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■用語 愛情遮断性低身長 [用語(あ行)]

[天秤座]愛情を感じられないストレスから、子供の睡眠時に成長ホルモンが十分に分泌されず、低身長を生じる状態
 愛情遮断性低身長とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、成長ホルモンの分泌が低下して身長が伸びない状態。精神社会性低身長症、精神社会的小人症とも呼ばれます。
 低身長は、さまざまな原因で身長が伸びない状態のことで、年齢別平均身長より20%、あるいは標準偏差(SD)より2SD以上低い場合を目安としており、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまります。
 愛情遮断性低身長は、乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが生じ、年齢別平均身長を著しく下回ると考えられています。
 子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあり、栄養不足も年齢に見合った身長の伸びを止めてしまう原因の1つになります。身体的な成長の遅れだけでなく、情緒の発達、言語や知的能力の発達の遅れを生じたり、行動異常を示すこともあります。
 入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
 母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。夫婦仲が悪く、家庭環境の雰囲気が悪いことが原因になることもあります。
 栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
 愛情不足の養育や、より重大な問題がある虐待やネグレクト(育児放棄)が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。
 養育者が子供の愛情遮断性低身長に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
[天秤座]愛情遮断性低身長の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断では、過去から現在までの身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
 小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。
 また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。養育者は子供に対してストレスを与えていないつもりでも、気付いていない家庭の習慣が子供のストレスになっている場合もあります。
 子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。
 しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
 母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。

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■WHO、家畜への抗生物質の使用抑制を訴え 多剤耐性菌の発生を懸念 [健康ダイジェスト]

 世界保健機関(WHO)は、抗生物質(抗菌薬)がほとんど効かない「多剤耐性菌」の感染拡大を防ぐためには、畜産の現場でも抗生物質の使用を必要最小限に抑えるべきだとする指針をまとめました。
 指針をまとめた責任者は、世界規模で対策に取り組む必要があると強調しています。
 多剤耐性菌は、人の病気の治療に使われる抗生物質がほとんど効かなくなった細菌で、世界各国の医療機関で免疫力の低い入院患者が感染して死亡するケースが相次いで報告されていることから、大きな問題となっています。
 ただ、畜産の現場では、抗生物質が家畜の病気の予防や治療、さらに成長促進のために幅広く使われており、使い方次第では、さらなる多剤耐性菌の発生につながると指摘されています。
 このため、WHOは、畜産の現場での抗生物質の使用を必要最小限に抑えるべきだとする新たな指針をまとめ、7日、スイスのジュネーブで発表しました。
 新たな指針では、人の病気の治療にも使われる重要な抗生物質については、家畜の成長促進や病気の予防のための使用をやめるべきだとしたほか、家畜が病気の場合でも、カルバペネムなど、人に使われる抗生物質の中でも極めて重要なものは原則、使用を禁じるべきだとしています。
 WHOによると、一部の国では医学的に重要な抗生物質の約80%が動物に対して使用されていますが、家畜の病気予防には衛生状態を改善したり、ワクチンをうまく活用したりするなど他に多くの選択肢があるといいます。
 指針をまとめた責任者であるWHOの宮城島一明食品安全部長は、「多剤耐性菌を抑えるためには、抗生物質の適正な使用が不可欠で、保健医療と畜産農業の現場が連携して世界規模で対策に取り組む必要がある」と話しています。

 2017年11月8日(水)

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■やせる効果の過大表示、太田胃散など16社に措置命令 消費者庁 [健康ダイジェスト]

 葛の花から抽出した成分を含むお茶やタブレットなどについて、明確な根拠がないのに運動や食事制限もせずにやせられるかのように効果を過大にうたって販売したとして、消費者庁は全国の16社に対して、再発防止などを命じる措置命令を行いました。
 措置命令を受けたのは、東京都文京区の製薬会社「太田胃散」や、京都市のカタログ通販大手「ニッセン」など全国の16社。
 消費者庁によりますと、16社は2015~2017年の間、葛の花から抽出した「イソフラボン」と呼ばれる成分を含むお茶やタブレット19商品ついて、業者の責任で機能性を表示する「機能性表示食品」として、「飲むだけで体重や脂肪を減らす!」「きつい運動やつらい食事制限は不要」などと、摂取するだけで誰でも簡単に内臓脂肪が減り、見た目でわかる痩身(そうしん)効果が得られるかのように宣伝して販売していました。
 これに対して消費者庁は、各社に資料の提出を求めた結果、これほどの効果を裏付ける合理的な根拠は確認できず、同庁表示対策課は「あきらかな痩身効果はデータから読み取れなかった」として、景品表示法(優良誤認)に基づき、こうした表示を行わないことや、再発防止を命じる措置命令を行いました。
 1社は「予想を上回る注文を頂いており、生産が間に合わない」などと表示していましたが、具体的な販売予想は元々なく、注文もわずかでした。
 すでにニッセンなど12社は、実際より効果が大きいようにうたっていたとする消費者向けの通知を出したということで、消費者庁は、まだ通知を出していない太田胃散など4社に対し、早急に対応するよう求めています。
 太田胃散は、「処分を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めていきたい」と話しています。ニッセンは、「すでに対象となる商品の購入者全員に全額を返金した。処分を真摯に受け止め、全従業員に周知し再発防止を徹底します」としています。

 2017年11月8日(水)

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■免疫抑制剤使う子供へのワクチン接種、安全な手法を検討へ 国立成育医療研究センター [健康ダイジェスト]

 免疫を抑える薬を使っているために、水ぼうそうなどのワクチンを接種できない子供たちについて、接種を見送った後に感染症で死亡した事例が報告されていることから、国立成育医療研究センターは全国の医療機関の協力を得てワクチンを接種しながら安全に健康を管理する手法を検討することになりました。
 子供が接種するワクチンには、毒性を弱めたウイルスや細菌を接種する「生ワクチン」と呼ばれるタイプがあり、水ぼうそう、はしか、風疹などのワクチンとして使われていますが、難病の治療や移植手術などで免疫抑制剤を使っている場合には、ワクチンによってその感染症を発症してしまう恐れがあるため、原則、使用できないことになっています。
 しかし、2012年までの10年間に全国で、ワクチンを接種できなかった3人の患者が水ぼうそうを発症して死亡したことがわかり、国立成育医療研究センターの研究チームは免疫抑制剤などを使っている子供もワクチンが接種できる手法を検討することになりました。
 研究チームは、今月から全国300の小児科のある医療機関を対象に、免疫抑制剤などを使っている子供の実態調査を行い、医師の判断で例外的にワクチンを接種している患者がどれくらいいるかや副作用の発生状況、それに、どのような安全管理の元で実施したかなどについて調べるということです。
 対象となるのは、年間1000人程度が発症するネフローゼ症候群と呼ばれる腎臓の病気や臓器移植後の患者、それに下痢や激しい腹痛などを伴う潰瘍性大腸炎などの子供たちです。
 研究チームでは来年度末までに結果をまとめた上で、国や関連する学会などとワクチン接種の必要性やどのような安全管理をすれば接種できるかなどについて検討したいとしています。
 調査を取りまとめる国立成育医療研究センターの亀井宏一医師は、「免疫抑制剤を服用している患者は感染症のリスクが健康な人より高く、本来最もワクチンで守る必要のある患者だ。ワクチン接種の需要が高く、有害事象がほとんどないことがわかれば、学会などの意見を聞きつつ、薬の使用方法を説明している添付文書の文言の修正などを相談していきたい」と話しています。
 ワクチンの問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「今回の取り組みは非常に有意義だ」と評価した上で、「感染症のリスクが高いということは生ワクチンそのもので発症するリスクもあり、安易に『免疫が低下している人も生ワクチンを接種して問題ない』と誤解されないように慎重に進めてほしい」と指摘しています。

 2017年11月8日(水)

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■梅毒患者、2年連続で4000人を超す 全国に広がり、注意が必要に [健康ダイジェスト]

 性行為などで感染する梅毒の患者数が2年連続で4000人を超え、昨年の患者数をすでに上回ったことが7日、国立感染症研究所の集計で明らかになりました。
 現行の集計方式となった1999年以降では過去最多で、国立感染症研究所・感染症疫学センター第2室の砂川富正室長は、「昨年は大都市に患者が集中していたが、今年は全国に広まってきており注意が必要」としています。
 10月29日までに報告された患者数は4711人で、都道府県別では東京都(1466人)や大阪府(651人)など大都市圏のほか、岡山県(138人)、広島県(110人)が目立ちました。直近3カ月における人口100万人当たりの届け出数は、西日本で高い傾向がみられました。
 梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因で起きる感染症。抗菌薬で早期に治療をすれば完治しますが、放置して進行すると脳や心臓に大きな合併症を引き起こします。また、妊婦が感染すると、胎盤を通じて胎児に感染する「先天梅毒」になり、流産や死産になったり、生まれた子供の目や耳などに重い障害が出たりします。

 2017年11月8日(水)

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■一般病院の平均赤字、人件費が膨らみ1億5707万円 厚労省が2016年度医療経済実態調査 [健康ダイジェスト]

 厚生労働省は8日午前、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で、病院や診療所など医療機関の経営状況を調べた2016年度の医療経済実態調査を報告しました。
 精神科を除く一般病院全体の平均収支は、2016年度は1億5707万円の赤字となり、前年度より赤字幅が1807万円拡大しました。利益率はマイナス4・2%の赤字で、前年度より0・5ポイント悪化。統計を取り始めた1967年以降、3番目に低くなりました。
 医療経済実態調査は、医療サービスの価格を決める来年4月の診療報酬改定の基礎資料。厚労省は、「医療従事者の増加や賃金アップで人件費が膨らみ、経営悪化につながった」と分析しています。
 政府は診療報酬改定で医師の収入に直結する「本体部分」を小幅プラス、薬などの「薬価部分」を合わせた全体ではマイナスとする方向で検討中ですが、日本医師会(日医)などによる本体部分の引き上げ圧力はさらに強まりそうです。
 医療経済実態調査は、2年に1度実施。赤字体質の国公立を除いた民間病院だけをみると、0・1%の黒字でした。病院以外の利益率は、一般診療所が13・8%、歯科診療所が21・6%、薬局が7・8%の黒字を確保しました。

 2017年11月8日(水)

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■用語 白斑 [用語(は)]

[位置情報]母乳による育児中の女性の乳頭にできる、白いニキビのような出来物
 白斑(はくはん)とは、授乳中の女性の乳頭(乳首)にできる、白色でニキビのような出来物。
 女性の乳頭にある乳管開口部である乳口(にゅうこう)に炎症が起きた乳口炎の初期症状として、白斑は母乳による育児中の女性の乳頭にできます。
 白斑をもたらす乳口炎が起こる一番の原因は、乳頭が傷付くことです。乳児が効率よく母乳を飲むためには乳頭周辺を深くくわえる必要があるのですが、体勢がしっくりこない状態や添い寝で授乳をすると、乳児が乳頭周辺を浅くくわえてしまい、乳頭に余計な負担がかかって乳頭の先を傷付けることがあります。乳頭が傷付いて、そこから細菌が感染すると炎症が起き、乳口炎を引き起こします。
 また、授乳中の女性が脂質や糖質の多い食事を続けていたり、過度なストレスがかかったりすると、母乳が詰まりやすくなり、乳口炎を引き起こすといわれています。
 乳頭に水疱(すいほう)ができて、次第に1〜2ミリくらいの白いニキビのような白斑と呼ばれる出来物ができて、母乳の出口をふさぐのが、乳口炎の始まりです。初期は、乳頭が赤くなったり黄色くなったりすることがあります。
 ただ、片方の乳頭に15~25個ある乳口のうち一部だけが詰まって、ほかの乳口は開通している状態なので、母乳の出具合にはあまり変化がなく、最初のうちは詰まっていることを自覚しにくい傾向があります。
 その後、症状が進行すると授乳中に痛みを覚え、その時に初めて炎症が起きていることを自覚する場合がほとんどです。中には、血胞と呼ばれる血が混じったものが乳頭にできることもあります。
 乳口炎は、原因を解消しない限り繰り返し発症することが多く、一度なってしまうと授乳中ずっと悩まされるという人も多いようです。
[位置情報]白斑の自己対処法
 母乳の詰まりを解消しようと、水疱を針で刺してつぶそうとしたり、白斑を無理に取ろうとしたりする人がいますが、雑菌が入って炎症を悪化させる可能性があるため、やめておきましょう。
 また、乳口炎になったために授乳をやめてしまう人がいますが、母乳がいっそう詰まって逆効果で、場合によっては乳管が炎症を起こす乳管炎や、乳腺(にゅうせん)が詰まって炎症を起こす乳腺炎を引き起こす危険性があります。
 乳口炎の特効薬はありませんが、傷付いた乳口のケアと、母乳が詰まらないようにする適切な対処を行い、授乳を続けましょう。
 傷付いた乳口の炎症を抑えるには、乳児の口に入っても大丈夫な口内炎治療薬のデスパコーワなどや、保湿剤のラノリン、スクワランやホホバや馬油(マーユ)などのオイルを毎回の授乳後、乳口に塗ってラップで押さえるのが、お勧めです。
 母乳の詰まりを解消するには、乳児に乳頭をきちんと吸ってもらうための工夫を行いましょう。
 まず、乳児が乳頭の根元からしっかりくわえられるような抱き方を探しましょう。また、いつも同じ抱き方はせずに、フットボール抱き、横抱き、斜め抱き、縦抱きなどいくつかの抱き方をローテーションで行うと、詰まっている乳口を吸ってもらえるようになります。
 また、授乳間隔を空けないようにしましょう。間隔を空けすぎると母乳がたまって、乳房が張ってしまい、授乳時に乳口への負担が大きくなります。最低でも3時間に1回は授乳をして、乳児の昼寝などで間隔が長く空いてしまいそうなら、力をかけすぎないように搾乳(さくにゅう)をしておきましょう。
 食生活を見直すのも効果的。母乳が詰まる原因につながる脂質や糖質の多い食事、乳製品は控え、できるだけ薄味の和食に慣れるのがお勧めです。ジュースやスポーツドリンクにも多くの糖分が含まれており、大量に飲むと、母乳の詰まる原因となります。水分量が減るのも母乳が詰まる原因につながるので、授乳期にはカフェインが少なめの麦茶や番茶などをたくさん飲むのがお勧めです。
 乳房を温めるのも効果的。乳房が冷えて硬くなると、分泌される母乳や筋肉が冷えて出具合が悪くなります。ゆっくり風呂に入り、マッサージをして乳房を少し温めてから授乳すると、母乳の詰まりが解消されやすくなります。
 ストレス解消も効果的。ストレスや疲れがたまると、体を緊張状態にさせ、乳口を収縮させて母乳の流れを滞らせます。夜の授乳で満足に睡眠が確保できない場合は、日中に乳児と一緒に昼寝をしたり、天気のよい日は散歩に出て気分転換したりするとストレス解消ができます。
 乳口炎は、上手に授乳をすることができれば1週間程度で自然治癒するケースが多いのですが、痛いから、触るのが怖いからと放置しておくと、1カ月以上もつらい症状が長引くこともありますので、注意が必要です。
 自分で改善できない場合は、乳房マッサージをしてくれる母乳外来や助産院に相談してください。

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■用語 乳腺腫瘍 [用語(に)]

[位置情報]女性の乳房内の乳腺に発生する腫瘍
 乳腺腫瘍(にゅうせんしゅよう)とは、女性の乳房内の乳腺に発生する腫瘍。良性と悪性に分けられます。
 乳腺の良性腫瘍として多くみられるのは、乳腺線維腺腫と乳管内乳頭腫です。乳腺の悪性腫瘍の大部分は、乳がんです。ここでは、良性腫瘍である乳腺線維腺腫と乳管内乳頭腫について述べます。
 乳腺線維腺腫は、女性の乳房内の乳腺が増殖することで形成される良性のしこり、すなわち腫瘤(しゅりゅう)。乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。
 はっきりとした原因はまだわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)が何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる腫瘤として自覚されることが多いようです。
 線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。
 乳がんと同様に、痛みを伴わないしこり、すなわち乳房腫瘤として発症します。乳がんと比べれば軟らかく、弾力性に富むことが多いといわれていますが、線維腺腫が乳がんに進行することはほとんどありません。
 しこりの大きさは、小豆大からうずらの卵大のことが多いものの、時には鶏卵大になることもあります。形は、球状や卵形が多く、時にはしこりの縁がくびれたような切れ込みになっていることもあります。
 しこりの表面は滑らかで、普通の消しゴムぐらいの硬さです。しこりと周囲との境界がはっきりしていて、触るとしこりが乳腺の中でコロコロと動くのが特徴です。
 しこりは、1個だけでなく、いくつもできることがあります。押しても痛みはなく、しこりに触れて、偶然、気が付くことが多いようです。
 経過を観察すると、しこりの大きさは多少増大しますが、時間の経過とともに際限なく増大することはなく、急速に増大することもありません。大多数は、閉経期をすぎると自然退縮します。
 しこりに気が付き、母親など近い家族に複数の乳がんの経験者がいる場合は、婦人科、乳腺科、産婦人科を受診し、念のために乳がんなどの悪性疾患ではないか確認することが勧められます。
 一方、乳管内乳頭腫は、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺で作られた乳汁(母乳)を乳頭へ運ぶ管である乳管内に、いぼのような乳頭状の構造を持った良性のしこりができる疾患。
 乳管内乳頭腫は、乳頭(乳首)近くの比較的太い乳管内に発生することが多いものの、末梢(まっしょう)乳管から発生することもあります。乳管内の血管結合組織を軸とした上皮細胞と筋上皮細胞が増殖してできます。
 乳管内乳頭腫ができる明らかな原因は、不明です。しかし、ほとんどの例でホルモン受容体が陽性なので、卵巣から分泌される女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が何らかの影響を与えているものと思われます。また、乳頭腫は高率に乳腺症に合併するので、年齢的な要因も関係している可能性があります。
 通常、35歳から55歳の間に発症することが多く、出産経験のない女性に多いとされています。
 乳管内乳頭腫そのものががん化するとは考えられていませんが、将来的に乳がんになるリスクが高まるといわれているので、その点は注意が必要になります。
 多くの例で、乳頭から分泌物が出るのが自覚症状となります。分泌物の性状は、血性のことが5割、粘り気の少ない漿液(しょうえき)性のことが5割で、水のように透明なこともあります。分泌物の色も、赤色、赤褐色、茶褐色、白色、透明などさまざまです。分泌物の量にも個人差があり、下着に付着する程度から、大量に乳汁(母乳)のように分泌するものまでさまざまです。
 しこりの大きさは、数ミリから1センチ程度で、乳房を触ってもしこりを感じることは少なく、痛みもありません。分泌物が乳腺内にたまると、腫瘤として触れるものもあります。
 乳管内乳頭腫は、乳がんとの関連が深い疾患ですから、乳頭の異常分泌に気付いたら、乳腺科、乳腺外科、外科などを受診します。特に閉経期あるいは閉経後では、症状のよく似た乳がんとの区別が重要です。また、最近では乳がん検診の際に、超音波(エコー)検査で腫瘤として発見されることも多くなってきました。
[位置情報]乳腺腫瘍の検査と診断と治療
 乳腺腫瘍である乳腺線維腺腫に対する婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による診断では、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。
 若い女性は乳腺の密度が濃いため、マンモグラフィーでは診断しにくいことが多く、超音波検査のほうが腫瘤の特徴を映し出すことができます。
 鑑別診断で重要なのは、限局性の乳がんです。厳密には触診だけで区別することは困難で、マンモグラフィーや超音波検査でも区別が難しいことがあるので、乳房のしこりに針を刺し、しこりの細胞を微量採取して病理学的に細胞を調べる穿刺(せんし)細胞診や、局所麻酔をしてからしこりの一部を切り取り、顕微鏡で調べる針生検を行うことがあります。
 乳腺線維腺腫に対する婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による治療では、小さなしこりの場合には、穿刺細胞診などで良性の腫瘤であることを確認し、その後、年1、2回の定期な診察で、経過を観察していきます。
 明らかに美容上の問題となるほど大きなしこりの場合や、経過を観察して急速に大きくなった場合には、手術をして、しこりを切除することもあります。
 手術は、局所麻酔をして乳房の皮膚を数センチ切開し、しこりを切除して取り出すだけですので、外来で受けられます。手術により、乳房に変形が残ることはありません。
 乳腺腫瘍である乳管内乳頭腫に対する乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、マンモグラフィー(乳腺X線検査)や乳頭分泌物の細胞診を行います。
 確実に診断するには、乳管造影を行います。分泌物が出ている乳管開口部から造影剤を注入し、X線(レントゲン)撮影を行うもので、乳管内乳頭腫があると境界明瞭な造影欠損像や走行異常、乳管の閉塞(へいそく)、拡張、狭窄(きょうさく)、断裂像などが映りますので、小さいものでも発見することができます。
 また、乳首から針金くらいのカメラを入れる乳管内視鏡検査を行うこともあります。
 乳管内乳頭腫に対する乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、検査の結果、乳がんの可能性が否定された場合は、経過を観察します。
 非浸潤性乳管がんなどとの区別がつきにくい場合や、乳頭腫が大きい場合、出血が多い場合は、乳管内視鏡下の手術で腫瘍のある乳管を切除するのが一般的です。
 再発も多く、将来乳がんを発症するリスクも高いため、治療後も定期的な乳がん検診が欠かせません。予防的な乳房切断は、必要ありません。

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■用語 重複乳頭 [用語(ち)]

[位置情報]乳輪の中に2つ以上の乳頭が存在している状態
 重複乳頭とは、女性の乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪の中に、複数の乳頭が存在している状態を指す症状。乳輪内多乳頭とも呼ばれます。
 通常、片側の乳房の乳輪中にある乳頭は1つですが、まれに2つ、ないし2つ以上の乳頭が生まれ付き存在していたり、あるいは1つある乳頭が生まれ付き2つに分裂していたりすることがあります。乳頭が2つに分裂しているものは分裂乳頭といいます。
 重複乳頭ではおおかた、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。
 分裂乳頭でも同様に、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。
 重複乳頭、分裂乳頭とも、生まれ付きのものがほとんどで、胎児期の発生段階での個体差によるものと考えられていますが、発症の理由はよくわかっていません。
 また、一部は神経線維腫(しゅ)症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)という特定の疾患に合併して起こることが知られていますが、極めてまれです。
 重複乳頭、分裂乳頭であっても、本人にとって支障がなければ治療をする必要はありませんが、見た目が気になるという問題と、授乳という機能的な問題が存在します。子供ができて実際に授乳を試みると、その形状や大きさのせいで乳児が乳頭をうまくくわえられないために、母乳育児を断念するということも少なくありません。授乳がしにくい場合や形態的異常が、医師による手術の対応となります。
 乳頭の症状が明らかで目立つために、変形した乳頭を普通くらいの形状、大きさにして、授乳の際の支障を解消したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、整形外科、あるいは美容整形外科を受診し、手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。
[位置情報]重複乳頭の検査と診断と治療
 乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による診断では、重複乳頭と分裂乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、視診、触診で判断します。
 乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による治療では、重複乳頭の場合、片側の乳房の乳輪中におおかた2つある乳頭のうちの1つが十分な大きさなら、1つを残して一方を単純に切除する手術を行います。どちらか1つでは大きさが不十分なら、2つある乳頭をを1つに縫合して一体化し、通常の一つの乳頭の形状にする手術を行います。局所麻酔で行うことができ、リスクの少ない手術です。
 分裂乳頭の場合も、乳頭の一部を切除して、分裂した乳頭を1つに縫合して一体化し、通常の乳頭の形状にする手術を行います。左右両側の場合でも、左右どちらかの場合でも問題なく手術でき、左右の乳頭のバランスを見ながらデザインして、乳頭を形成します。
 乳腺で作られた乳汁(母乳)を乳頭へ運ぶ管である乳管をできるだけ温存し、なおかつ見栄えよく通常の乳頭に近い形状に整えることが理想的ですが、場合によっては乳管を温存できない、または一部分しか温存できないこともあります。また、完全に真ん丸な形の乳頭にすることが難しく、ややいびつさが残ることもあります。
 乳管がある程度温存できていて、そこそこ丸みのある乳頭に整えることができれば、授乳が可能です。それらの条件を満たせない場合には、授乳が困難になる可能性があります。

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■用語 乳輪内多乳頭 [用語(に)]

[位置情報]乳輪の中に2つ以上の乳頭が存在している状態
 乳輪内多乳頭とは、女性の乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪の中に、複数の乳頭が存在している状態を指す症状。重複乳頭とも呼ばれます。
 通常、片側の乳房の乳輪中にある乳頭は1つですが、まれに2つ、ないし2つ以上の乳頭が生まれ付き存在していたり、あるいは1つある乳頭が生まれ付き2つに分裂していたりすることがあります。乳頭が2つに分裂しているものは分裂乳頭といいます。
 乳輪内多乳頭ではおおかた、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。
 分裂乳頭でも同様に、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。
 乳輪内多乳頭、分裂乳頭とも、生まれ付きのものがほとんどで、胎児期の発生段階での個体差によるものと考えられていますが、発症の理由はよくわかっていません。
 また、一部は神経線維腫(しゅ)症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)という特定の疾患に合併して起こることが知られていますが、極めてまれです。
 乳輪内多乳頭、分裂乳頭であっても、本人にとって支障がなければ治療をする必要はありませんが、見た目が気になるという問題と、授乳という機能的な問題が存在します。子供ができて実際に授乳を試みると、その形状や大きさのせいで乳児が乳頭をうまくくわえられないために、母乳育児を断念するということも少なくありません。授乳がしにくい場合や形態的異常が、医師による手術の対応となります。
 乳頭の症状が明らかで目立つために、変形した乳頭を普通くらいの形状、大きさにして、授乳の際の支障を解消したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、整形外科、あるいは美容整形外科を受診し、手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。
[位置情報]乳輪内多乳頭の検査と診断と治療
 乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による診断では、乳輪内多乳頭と分裂乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、視診、触診で判断します。
 乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による治療では、乳輪内多乳頭の場合、片側の乳房の乳輪中におおかた2つある乳頭のうちの1つが十分な大きさなら、1つを残して一方を単純に切除する手術を行います。どちらか1つでは大きさが不十分なら、2つある乳頭をを1つに縫合して一体化し、通常の一つの乳頭の形状にする手術を行います。局所麻酔で行え、リスクの少ない手術です。
 分裂乳頭の場合も、乳頭の一部を切除して、分裂した乳頭を1つに縫合して一体化し、通常の乳頭の形状にする手術を行います。左右両側の場合でも、左右どちらかの場合でも問題なく手術でき、左右の乳頭のバランスを見ながらデザインして、乳頭を形成します。
 乳腺で作られた乳汁(母乳)を乳頭へ運ぶ管である乳管をできるだけ温存し、なおかつ見栄えよく通常の乳頭に近い形状に整えることが理想的ですが、場合によっては乳管を温存できない、または一部分しか温存できないこともあります。また、完全に真ん丸な形の乳頭にすることが難しく、ややいびつさが残ることもあります。
 乳管がある程度温存できていて、そこそこ丸みのある乳頭に整えることができれば、授乳が可能です。それらの条件を満たせない場合には、授乳が困難になる可能性があります。

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■用語 乳房痛 [用語(に)]

[位置情報]女性の乳房に痛みが生じる状態
 乳房痛とは、女性の乳房に痛みが生じる状態を指す症状。
 女性の乳房は、乳汁(母乳)の出口となる乳頭(乳首)、乳汁を作る働きを持つ乳腺(にゅうせん)と脂肪、血管、神経でできています。痛みの症状の原因は、卵巣から分泌されている女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)がほとんどで、思春期、月経期間、妊娠期間、閉経時と、女性であればどの時期でも起こる可能性があります。また、乳房の疾患が原因となって、乳房に痛みやしこり現れることもあります。
 乳房痛は、軽いしびれから鋭い痛みまで、重症度が異なります。乳房痛を患う女性は、乳房の圧痛を感じたり、通常にない乳房の張りを感じたりする場合があります。
 月経のある女性は、月経周期に関連し、排卵から次の月経までの黄体期に卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で、乳腺内の血管の膨張や乳腺組織の増加のために、乳房に痛みや張りを感じます。両方の乳房に起こり、全体的に痛むことが多いようです。生理的なものであれば、日常生活に支障を来すことはありません。月経周期に関連する痛みは大抵の場合、生理中または生理後には軽減します。
 強い痛みが続く場合は、医師による治療の対象になります。この治療が必要な乳房痛は、現れる時期や月経の有無から、周期性乳房痛と非周期性乳房痛に分けられます。
 周期性乳房痛は、月経のある女性に起こります。黄体期から症状が現れて、次の月経まで7日間以上にわたって中等度より強めの痛みが続きます。痛みのために、眠りが浅くなったり、通勤や通学に不都合を生じたり、不快感や苦痛感、性生活への影響もみられます。
 女性の月経周期には複数のホルモンがかかわっているので、どれか1つのホルモンに原因を特定することはできませんが、大脳の下部にある下垂体(脳下垂体)から分泌されるプロラクチンの過剰な増加などのホルモン変化が主な原因とされています。また、周期的な強い乳房痛は、乳がんの発症や増殖にかかわる危険因子の1つで、乳がんのリスクを高めることが知られています。
 非周期性乳房痛は、月経周期とは関係なく痛みが現れます。周期性乳房痛よりも頻度は少ないものの、閉経後の女性に多くみられます。外傷、炎症などの器質的疾患以外ではっきりとした乳房痛の原因を特定することは困難ですが、非周期性乳房痛もホルモンの変化が原因と考えられています。ホルモンの変化による乳房痛の多くは、両方の乳房に感じます。
 片側の乳房の一部で持続する乳房痛は、乳がんとの関連性も認められています。乳がんでの非周期性乳房痛の出現頻度は、2~7%前後と推定されています。
 乳房に痛みを伴う疾患としては、乳汁を分泌する乳腺に炎症が起こる乳腺炎が代表的です。乳房にしこりができる主な疾患は、乳腺症、乳腺線維腺腫(せんいせんしゅ)、乳がんで、うち乳腺症にのみ押さえた時の圧痛があります。
 乳腺炎には、急性のものと慢性のものがあります。急性乳腺炎のほとんどは、授乳期、ことに産褥(さんじょく)期にみられ、うっ滞性乳腺炎と化膿(かのう)性乳腺炎の2つに分けられます。慢性の乳腺炎には、授乳期以外に膿(うみ)の塊ができる乳輪下膿瘍(のうよう)があります。
 急性うっ滞性乳腺炎は、若い初産の女性の出産後2~3日のころによくみられるもので、乳管からの乳汁の排出障害があるために、乳房のはれと軽い発赤と熱感が起こります。痛みはあっても、激しい全身症状は出ません。初産の場合、乳管が狭いので乳汁が乳腺内に詰まってしまうことが、その原因と考えられています。乳児への授乳が十分でない場合にも起きます。
 急性化膿性乳腺炎は、出産後2~6週のころに乳腺内に乳汁がたまり、ここに主にブドウ球菌による細菌感染が起きて、乳房全体にはれが生じます。炎症が進むと、乳房が硬く赤くはれて、激しく痛み、熱感があります。その後、炎症が1カ所に固まってくると、膿瘍を作り、時には自然に破れて膿が外に出ることもあります。わきの下のリンパ節がはれたり、全身に寒けや震えが出て、時に40℃以上にも発熱することもあります。
 乳輪下膿瘍は、乳頭の乳管開口部から化膿菌が侵入したことにより、乳輪の下に膿がたまり、乳輪周囲の皮膚にまで広がる慢性疾患です。授乳やホルモン分泌とは関係なく、若い女性によくみられ、乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。陥没乳頭の人に多くみられますが、乳首が陥没していない人でもみられます。
 乳腺症は、女性ホルモンのバランスが崩れることで、乳腺に起こるさまざまな病変の総称です。30~40歳代でよくみられる良性疾患で、乳腺炎や乳がんのようにはっきりとした病気ではありません。生理前に乳腺が張る、乳房が痛むということは女性なら誰でも経験があることですが、乳腺症も女性ホルモンの影響を強く受けて起こりますので、月経周期に応じて症状が変化します。すなわち、卵巣からのホルモン分泌が増える生理前になると症状が強くなり、生理が終わると自然に和らぎます。
 症状は乳房のしこりや痛み、乳頭分泌など多様ですが、多くは正常な体の変化で、通常は治療の必要はありません。
 乳腺線維腺腫は、乳汁を分泌する乳腺が増殖することで形成される良性のしこりです。乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。はっきりとした原因はわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)が何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる、痛みを伴わないしこりとして自覚されることが多いようです。
 線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。
 乳がんは、乳腺にできるがんです。40歳代以上に多く、高齢出産をした女性や、授乳の経験が少ない女性、肥満の女性、親族ががんにかかったことがある女性などがかかりやすいことが知られています。初発症状としては乳房に痛みのない硬いしこりができて、押しても動かないのが特徴で、同じしこりを触れる疾患でも乳腺症とは痛みの有無で、ある程度は判別がつきます。しかし、必ずしも痛みを伴わないわけではなく、特に進行すると片側の乳房の一部が痛みを伴うことが多くなります。
 同時に、皮膚にへこみが生じたり、乳頭から血の混じった分泌物が出るといった症状が起こることがあります。乳がんはほかのがんに比べて進行が遅く、しこりが1センチ四方の大きさになるまで10年ほどかかるので、しこりが小さいうちに見付かれば90%以上の人が治ります。
 乳房痛を乳がんと結び付ける女性が多いのですが、乳房の痛みが必ずしも乳がんによるとは限らず、良性変化である乳腺症が原因のことが多いので、痛みが長く続くようなら乳腺科、乳腺外科、外科を受診することが勧められます。
[位置情報]乳房痛の検査と診断と治療
 乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、乳がんの可能性も考慮し、問診、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。
 乳腺症が疑われた場合、明らかな乳腺腫瘍(しゅよう)が認められず、がんでないことを確かめた上で、2~3カ月間様子を見て、症状が生理周期と同調した場合に、乳腺症と確定します。
 乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、乳腺症の場合で痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。
 強い痛みが5~6カ月ほど続くようなケースでは、薬物療法を行います。男性ホルモンの働きをする薬や、女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きを抑える抗エストロゲン薬、鎮痛薬などの飲み薬を処方し、2~3カ月使うと効果が現れます。
 薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、半数以上の人で症状は軽減します。まれに、副作用として太ったり、肝臓に障害を起こしたり、血栓ができやすくなったりする人もいます。
 乳腺症と乳がんの確実な区別が難しい場合には、針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(乳房生検)などを行います。
 顕微鏡で見ると、増殖性病変として腺症、乳頭腫症などが認められ、委縮性病変としては線維症、嚢胞(のうほう)症、アポクリン化生などが認められます。前者の増殖性病変が認められた場合は、乳がん発症のリスクが高くなりますので、精密検査を行うことになります。
 乳がんを起こしている場合は、乳房の病変部を切除する手術行うことで、乳がんを治すことができるだけでなく乳房の痛みを治すことができます。

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■用語 母性喪失症候群 [用語(は行)]

[位置情報]女性の乳房内の乳腺に発生する腫瘍
[天秤座]子供が十分な愛情を感じられないまま育ち、精神的な発達や身体的な成長に遅れを生じる状態
 母性喪失症候群とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、情緒の発達、言語や知的能力の発達、さらに身体発育の遅れと行動異常を生じる状態。愛情遮断症候群、情緒剥脱(はくだつ)症候群とも呼ばれます。
 乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが出るほか、精神的な発達にも遅れが出ると考えられています。
 子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあります。入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
 母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。
 栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
 愛情不足の養育が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。
 養育者が子供の母性喪失症候群に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
[天秤座]母性喪失症候群の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断では、身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
 小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。
 また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。
 しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
 母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。

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