■病気 封入体結膜炎 [病気(ふ)]
性交渉で感染するクラミジア結膜炎
封入体結膜炎とは、細菌よりさらに微細なクラミジア(クラミジア・トラコマチス)という微生物によって引き起こされる結膜炎。近年、性感染症の一つとして注目されています。
尿道炎、子宮炎症などの病原体であるクラミジアが、性行為によって目に感染するもので、成人に結膜炎を起こします。また、新生児が母親から産道感染して結膜炎を起こします。
疾患名は、まぶたの裏から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジアの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。
この封入体性結膜炎は特に長期化する結膜炎で、クラミジア感染症にかかっている人の性器からの分泌物に接触することで感染します。急性の結膜炎として、まぶた(眼瞼(がんけん))がはれ、まぶたの内側の結膜(下眼瞼結膜)が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが大量に出ます。
かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。まぶたの内側には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。眼球の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。
目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。
目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。
性感染症の症状も、しばしばみられます。尿道炎、子宮内膜炎、卵管炎などを発症し、性器から膿(うみ)が出たり、排尿時に焼け付くような痛みが起きたりします。
母親から産道感染した新生児では、生後一週間前後で発病し、充血、まぶたのはれ、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜(ぎまく)という分泌物の塊が結膜にできます。
中耳炎や肺炎を合併することもあります。クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に、産道のクラミジアが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。
なお、新生児の感染では、まぶたの内側に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。
封入体結膜炎の検査と診断と治療
封入体結膜炎は、症状と目の検査により診断します。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。
また、点眼麻酔後、結膜表面から擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジアの塊が見付かります。血液検査でクラミジア抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジアを培養する方法もありますが、時間がかかります。
性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為と封入体結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器にクラミジア感染症があります。
封入体結膜炎の治療では、クラミジアに有効なテトラサイクリンやエリスロマイシンの抗生剤の点眼や、眼軟膏(なんこう)が用いられます。点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟膏は長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。
重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、エリスロマイシン、テトラサイクリン、アジスロマイシン、ドキシサイクリンなどの抗生剤の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、子宮の入り口に当たる子宮頚管(けいかん)、尿道などでクラミジアが増殖しているからです。
治療の原則は、抗生剤の眼軟膏を8週、抗生剤の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジアそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。
封入体結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。
さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、他のタオル類と別にしておかなくてはいけません。
封入体結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。
疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーにもぜひ検査、治療を勧めて下さい。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
封入体結膜炎とは、細菌よりさらに微細なクラミジア(クラミジア・トラコマチス)という微生物によって引き起こされる結膜炎。近年、性感染症の一つとして注目されています。
尿道炎、子宮炎症などの病原体であるクラミジアが、性行為によって目に感染するもので、成人に結膜炎を起こします。また、新生児が母親から産道感染して結膜炎を起こします。
疾患名は、まぶたの裏から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジアの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。
この封入体性結膜炎は特に長期化する結膜炎で、クラミジア感染症にかかっている人の性器からの分泌物に接触することで感染します。急性の結膜炎として、まぶた(眼瞼(がんけん))がはれ、まぶたの内側の結膜(下眼瞼結膜)が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが大量に出ます。
かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。まぶたの内側には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。眼球の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。
目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。
目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。
性感染症の症状も、しばしばみられます。尿道炎、子宮内膜炎、卵管炎などを発症し、性器から膿(うみ)が出たり、排尿時に焼け付くような痛みが起きたりします。
母親から産道感染した新生児では、生後一週間前後で発病し、充血、まぶたのはれ、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜(ぎまく)という分泌物の塊が結膜にできます。
中耳炎や肺炎を合併することもあります。クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に、産道のクラミジアが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。
なお、新生児の感染では、まぶたの内側に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。
封入体結膜炎の検査と診断と治療
封入体結膜炎は、症状と目の検査により診断します。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。
また、点眼麻酔後、結膜表面から擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジアの塊が見付かります。血液検査でクラミジア抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジアを培養する方法もありますが、時間がかかります。
性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為と封入体結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器にクラミジア感染症があります。
封入体結膜炎の治療では、クラミジアに有効なテトラサイクリンやエリスロマイシンの抗生剤の点眼や、眼軟膏(なんこう)が用いられます。点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟膏は長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。
重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、エリスロマイシン、テトラサイクリン、アジスロマイシン、ドキシサイクリンなどの抗生剤の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、子宮の入り口に当たる子宮頚管(けいかん)、尿道などでクラミジアが増殖しているからです。
治療の原則は、抗生剤の眼軟膏を8週、抗生剤の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジアそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。
封入体結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。
さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、他のタオル類と別にしておかなくてはいけません。
封入体結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。
疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーにもぜひ検査、治療を勧めて下さい。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
コメント 0