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■凍結受精卵の無断移植で出産も、父子関係が存在 奈良家庭裁判所が判断を示す [健康ダイジェスト]

 凍結保存していた夫婦の受精卵を妻が夫に無断で移植して出産したことを巡り、生まれた子供と夫との間に法律上の親子関係があるかどうかが争われた裁判で、奈良家庭裁判所は「夫の同意はなかったが、当時は婚姻中のため、法律上の親子関係がある」という判断を示しました。
 体外受精で生まれる子供が急増する中、夫婦間で同意なく受精卵を移植し生まれた子供を巡る判決は初めてだということで、専門家の間では法律の整備を求める意見も出ています。
 奈良県に住む外国籍の46歳の男性は、2004年に結婚した妻が奈良市内のクリニックに凍結保存していた夫婦の受精卵を使って、2015年に長女を出産したことを巡り、「別居中に自分の同意なく受精卵が移植されて生まれた子供で、夫婦関係は破綻していた」として、法律上の親子関係はないと訴えました。
 一方、子供と母親の弁護士は、「親子関係が否定されれば、扶養や相続などが認められず、子供に重大な不利益を負わせることになる」として争ってきました。
 15日の判決で奈良家庭裁判所の渡辺雅道裁判長は、「夫は移植に同意していないが、子供が生まれた当時は婚姻中で、別居中も旅行などの交流があったことからすれば夫婦の実態が失われていたとはいえず、民法の規定により、法律上の親子関係がある」として、男性の訴えを退けました。一方で、判決では生殖補助医療で産まれる子供について、「夫と妻との間の子供として受け入れることを同意していることが生殖補助医療を正当化するために必要だ」と指摘しました。
 日本産科婦人科学会によりますと、夫婦の同意がなく凍結受精卵を移植して生まれた子供を巡る判決は初めてだということです。日本産科婦人科学会の倫理規定では、受精卵を移植するごとに夫婦の同意を文書でとるようクリニック側に求めていますが、今回のケースでは文書での同意をとっていませんでした。
 凍結受精卵を巡っては、東京都内に住む男性も、妻が無断で移植して出産したとして同様の訴えを大阪家庭裁判所に起こしており、専門家の間では再発防止のため法律の整備を求める意見も出ています。
 判決について、原告の代理人を務める河野秀樹弁護士は「訴えが却下されたのは少し驚いた」と述べ、大阪高等裁判所に控訴する考えを示しました。一方で、「受精卵の移植には夫の同意が必要だと主張してきた部分は認められ、原告の男性も一定の評価をすると思う」と述べました。
 判決について、妻だった女性側の代理人の北條正崇弁護士は、「訴えが退けられほっとしています。子供の将来を考え、利益や福祉などが考慮された判決だと思います」と述べました。
 判決について、受精卵の移植を行った奈良市のクリニックは、「コメントできない」としています。
 今回の裁判は2016年10月、奈良県内に住む外国籍の46歳の男性が、奈良家庭裁判所に起こしました。男性は2004年に日本人の同い年の女性と結婚し、2010年、不妊治療のため奈良市内のクリニックで体外受精を行い、10個の受精卵を凍結保存しました。翌年、女性は受精卵の移植手術を受け、長男が生まれました。その後、夫婦関係が悪化して4年前から別居しましたが、クリニックには受精卵が残されたままでした。
 3年前、女性は男性に無断でクリニックに保存されていた受精卵の移植手術を受けました。男性はその後、妊娠を知らされたということで、女性は2015年、長女を出産しました。
 民法の規定では、結婚中に妻が妊娠した子は夫の子とするという「嫡出推定」と呼ばれる規定があり、これによって女の子の法律上の父親は男性とされました。その後、男性は女性と離婚し、受精卵が同意なく移植された経緯を考えれば法律上の親子関係はないとして奈良家庭裁判所に訴えました。
 今回の問題では、移植手術を行ったクリニックの対応も疑問視されました。日本産科婦人科学会の倫理規定では、医療機関は受精卵の移植の前に夫婦双方からの同意を得た上で同意書を保管することを求めていますが、今回の長女の出産のケースについて、クリニックは夫婦の同意書をとっていませんでした。
 理由についてクリニック側は、「夫婦が過去にも受精卵で長男を出産していて、受精卵の保存費用も妻が払っていたため、夫婦が第2子を希望していると思っていた」としています。
 男性は「移植への同意の有無を確認しなかった」として、昨年12月、今回の裁判とは別にクリニックなどに賠償を求める訴えを起こし、裁判が続いています。
 不妊治療のために精子と卵子を体の外で人工的に受精させる体外受精を行う夫婦は、晩婚化などを背景に年々、増え続けています。国内での体外受精は、34年前の1983年に初めて出産した例が報告され、日本産科婦人科学会がまとめた2015年の実施件数は42万4151件と、統計を取り始めた1985年以来、初めて40万件を超え、これまでで最も多くなりました。
 また、体外受精で生まれた子供の数は、前の年からおよそ3700人増えて5万1001人と過去最多になり、2015年に生まれた子供のおよそ20人に1人が体外受精で生まれた計算となります。1985年から2015年までに体外受精で生まれた子供の数は、合わせて48万2000人余りに達しています。

 2017年12月15日(金)

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■臍帯血の無届け移植事件、業者2人に有罪判決 松山地方裁判所 [健康ダイジェスト]

 東京都や大阪府のクリニックで臍帯血(さいたいけつ)が国に無届けで移植されていた事件で、再生医療安全性確保法違反の罪に問われた販売業者ら2被告の判決公判が14日、松山地方裁判所でありました。末弘陽一裁判長はいずれも、執行猶予の付いた有罪判決を言い渡しました。
 判決の内容は、臍帯血保管販売会社「ビー・ビー」(茨城県つくば市、解散)元社長の篠崎庸雄(つねお)被告(52 歳)=詐欺、横領罪でも起訴=に懲役2年4カ月執行猶予3年(求刑懲役2年6カ月)、仲介会社「レクラン」(福岡市、閉鎖)元社長の井上美奈子被告(59 歳)に懲役10カ月執行猶予2年(求刑懲役10カ月)。
 事件ではほかに2被告が起訴され、患者に臍帯血を投与していた表参道首藤クリニック(東京都渋谷区)の医師首藤紳介被告(40歳)は懲役1年を求刑されていて、判決は今月21日に言い渡されます。
 臍帯血はへその緒や胎盤に含まれ、公的バンクが産婦から無償提供を受け、白血病の治療などに使われています。再生医療安全性確保法により、2015年11月以降は他人の細胞の移植には、国への治療計画の提出が原則必要となりました。
 判決などによると、篠崎被告は8年前に経営破綻(はたん)した民間バンクから臍帯血を入手し、2016年2月~2017年4月、井上被告らと共謀し、東京都内や大阪市内のクリニックで計6人に無届けで臍帯血を移植しました。篠崎被告はさらに、自身が社長を務める会社に臍帯血の保管を委託した男女からその所有権をだまし取ったほか、家宅捜索を受けた際、保管を命じられた臍帯血をクリニックに譲渡し、横領しました。
 篠崎被告は約1000検体の臍帯血を入手。各地のクリニックに転売され、高額の自由診療として、有効性や安全性が未確立のがん治療や美容目的などで用いられていました。
 末弘裁判長は篠崎被告について、「研究用と偽って臍帯血をだまし取ったほか、販売によって多額の利益を得ていた行為は悪質だ。再生医療に対する信頼を著しく失墜させ、社会的影響も大きい」と指摘し、2被告が必要な前処置をせず臍帯血を移植していたことについて、「投与された細胞の性質が体内で変わり得る未知のリスクが含まれる。人命及び健康に重大な影響を与える恐れがあった」と述べました。
 篠崎被告が民間バンクから引き継いだことが切っ掛けで流出した臍帯血は、およそ100人に違法に移植され、厚生労働省は全国の12の医療機関に対し、行政処分を行うなど影響が広がりました。
 厚労省は今回の事件を受け、11月から国に届け出をして、再生医療を提供する医療機関について、一覧でホームページに掲載しており、治療を検討する際の参考にしてほしいとしています。

 2017年12月15日(金)

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