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■用語 グリシン脳症 [用語(く)]

[晴れ]血液中に高濃度にグリシンが蓄積し、けいれん、呼吸障害などの神経症状を引き起こす疾患
 グリシン脳症とは、脳や肝臓に存在するグリシン開裂酵素系の遺伝的な欠損のために、血液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する疾患。高グリシン血症とも呼ばれ、先天性代謝異常症の一種です。
 グリシンは人間の体内で合成できる非必須(ひっす)アミノ酸の一つであり、中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシンの蓄積が重篤な神経障害をもたらします。
 新生児期に無呼吸となり突然死に至る重症型(新生児型)と、筋緊張の低下と精神発達の遅滞のみを示し、成人で偶然診断されることもある軽症型(乳児型、遅発型)が存在します。いずれも常染色体の劣性形質として遺伝します。
 日本における発症率は、新生児60~70万人当たり1人と見なされます。欧米では新生児25万人当たり1人の割合で発症しますが、国によって大きな差があり、フィンランド北部で発症頻度が高く、発症率は新生児1万人当たりに1人となっています。カナダのブリティッシュ・コロンビア州で、新生児6万人当たり1人という報告もあります。
 グリシン開裂酵素系はT蛋白(たんぱく)質、P蛋白質、L蛋白質、H蛋白質という4種類の蛋白質から形成される複合酵素で、GLDC、AMT、GCSH、DLDの4つの遺伝子にコードされる酵素により構成されています。
 遺伝子に変異が生じると、遺伝子情報に基づいて合成された蛋白質を基にして構成されている酵素にも変異が生じ、グリシンの分解反応を進めることが不可能になる結果、分解されなかったグリシンが血液中に蓄積し、グリシン脳症を発症します。
 グリシン脳症の約6割ではGLDC遺伝子に変異を認め、残りの約2割ではAMT遺伝子に変異を認めます。GCSH 遺伝子の変異は極めてまれです。DLD遺伝子変異はリー脳症を引き起こしますが、グリシン脳症とはなりません。
 重症型は、生後数日以内に活力低下、筋緊張の低下、無呼吸、しゃっくり、昏睡(こんすい)などが始まり、後に30分以上けいれんが持続するけいれん重積が起こり、しばしば死に至ります。
 人工換気などの治療で新生児期を乗り切ると、自発呼吸が出てきます。その後、成長は認められますが、精神機能や運動機能の発達の遅れが目立つようになります。
 重症型には、左右の大脳半球をつなぐ脳梁(のうりょう)の欠損、大脳皮質にあるシワの隆起した部分である脳回(のうかい)の異常、水頭症などの脳形成異常が高率に合併します。
 軽症型は、新生児期をほぼ無症状に過ごし、乳幼児期から発達の遅れや筋緊張の低下が現れます。診断の手掛かりとなる特異的な症状を欠くため、多くは未診断のままと考えられます。
 軽症型では、多動、衝動的行動などの注意欠損多動症候群に類似した行動異常を伴います。
[晴れ]グリシン脳症の検査と診断と治療
 小児科、小児神経科の医師による診断では、CTやMRIなどの頭部画像検査、血液検査、尿検査、脳脊髄(せきずい)液検査、脳波検査などを適宜行います。最近では、13Cグリシン呼気試験によって残存酵素の活性の程度を検査することもあります。
 小児科、小児神経科の医師による治療では、有効な治療法が確立していないため、体内に蓄積したグリシンの排出目的で安息香酸(あんそくこうさん)ナトリウムの大量投与を行います。
 グルタミン酸受容体の一種のNMDA型グルタミン酸受容体の拮抗(きっこう)剤(ブロッカー)であるデキストロメトルファン、ケタミンなどの投与による治療が、重症型のグリシン脳症の早期新生児期の障害を軽減してくれますが、長期予後はよくありません。




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■用語 クッシング症候群 [用語(く)]

[蟹座]副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドの過剰分泌によって、引き起こされる疾患
 クッシング症候群とは、副腎(ふくじん)皮質から分泌されるホルモンのうち、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の過剰分泌によって起こる疾患。アメリカの脳神経外科医ハーヴェイ・ウィリアムス・クッシングによって、初めて報告されました。
 下垂体(脳下垂体)に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから副腎皮質刺激ホルモンがたくさん出るために起こる場合と、副腎皮質に腫瘍ができて起こる場合が主なものです。前者はクッシング病とも呼ばれます。
 クッシング症候群の原因としては、クッシング病が約35パーセント、副腎腫瘍が約50パーセントを占めるほか、時には、肺や膵(すい)臓、消化管にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが多量に分泌され、副腎に働いてグルココルチコイドが過剰に分泌される場合もあります。女性に多くみられます。
 近年、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)がネフローゼや白血病などの治療に、大量に用いられるようになったために人工的な副腎皮質ホルモン過剰が起こり、同じ症状を起こすことがあります。
 クッシング症候群の症状としては、顔が丸くなり、にきびができやすくなります。肥満してきますが、手足はあまり太くならず、胴体が太いのが特徴です。また。肩や尻(しり)、太ももの筋肉が薄くなり、階段の上りなどがつらくなります。
 そして、腹や太ももなどに皮膚伸展線である赤紫色のすじがみられ、皮膚が薄くなって、ちょっとしたことで青あざができやすくなります。高血圧、糖尿病が起こることもあります。骨が薄くなって背骨の圧迫骨折を起こし、身長が低くなったり、背部痛が起こることもあります。
 女性では、月経が不順になったり、無月経になったり、毛深くなります。
[蟹座]クッシング症候群の検査と診断と治療
 内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、副腎からグルココルチコイドが過剰に分泌されていることを確認するために、血液検査や尿検査を行います。
 下垂体の腫瘍や肺、膵臓などの腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが出て起こっている場合は、副腎皮質刺激ホルモンが増えています。一方、副腎の腫瘍からグルココルチコイドが出ている場合は、副腎皮質刺激ホルモンはかえって減っています。このどちらであるかを調べて、どこに原因があるかを明らかにします。
 下垂体の腫瘍の場合は、頭部のMRIの検査を行います。副腎の腫瘍の場合は、腹部のCTの検査などを行います。
 医師による治療としては、腫瘍の場合は下垂体でも副腎でも、手術を行って過剰なホルモンを作っている腫瘍を摘出することが最もよい方法です。
 下垂体の腫瘍の場合は、経蝶形骨洞的手術という、鼻の穴から下垂体に達し頭を開けずに、顕微鏡や内視鏡で見ながら腫瘍を摘出する方法によって、以前に比べ楽に手術できるようになっています。手術で摘出し切れない場合や、体力的に手術が困難な人の場合は、注射や内服薬による治療、放射線療法などが行われます。
 副腎の腫瘍の場合は、大きくなくて適応できれば、開腹せずに腹部に小さい穴を3カ所くらい開けて内視鏡と手術の道具を通し、副腎を摘出する内視鏡手術が数多く行われています。内視鏡手術の適応ができない時は、開腹や背中を開けて副腎を摘出します。体力的に手術が困難な場合などは、グルココルチコイドを作る副腎の働きを抑える薬を内服します。




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■用語 グリシン [用語(く)]

[レストラン]非必須アミノ酸の一つで、コラーゲンを合成し、睡眠の質を向上させる栄養素
 グリシンとは、人間の体内で合成できる非必須(ひっす)アミノ酸の一つ。グリココルとも呼ばれています。
 同じく非必須アミノ酸の一種であるセリンより、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼという酵素の働きによって、体内で合成されます。
 グリシンの主な働きとしては、体内でのコラーゲンの合成、保湿作用、抗酸化作用が挙げられます。コラーゲンは体内で骨や軟骨、筋肉、腱(けん)、皮膚の原料として利用されている蛋白(たんぱく)質で、加齢とともに起こる関節痛や腰痛はコラーゲンの不足を原因としているため、グリシンの摂取は重要な意味を持ちます。
 また、皮膚の潤いを保つ保湿作用は、肌の張りの維持と肌荒れ防止に効果を発揮します。抗酸化作用は、老化の原因となる活性酸素の生成を防止する効果があります。
 最近の研究では、グリシンを十分に摂取していると、摂取量が足りない人に比べて早く、深い睡眠状態に移行できることがわかっています。睡眠には浅いレム睡眠と深いノンレム睡眠があり、グリシンはノンレム睡眠への移行を円滑にして脳に休息を与えてくれるのです。
 そのほかにも、グリシンはヘモグロビンや肝臓中の酵素を構成する重要な成分の一つであり、神経伝達物質とも深く関与しています。
 天然物質であるグリシンは食品添加物としても使われていますが、ラットの実験で呼吸筋のまひなどがみられたため、過剰摂取による健康被害が懸念されていることも事実です。食品添加物としてのグリシンは米飯の炊き上がりを艶(つや)やかにし、長持ちさせる効果を持っていることから、コンビニの弁当によく利用されています。
 グリシンの摂取が不足した場合には、体内でのコラーゲンの合成が滞り、膝(ひざ)や腰の関節痛や肌荒れ、筋肉痛などのトラブルを起こしやすくなります。また、グリシンの不足は睡眠にも影響し、寝付きが悪くなり、寝不足を引き起こす恐れがあります。
 グリシンはコラーゲンを構成しているアミノ酸の30パーセント以上を占めているため、動物性のコラーゲンを食べることがグリシンの効率的な摂取につながります。
 牛スジや鶏軟骨、豚足、フカヒレやエイなどが、コラーゲンを豊富に含む食品として知られています。エビ、ホタテ、カニ、イカ、カジキマグロなどの魚介類にも豊富で、うま味の素となっています。また、コラーゲンが変性したゼラチン質を利用した料理である魚の煮凝(にこご)りも、グリシンの摂取に向いています。
 しかし、牛スジや豚足で摂取すると、同時に多くの脂肪分も摂取することになるため、牛スジならば脂を煮こぼすといった手間を掛ける必要があります。

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■用語 グルタミン酸 [用語(く)]

[レストラン]体内で合成できる非必須アミノ酸の一つで、うま味と神経伝達物質の元
 グルタミン酸とは、体内で合成できる非必須(ひっす)アミノ酸の一つ。人間の体内では、クエン酸回路の中でケトグルタル酸から合成され、オルニチンやアルギニン、プロリンなどのアミノ酸に変わることができます。
 このグルタミン酸は脳組織に多量に存在して、主に興奮系の神経伝達物質として利用され、脳活性のエネルギー源となっています。グルタミン酸を摂取することで、脳の働きが活発になるため、認知症の防止に効果があるといわれています。
 また、グルタミン酸は酵素の働きによってアンモニアと結合して、同じ非必須アミノ酸のグルタミンを合成するため、体に有害なアンモニアの除去にも一役買っています。グルタミン酸自体にも排尿促進作用があるため、血液中のアンモニア濃度を調節する効果があります。
 よく知られていることですが、うま味調味料の主成分であるグルタミン酸ナトリウムの原料として、グルタミン酸は広く利用されています。食品添加物としてのグルタミン酸は、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウムを「グルタミン酸ソーダ」と一まとめにして表記されることがほとんどです。
 グルタミン酸の過剰摂取は、脳細胞を傷付けて睡眠障害や神経症、幻覚などのさまざまな異変を引き起こします。うま味調味料であるグルタミン酸ナトリウムを大量に使った料理を食べた後は、強い舌のしびれや頭痛を引き起こすこともあります。
 グルタミン酸ナトリウムを過剰摂取したラットには、目に障害が現れやすくなるという実験結果があり、過剰摂取は眼病の原因になる恐れがあります。
 逆にグルタミン酸の摂取が不足すると、不足分を筋肉を育成するグルタミンから補うことになるため、筋力の低下などを招きます。同時に、疲労の蓄積や脳の働きの低下、脳障害、うつ状態、アンモニアの排出阻害などの影響が現れることもあります。
 日本人の食生活では、グルタミン酸を過剰摂取する傾向にありますが、少なすぎても健康によくないという厄介な性質があるアミノ酸なのです。
 グルタミン酸は昆布の出汁から発見された経緯があり、昆布などの海草や、大豆などの豆類、アーモンドなどのナッツ類、小麦粉、サトウキビに多く含まれています。玉露などのお茶にも、うま味成分としてグルタミン酸が含まれています。
 また、納豆独特のネバネバは、複数のグルタミン酸が結合してできるポリグルタミン酸と呼ばれるもので、納豆のおいしさの土台となっており、かき混ぜるほどに粘りが強くなり、うま味が増すという特性を持っています。

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