝子検査が利用可能です。
 眼科の医師による治療では、明らかな有効性が確認された治療法はないので、ビタミン剤、循環拡張剤などの処方が行われます。
 色覚異常に関しても、遺伝子の変異であるため、明らかな有効性が確認された治療法はありません。
 2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。しかし、確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際は不十分な診断が行われて問題がありました。
 2003年以降は、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。




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■用語 優性遺伝性ドルーゼン [用語(や行)]

[目]常染色体優性遺伝性を示し、網膜にある黄斑に進行性の変性がみられる目の疾患
 優性遺伝性ドルーゼンとは、常染色体優性遺伝性を示し、眼球内部の網膜にある黄斑(おうはん)に進行性の変性がみられる目の疾患。家族性ドルーゼン、網膜ジストロフィーとも呼ばれます。
 まれな疾患で、その発症原因はEFEMP1遺伝子のミスセンス変異(R345W)です。しかし、同じ家系内であっても症状の程度には個人差があり、軽症から重症まで一定しない傾向があることから、遺伝子変異と病態の関連性については、さらなる検討が必要と考えられています。
 20~30歳代で、両目の眼底にドルーゼンといわれる小さく境界鮮明な白点が認められ、このドルーゼンが徐々に融合したり、増加していきます。加えて、黄斑の網膜色素上皮に変性がみられて、色素異常によるむらや色素沈着が認められます。
 進行状況により、さまざまな程度の視力低下を示しますが、まれにドルーゼンから異常な血管である新生血管が生じると、著しい視力障害を示すことがあります。
 新生血管は正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまいます。初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられます。
 新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部分が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現します。
 病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がります。病状が進行すると、視力が失われる可能性があります。
[目]優性遺伝性ドルーゼンの検査と診断と治療
 眼科の医師による診断では、両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいること、薬物や感染症など外因がないことなどが重要な手掛かりになります。
 眼底検査、フルオレセイン蛍光眼底検査、網膜電図などの電気生理学的検査も、診断を確実にするには必須です。異常を起こす遺伝子が突き止められている優性遺伝性ドルーゼンでは、遺伝子の検索も決め手になります。
 ドルーゼンには、老人性ドルーゼン、続発性ドルーゼンもありますが、網膜の神経線維が集まっている視神経乳頭の鼻側に、眼底検査でドルーゼンが認められた時には、優性遺伝性ドルーゼ ンと診断する大きな根拠になるとされています。
 今まではあまり有効な治療法はありませんでしたが、近年、優性遺伝性ドルーゼンは加齢黄斑変性症に近い病態であることが判明し、新しい方法が試みられるようになり、早期発見、早期治療によって視力低下を最小限に抑えられる可能性が期待できるようになってきました。
 優性遺伝性ドルーゼンの治療では、レーザーによるレーザー光凝固術や、場合によっては手術が行われます。近年、経瞳孔(けいどうこう)温熱療法(TTT)や光線力学療法(PDT)などといった新しい治療法が一部の施設で試みられ始めており、この疾患の予後の向上が期待されるようになってきています。
 レーザー光凝固術は、新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。正常な周囲の組織にもダメージを与えてしまいますので、新生血管が黄斑の中心窩(か)にある場合はほとんど実施されません。
 手術には、新生血管抜去術と黄斑移動術があります。新生血管抜去術は、新生血管を外科的に取り去る治療法です。新生血管が中心窩にある場合も実施されますが、中心窩を傷付けてしまう可能性もあります。
 黄斑移動術は、中心窩の網膜を新生血管から離れた場所に移動させることにより、中心窩の働きを改善する治療法です。新生血管が中心窩にある場合に実施されますが、物が二つに見えるなどの副作用が起こる場合もあります。
 新しい治療法の経瞳孔温熱療法は、弱いレーザーを新生血管に照射し、軽度の温度上昇によって、新生血管の活動性を低下させる治療法です。
 光線力学療法のほうは、光に反応するビスダイン(一般名:ベルテポルフィン)という薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達した時にレーザーを照射する治療法です。弱いレーザーによって薬剤が活性化され、新生血管を閉塞(へいそく)します。使用するレーザーは通常のレーザーとは異なり、新生血管周囲の組織にはほとんど影響を及ぼしません。継続的に行う治療法であり、3カ月ごとに検査を行い、その結果により必要に応じて再度実施されます。
 薬物療法として、ステロイド剤や、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)という血管新生阻害剤などの硝子体への注入が試みられています。効果を得るには繰り返しの注入が必要で、経瞳孔温熱療法との併用も考えられています。
 治療後の視力は、病状の進行度によってさまざまです。一般に早期に治療を開始すると、良好な視力が保たれる傾向にあります。黄斑の中でも特に重要な中心窩に病態が現れている場合は、視力の低下は著明です。




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