■用語 石灰沈着性腱炎 [用語(せ)]
石灰化したカルシウムが関節の腱などに沈着して炎症が生じ、上肢や下肢の関節周辺に痛みが起こる疾患
石灰沈着性腱炎(けんえん)とは、石灰化したカルシウムが関節の腱や靭帯(じんたい)、関節包、滑液包に沈着することにより炎症が生じ、上肢や下肢の関節周辺に痛みが起こる疾患。石灰性腱炎とも呼ばれます。
多くは肩関節に発症しますが、股(こ)関節にも比較的よくみられます。肘(ひじ)関節、膝(ひざ)関節、頸椎(けいつい)、手関節、足関節に発症することは、まれです。
石灰沈着性腱炎の多くは、中高年に発症します。まれに、30歳代にみられることがあります。典型的な症状は、急に起こる激痛と、痛みによる関節の動きの制限です。
頻度の高い肩関節の石灰沈着性腱炎は、石灰化したカルシウムが肩腱板内に沈着することにより炎症が生じ、肩の痛みが起こります。肩腱板は肩関節で上腕を保持している筋肉と腱の複合体であり、肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。
肩関節の石灰沈着性腱炎は、40歳代から60歳代の女性に多く発症します。肩を強く打つなどの思い当たる切っ掛けもなく、片側の肩の激しい痛みを突然、夜間などに覚えます。急激に痛みが増してきて、睡眠が妨げられるほどになります。また、肩の痛みのため可動域の制限がみられ、肩の挙上ができなくなります。
強い症状が発症後1~4週みられる急性型、中等度の症状が1~6カ月続く亜急性型、運動時痛などが6カ月以上続く慢性型があります。慢性型では、急性期の激痛が消失した後にも肩関節の硬さが残って、関節の可動域の低下を起こし、肩関節周囲炎(五十肩)と同じような状態になります。
石灰化したカルシウムはリン酸カルシウムの結晶で、その肩腱板内への沈着は、肩腱板の加齢による変性と、女性ホルモンの分泌減少の影響によって起こると考えられています。
体内のカルシウムは腸で吸収されて、骨を丈夫にするために使われ、不要な分のカルシウムは尿とともに排出されて、常に一定量が体内に残るようにバランスがとられています。しかし、女性では30歳代をピークに、徐々に骨量が落ちてきます。女性ホルモンの分泌減少に伴って、破骨細胞の働きが増し、骨の代謝のバランスが崩れて、骨からたくさんのカルシウムが血中に放出される結果です。
その放出されたカルシウムの多くは尿とともに体外に放出されますが、一部は腱や靭帯(じんたい)、関節包、滑液包、血管壁に沈着していくことになります。腱などの中に沈着する石灰化したカルシウムに対して、体は異物と認識して反応するために炎症が生じ、痛みが起こることになります。
石灰化したカルシウムは当初、濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰化したカルシウムがどんどんたまって、膨らんでくると、痛みが増してきます。
そして、肩腱板から関節の周囲にある滑液包内に、石灰化したカルシウムが漏れ出す時に激痛となります。
肩関節に次いで、石灰沈着性腱炎を多く発症するのが股関節です。転倒やぶつけたなどの思い当たる切っ掛けもなく、片側の股関節の激しい痛みを突然、覚え、体重をかけると痛みが増強して、歩くのも大変つらい状態になったり、安静にしていても痛みがなくならないこともあります。痛みのため可動域の制限がみられ、股関節が深く曲げられなくこともあります。
足関節や足の先の関節などでも石灰沈着性腱炎がみられ、体重のかかる部位に当たるので、不自由さが深刻な場合が多くみられます。
手指の関節でも石灰沈着性腱炎がみられ、激痛、熱感、はれ、発赤、指の動きの制限などがみられます。手指は皮膚のすぐ下に関節があるため、肩関節や股関節では目立たないはれや熱感、発赤がわかります。
石灰沈着性腱炎の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、関節の圧痛の部位や関節の動きの状態などを調べ、X線(レントゲン)撮影によって肩腱板や股関節の腱部分などに石灰化したカルシウムの沈着を確認することによって、石灰沈着性腱炎と確定します。
石灰沈着の位置や大きさを調べるために、CT(コンピューター断層撮影)検査や超音波検査なども行うこともあります。
整形外科の医師による治療では、痛みを取り除く目的で、水溶性副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と局所麻酔剤の局所への注射、消炎鎮痛剤の内服、湿布を張るなどが行われます。肩関節の石灰沈着性腱炎では、注射器でたまった石灰の吸引を試みることもあります。
ほとんどの場合、保存療法で軽快します。石灰化が起こったとしても、時間の経過とともに、自然に修復しようとする体の反応により、石灰化部分が小さくなってきます。しかし、完全に石灰化部分が修復されるまでには、2~3カ月かかります。
慢性の場合は、関節の動きを回復するために温熱療法や運動療法が行われます。急性でも慢性でも強い痛みが続き、関節の運動に支障がある場合は、石灰を摘出する手術を行います。
一般に行われている治療法ではありませんが、胃潰瘍(かいよう)治療薬のシメチジンに、石灰を吸収し痛みを軽減する作用があるともされています。
石灰沈着性腱炎(けんえん)とは、石灰化したカルシウムが関節の腱や靭帯(じんたい)、関節包、滑液包に沈着することにより炎症が生じ、上肢や下肢の関節周辺に痛みが起こる疾患。石灰性腱炎とも呼ばれます。
多くは肩関節に発症しますが、股(こ)関節にも比較的よくみられます。肘(ひじ)関節、膝(ひざ)関節、頸椎(けいつい)、手関節、足関節に発症することは、まれです。
石灰沈着性腱炎の多くは、中高年に発症します。まれに、30歳代にみられることがあります。典型的な症状は、急に起こる激痛と、痛みによる関節の動きの制限です。
頻度の高い肩関節の石灰沈着性腱炎は、石灰化したカルシウムが肩腱板内に沈着することにより炎症が生じ、肩の痛みが起こります。肩腱板は肩関節で上腕を保持している筋肉と腱の複合体であり、肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。
肩関節の石灰沈着性腱炎は、40歳代から60歳代の女性に多く発症します。肩を強く打つなどの思い当たる切っ掛けもなく、片側の肩の激しい痛みを突然、夜間などに覚えます。急激に痛みが増してきて、睡眠が妨げられるほどになります。また、肩の痛みのため可動域の制限がみられ、肩の挙上ができなくなります。
強い症状が発症後1~4週みられる急性型、中等度の症状が1~6カ月続く亜急性型、運動時痛などが6カ月以上続く慢性型があります。慢性型では、急性期の激痛が消失した後にも肩関節の硬さが残って、関節の可動域の低下を起こし、肩関節周囲炎(五十肩)と同じような状態になります。
石灰化したカルシウムはリン酸カルシウムの結晶で、その肩腱板内への沈着は、肩腱板の加齢による変性と、女性ホルモンの分泌減少の影響によって起こると考えられています。
体内のカルシウムは腸で吸収されて、骨を丈夫にするために使われ、不要な分のカルシウムは尿とともに排出されて、常に一定量が体内に残るようにバランスがとられています。しかし、女性では30歳代をピークに、徐々に骨量が落ちてきます。女性ホルモンの分泌減少に伴って、破骨細胞の働きが増し、骨の代謝のバランスが崩れて、骨からたくさんのカルシウムが血中に放出される結果です。
その放出されたカルシウムの多くは尿とともに体外に放出されますが、一部は腱や靭帯(じんたい)、関節包、滑液包、血管壁に沈着していくことになります。腱などの中に沈着する石灰化したカルシウムに対して、体は異物と認識して反応するために炎症が生じ、痛みが起こることになります。
石灰化したカルシウムは当初、濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰化したカルシウムがどんどんたまって、膨らんでくると、痛みが増してきます。
そして、肩腱板から関節の周囲にある滑液包内に、石灰化したカルシウムが漏れ出す時に激痛となります。
肩関節に次いで、石灰沈着性腱炎を多く発症するのが股関節です。転倒やぶつけたなどの思い当たる切っ掛けもなく、片側の股関節の激しい痛みを突然、覚え、体重をかけると痛みが増強して、歩くのも大変つらい状態になったり、安静にしていても痛みがなくならないこともあります。痛みのため可動域の制限がみられ、股関節が深く曲げられなくこともあります。
足関節や足の先の関節などでも石灰沈着性腱炎がみられ、体重のかかる部位に当たるので、不自由さが深刻な場合が多くみられます。
手指の関節でも石灰沈着性腱炎がみられ、激痛、熱感、はれ、発赤、指の動きの制限などがみられます。手指は皮膚のすぐ下に関節があるため、肩関節や股関節では目立たないはれや熱感、発赤がわかります。
石灰沈着性腱炎の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、関節の圧痛の部位や関節の動きの状態などを調べ、X線(レントゲン)撮影によって肩腱板や股関節の腱部分などに石灰化したカルシウムの沈着を確認することによって、石灰沈着性腱炎と確定します。
石灰沈着の位置や大きさを調べるために、CT(コンピューター断層撮影)検査や超音波検査なども行うこともあります。
整形外科の医師による治療では、痛みを取り除く目的で、水溶性副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と局所麻酔剤の局所への注射、消炎鎮痛剤の内服、湿布を張るなどが行われます。肩関節の石灰沈着性腱炎では、注射器でたまった石灰の吸引を試みることもあります。
ほとんどの場合、保存療法で軽快します。石灰化が起こったとしても、時間の経過とともに、自然に修復しようとする体の反応により、石灰化部分が小さくなってきます。しかし、完全に石灰化部分が修復されるまでには、2~3カ月かかります。
慢性の場合は、関節の動きを回復するために温熱療法や運動療法が行われます。急性でも慢性でも強い痛みが続き、関節の運動に支障がある場合は、石灰を摘出する手術を行います。
一般に行われている治療法ではありませんが、胃潰瘍(かいよう)治療薬のシメチジンに、石灰を吸収し痛みを軽減する作用があるともされています。
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