■病気 劇症肝炎 [病気(か行)]
急性肝不全症状を呈する疾患
劇症肝炎とは、急性肝炎の経過中、8週間以内に、精神神経症状である肝性脳症を始めとして、黄疸(おうだん)、出血傾向などの急性肝不全症状が出現する疾患です。
急性肝炎の発病10日以内に肝性脳症が出現する急性型と、11日以後に出現する亜急性型とがあり、経過は急性型のほうが良好です。その肝性脳症は、肝臓の機能の低下に伴う老廃物の蓄積により出現します。
劇症肝炎は死亡率が高く、運よく回復しても肝硬変になることが多く、非常に恐ろしい疾患。肝細胞は増殖する能力に富んでいるために、ほとんどの急性肝炎では肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻りますが、劇症肝炎では破壊が広く及ぶために肝細胞の増殖が遅れ、適切な治療が行われないと高頻度に死に至るのです。
日本では、推定で年間約1000人、急性肝炎の発病者の1~2パーセントが劇症化すると見なされています。新生児から高齢者までのあらゆる年齢層で、男女を問わず発症します。
主な原因は肝炎ウイルスの感染で、薬物アレルギーと自己免疫性肝炎によるものもみられます。近年、もともと肝臓病以外の病気のために薬物治療を受けていた人が劇症肝炎になるケースが、増える傾向にあります。
日本では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40パーセントを占めています。これには、B型肝炎ウイルスの保菌者が発症する場合と、他の保菌者から感染して発症する場合とがあります。
A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染も頻度はわずかながら、劇症肝炎になる場合があります。E型肝炎の劇症化率は1~2パーセントですが、妊婦が発症すると、死亡率は10~20パーセントにも達すると報告されています。
B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、原因が確定できないもので、全体の約30パーセントを占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因と確定されるものは、いずれも10パーセント以下を占めるにすぎません。
肝性昏睡が劇症肝炎の特徴的な症状
黄疸が出てから1週間以上たっても強い倦怠(けんたい)感、食欲不振、吐き気、頑固な頭痛、不眠などの症状がある場合には、劇症化の恐れがあります。発熱、筋肉痛、関節痛、腰痛などの全身症状や、肝性口臭と呼ばれる甘酸っぱい口臭のあるものは、注意が必要です。
黄疸が次第に強くなり、やがて精神異常が現れ、昏睡(こんすい)に陥りますが、この状態を肝性昏睡といいます。
肝性昏睡はかなり特徴的な症状で、劇症肝炎の重篤度の指標となります。初めは睡眠のリズムが逆転し、夜は眠れなくて、昼間に眠たがります。また、性格が変わったように投げやりになる、抑うつ状態になるなどの症状があります。
この時期には、肝性昏睡と判定できないことが多いのですが、次第に日付や場所を間違う、簡単な計算ができない、金銭をばらまく、大事なものを捨てるなどの異常な行動を示します。
間もなく、羽ばたき振戦(しんせん)と呼ばれる、鳥の羽ばたきに似た手の粗大な震えが現れ、外界の刺激に応じられなくなり、眠ったような嗜眠(しみん)状態となり、ついには意識が完全に消失します。
そのほか、細菌の感染や腎(じん)臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器に高頻度に障害が次第に起こるため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔(こうくう)内や注射針で刺した部位からの出血など、いろいろな症状が次々と現れることになります。
人工肝補助療法や肝移植による治療
劇症肝炎は致命率が極めて高いので、発現が疑われたら、できる限り早期に適切な処置をすることが必要となります。
治療においては、B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、ラミブジンやインターフェロンと呼ばれる抗ウイルス療法が最も有効です。また、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因の場合は、副腎皮質ステロイドを大量に点滴するパルス療法が実施されます。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより、劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。
劇症肝炎となった場合には、原因のいかんにかかわらず、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法が行われて、血液凝固因子など体に必要な物質を補充し、アンモニアなど体内にたまった中毒性物質を取り除きます。
この人工肝補助療法には、血液から血球以外の成分である血漿(けっしょう)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する血漿交換と、腎臓が悪い人で行われている血液透析を応用した血液濾過(ろか)透析があります。通常は両方が併用されます。
また、全身の臓器障害に対しても、適時に治療が行われて、肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命されることが可能です。通常は、すべてに後遺症を残すことなく治癒します。
各種の治療によっても肝臓の機能が回復しない場合は、肝移植が行われることになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合がありますが、日本では後者の生体部分肝移植が広く行われています。従来、生体部分肝移植は主に小児を対象に行われていましたが、近年は成人でも積極的に行われるようになりました。
肝移植により救命された後は、移植された肝臓が他人のものであるので、体から拒絶反応によって排除されないように、免疫抑制薬を一生涯服用する必要があります。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
劇症肝炎とは、急性肝炎の経過中、8週間以内に、精神神経症状である肝性脳症を始めとして、黄疸(おうだん)、出血傾向などの急性肝不全症状が出現する疾患です。
急性肝炎の発病10日以内に肝性脳症が出現する急性型と、11日以後に出現する亜急性型とがあり、経過は急性型のほうが良好です。その肝性脳症は、肝臓の機能の低下に伴う老廃物の蓄積により出現します。
劇症肝炎は死亡率が高く、運よく回復しても肝硬変になることが多く、非常に恐ろしい疾患。肝細胞は増殖する能力に富んでいるために、ほとんどの急性肝炎では肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻りますが、劇症肝炎では破壊が広く及ぶために肝細胞の増殖が遅れ、適切な治療が行われないと高頻度に死に至るのです。
日本では、推定で年間約1000人、急性肝炎の発病者の1~2パーセントが劇症化すると見なされています。新生児から高齢者までのあらゆる年齢層で、男女を問わず発症します。
主な原因は肝炎ウイルスの感染で、薬物アレルギーと自己免疫性肝炎によるものもみられます。近年、もともと肝臓病以外の病気のために薬物治療を受けていた人が劇症肝炎になるケースが、増える傾向にあります。
日本では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40パーセントを占めています。これには、B型肝炎ウイルスの保菌者が発症する場合と、他の保菌者から感染して発症する場合とがあります。
A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染も頻度はわずかながら、劇症肝炎になる場合があります。E型肝炎の劇症化率は1~2パーセントですが、妊婦が発症すると、死亡率は10~20パーセントにも達すると報告されています。
B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、原因が確定できないもので、全体の約30パーセントを占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因と確定されるものは、いずれも10パーセント以下を占めるにすぎません。
肝性昏睡が劇症肝炎の特徴的な症状
黄疸が出てから1週間以上たっても強い倦怠(けんたい)感、食欲不振、吐き気、頑固な頭痛、不眠などの症状がある場合には、劇症化の恐れがあります。発熱、筋肉痛、関節痛、腰痛などの全身症状や、肝性口臭と呼ばれる甘酸っぱい口臭のあるものは、注意が必要です。
黄疸が次第に強くなり、やがて精神異常が現れ、昏睡(こんすい)に陥りますが、この状態を肝性昏睡といいます。
肝性昏睡はかなり特徴的な症状で、劇症肝炎の重篤度の指標となります。初めは睡眠のリズムが逆転し、夜は眠れなくて、昼間に眠たがります。また、性格が変わったように投げやりになる、抑うつ状態になるなどの症状があります。
この時期には、肝性昏睡と判定できないことが多いのですが、次第に日付や場所を間違う、簡単な計算ができない、金銭をばらまく、大事なものを捨てるなどの異常な行動を示します。
間もなく、羽ばたき振戦(しんせん)と呼ばれる、鳥の羽ばたきに似た手の粗大な震えが現れ、外界の刺激に応じられなくなり、眠ったような嗜眠(しみん)状態となり、ついには意識が完全に消失します。
そのほか、細菌の感染や腎(じん)臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器に高頻度に障害が次第に起こるため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔(こうくう)内や注射針で刺した部位からの出血など、いろいろな症状が次々と現れることになります。
人工肝補助療法や肝移植による治療
劇症肝炎は致命率が極めて高いので、発現が疑われたら、できる限り早期に適切な処置をすることが必要となります。
治療においては、B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、ラミブジンやインターフェロンと呼ばれる抗ウイルス療法が最も有効です。また、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因の場合は、副腎皮質ステロイドを大量に点滴するパルス療法が実施されます。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより、劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。
劇症肝炎となった場合には、原因のいかんにかかわらず、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法が行われて、血液凝固因子など体に必要な物質を補充し、アンモニアなど体内にたまった中毒性物質を取り除きます。
この人工肝補助療法には、血液から血球以外の成分である血漿(けっしょう)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する血漿交換と、腎臓が悪い人で行われている血液透析を応用した血液濾過(ろか)透析があります。通常は両方が併用されます。
また、全身の臓器障害に対しても、適時に治療が行われて、肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命されることが可能です。通常は、すべてに後遺症を残すことなく治癒します。
各種の治療によっても肝臓の機能が回復しない場合は、肝移植が行われることになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合がありますが、日本では後者の生体部分肝移植が広く行われています。従来、生体部分肝移植は主に小児を対象に行われていましたが、近年は成人でも積極的に行われるようになりました。
肝移植により救命された後は、移植された肝臓が他人のものであるので、体から拒絶反応によって排除されないように、免疫抑制薬を一生涯服用する必要があります。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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