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■健康コラム 加齢黄斑変性とドライアイの予防 [健康コラム]

高齢者の失明原因となる加齢黄斑変性
 日本人の発症数が増加の一途をたどっている、加齢黄斑(おうはん)変性とドライアイという二つの眼病について解説し、予防法に触れておきたい。
 まず、加齢黄斑変性というのは、眼球内部の網膜にある黄斑が変性を起こして、視力が低下する疾患。加齢に伴って起こるもので、高齢者の失明原因の一つである。
 黄斑とは、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきた。
 この黄斑に異常が発生すると、視力に低下を来す。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに異常が発生すると、視力の低下がさらに深刻になる。
 加齢黄斑変性には、網膜よりさらに外側に位置している脈絡膜から、異常な血管である新生血管が生えてくることが原因で起こる滲出(しんしゅつ)型と、新生血管は関与せずに黄斑そのものが変性してくる非滲出型の二つのタイプがある。
 新生血管とは、網膜に栄養を送っている脈絡膜から、ブルッフ膜を通り、網膜色素上皮細胞の下や上に伸びる新しい血管。正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまうのである。
 滲出型加齢黄斑変性の初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられる。新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現する。
 病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけだが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がる。病状が進行すると、視力が失われる可能性がある。
 また、片目に病巣が認められたら、四割程度の人では経過とともに両目に発症するといわれている。医師に本疾患と診断された人は、良いほうの目も定期的に診てもらうべきである。
 非滲出型加齢黄斑変性の場合は、黄斑の加齢変化が強く現れた状態で、網膜色素上皮細胞が委縮したり、網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に黄白色の物質がたまったりする。病状の進行は緩やかで、滲出型と比較すると視力低下の程度も軽度であることがほとんどで、視力はあまり悪くならない。
 しかし、新生血管が発生することもあるので、定期的に眼底検査、蛍光眼底検査を行い、経過をみる必要がある。特に、片目がすでに滲出型加齢黄斑変性になっている場合は、注意深く経過をみなければならない。
 加齢黄斑変性は高齢者に多く発症することから、黄斑、とりわけ網膜色素上皮細胞の加齢による老化現象が主な原因と考えられている。また、はっきりしたことはわかっていないが、高血圧や心臓病、喫煙、ビタミンやカロチン、亜鉛などの栄養不足のほか、遺伝の関与も報告されているところ。しかし、加齢黄斑変性の原因と病態は完全には解明されておらず、現在もなお、さまざまな研究がなされている。
 もともと加齢黄斑変性は欧米人に多く、日本人には少ない疾患であった。その主な理由としては、欧米人の目が日本人の目に比べて、目の老化を促進する原因となる光刺激に弱いことが挙げられる。アメリカでは現在、本疾患が中途失明を来す疾患のトップである。
 最近では、日本でも発症数が増加の一途をたどっており、日本人の平均寿命の延びが原因として挙げられている。食生活を中心に生活様式が欧米化したことや、TVやパソコンの普及により目に光刺激を受ける機会が非常に多くなったことも、原因の一つと考えられている。日本人では、女性の約三倍と男性に発症しやすいことを示す研究報告もある。
加齢黄斑変性の検査と診断と治療
 健康診断で、加齢黄斑変性が早期に発見されることもある。五十歳以後の中高年の人は、視力を保つために早めに検査を受けるべきである。
 今まではあまり有効な治療法はなかったが、近年、新しい方法が試みられ、早期発見、早期治療によって視力低下を最小限に抑えられる可能性が期待できるようになってきた。
 病気の診断、程度の判定、最適な治療を考える上で、医師による多くの検査が必要である。特に重要なのは、眼底検査と蛍光眼底検査。
 眼底検査は、眼底にある網膜の状態を詳しく調べるために行われる。検査の前に目薬をさして、瞳孔を開く。まぶしくて近くが見えない状態が約三時間続くが、自然に元に戻る。
 蛍光眼底検査は、網膜や脈絡膜の血液の流れを把握する目的で行われ、腕の静脈に蛍光色素を注射してから眼底を調べる。蛍光色素によって血管だけが浮き彫りになるから、血管の弱い部分や詰まった個所、新生血管の発生した位置を突き止めたり、病状の程度を判定したりすることが可能である。
 加齢黄斑変性の治療では、レーザーによるレーザー光凝固術や、場合によっては手術が行われる。近年、経瞳孔温熱療法や光線力学療法などといった新しい治療法が一部の施設で試みられ始めており、この病気の予後の向上が期待されるようになってきている。
 レーザー光凝固術は、新生血管をレーザー光で焼き固める治療法。正常な周囲の組織にもダメージを与えてしまうので、新生血管が中心窩にある場合はほとんど実施されない。
 手術には、新生血管抜去術と黄斑移動術がある。新生血管抜去術は、新生血管を外科的に取り去る治療法である。新生血管が中心窩にある場合も実施されるが、中心窩を傷付けてしまう可能性もある。
 黄斑移動術は、中心窩の網膜を新生血管から離れた場所に移動させることにより、中心窩の働きを改善する治療法である。新生血管が中心窩にある場合に実施されるが、物が二つに見えるなどの副作用が起こる場合もある。
 新しい治療法の経瞳孔温熱療法は、弱いレーザーを新生血管に照射し、軽度の温度上昇によって、新生血管の活動性を低下させる治療法である。
 光線力学的療法のほうは、光に反応する薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達した時にレーザーを照射する治療法。弱いレーザーによって薬剤が活性化され、新生血管を閉塞する。使用するレーザーは通常のレーザーとは異なり、新生血管周囲の組織にはほとんど影響を及ぼさない。継続的に行う治療法であり、三カ月ごとに検査を行い、その結果により必要に応じて再度実施される。
 薬物療法として、ステロイド剤や血管新生阻害剤などの投与が試みられている。効果を得るには繰り返しの投与が必要で、経瞳孔温熱療法との併用も考えられている。
 治療後の視力は、病状の進行度によってさまざま。一般に早期に治療を開始すると、良好な視力が保たれる傾向にある。黄斑の中でも特に重要な中心窩に病態が現れている場合は、視力の低下は著明である。
 治療後も、定期的に医師による目のチェックを受けるとともに、バランスの取れた食事で目の健康を保ち、全身の健康を維持するべきである。
 亜鉛の血中濃度の低下と加齢黄斑変性の関連が、指摘されている。加齢に伴って、亜鉛が含まれている食品の摂取量が少なくなるとともに、腸の亜鉛を吸収する力が低下することから、亜鉛不足になりやすいといわれている。亜鉛を多く含んでいる食品である穀類、貝類、根菜類を、なるべく摂取するようにしよう。
 同じく、カロチン(カロチノイド)の摂取量が少ないと、加齢黄斑変性を発症しやすいという研究報告もある。カロチンを多く含んでいるカボチャ、ニンジン、トマト、さやいんげん、ピーマンなどの緑黄色野菜を、なるべく摂取するようにしよう。
現代人の目の疲れを予防する
 TVやパソコンの普及により目に光刺激を受ける機会が非常に多くなったことも、加齢黄斑変性の原因の一つと考えられているわけだが、最近の若い世代にも多くみられるのがドライアイ。
 ドライアイは、涙という目を正常に機能させるために欠かせない液体が少ないために、目が疲れる一種の現代病である。その涙は泣く時に出る涙とは全く別で、目が正常に働くための最低限必要な潤いとしてのものであり、涙の基礎分泌と呼ばれている。
 この涙の基礎分泌が一瞬でも止まれば、角膜が乾燥してしまうため、人間は目を開けていられなくなる。
 角膜というのは、眼球の黒目の部分を覆う透明な膜で、直径はほぼ一センチ。角膜の外側はいわゆる白目で、表面は透明な結膜、その下には強膜という白色、不透明の丈夫な膜がある。鏡をのぞいて、自分の目をよく見ると、その表面には細かな血管が張り巡らされていることに気付く。目が疲れてくると、血管が充血して目立つようになるのは、目に酸素と栄養をたくさん送り込むための反応なのである。
 この張り巡らされた血管は、白目が角膜に接するところで途切れてしまう。よくできたもので、角膜の中に入り込む血管は一本もない。透明な角膜に血管が入り込んでいては、視界のじゃまになってしまうからである。
 しかしながら、角膜を構成しているのは生きた細胞であるから、酸素と栄養の補給を欠かすことはできない。そこで、血液の代わりに使われるのが、まばたきの刺激で基礎分泌される涙というわけなのである。
 では、涙が少なくて目の表面が乾くとどうなるのか。眼球の黒目の部分を覆う透明な膜である角膜の表面には、きわめて細かい凸凹が誰にでもある。凸凹は、本来なら涙によって覆われ、なだらかな曲線になっているのであるが、涙が不足するとそのまま露出し、表面組織がはがれてしまう。
 そこに光が乱反射してまぶしさを感じ、視神経を疲れやすくしてしまうのである。特に、一日中コンピューターに向かって仕事をしている人は要注意。じっと画面を見詰める作業なので、まばたきの回数が減る。通常の涙はまばたきの刺激によって出るものだから、その回数が減れば自然に涙の量も減って、ドライアイになりやすいわけだ。
 対策としては、涙に近い成分の目薬を頻繁にさし、目を休めることしか手立てはない。ことに目を酷使する作業をする時には、一時間を一クールとして、その中に必ず十分くらいの休憩をすること。
 その時に、遠くの木々の緑を見るといいとか、星を数えるといいとかいうけれども、一生懸命見ようとするのはかえってよくない。ボーッとするとか、同僚とおしゃべりをするとか、少しでも寝るとか、とにかくあまり物を見ないことが、目にとっては必要なことである。何より血行をよくすることも大切だから、首や腕を回したり、仕事場をうろつくのもいい。目のためには、見るな、そして動けである。
 もちろん、ドライアイの人の仕事休みの時は別にして、ふだんから遠い地平線を凝視したり、強くまばたきを繰り返したりするのは、疲れ目に効果がある。ヨガの古い文献によると、トラータカと称する一点を凝視する方法は、視神経を強め、眼病を治癒させる効果があるという。
 また、光が目の保健に役立つことは生理学的な事実で、漠然と遠くの一点を見詰めたり、天上に輝く日や星を注視することは、肺が清浄な空気によって元気付けられることと同じような効果を持つことになる。日の出や日没の時の、まぶしくない太陽を注視するのは、スーリーヤディヤーナと呼ばれるヨガの保健法でもある。
 しかし、日中のまばゆく、強い太陽光線では、逆に目に炎症を起こす恐れがあるから、みだりに注視することは好ましくない。
 目が疲れたなと思ったら、まぶたを閉じて親指の腹で軽く摩擦をするのもよい。目の体操としては、首をしゃんと伸ばして、自分の鼻先を注視する方法や、上目使いに眉間を見詰める運動がある。顔を動かさず、視線だけを左右の肩先に移動させると、眼球をコントロールしている筋肉の鍛錬になる。
 そして、目の疲れに何よりいいのは、十分に寝て目を休めること。目薬よりも寝薬なのである。




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