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■薬剤耐性菌の流行で世界的な経済危機の恐れ 世界銀行が発表 [健康ダイジェスト]

 すべての既存薬に耐性を持つ強力な細菌「スーパーバグ」の流行により、アメリカの投資銀行であるリーマン・ ブラザーズが破綻したことに端を発して2008年に起こった世界金融危機と同レベルか、それを上回る世界的な経済危機が誘発される恐れがあるとする報告書を世界銀行グループが19日、発表しました。
 この「薬剤耐性菌感染症:私たちの経済の将来への脅威」と題された報告書は、抗生物質、合成抗菌薬などの抗菌薬が従来のように感染症に効かない場合に、どんな問題が起きるかについて考察しています。
 抗菌薬への細菌の耐性は増加傾向にあり、今後、多くの感染症が再び治療不可能となり、生活困窮者が増えて世界各国は多大な代償を払う事態に陥るとして、2017年から2050年までを予測し、2050年までの世界全体の経済的損失は100兆ドル(約1京円)に上ると指摘しています。
 スーパーバグの流行によって、2050年までに極貧状態に陥る恐れがあるのは最大で2800万人。その大半は開発途上国の人々だとしています。
 報告書は、「世界は現在、1日1・9ドル(約190円)で暮らす極貧層を2030年までになくす方向におおむね向かっており、極貧層の人々の割合を3%未満に抑えるという目標に近付きつつある」ものの、「薬剤耐性菌感染症により、この目標は達成不可能となる危険性がある」と指摘。さらに、低所得国は2050年までに国内総生産(GDP)の5%以上を失う恐れがあると指摘しています。
 また、世界の輸出量は2050年までに最大3・8%縮小し、家畜の生産は年間2・6~7・5%減少すると予測しています。一方で、世界の医療費は2050年まで1年につき3000億ドルから1兆ドル(約30兆円から約100兆円)程度増える可能性があるとしています。
 薬剤耐性菌の問題に対する答えは容易には見付からないため、この世界的な経済危機は持続する可能性が高く、過去に起きた世界金融危機のように循環的な回復によって解決しそうにないといいます。
 抗生物質、合成抗菌薬などの抗菌薬が効きにくい細菌やウイルスなどは、人間や家畜に対する抗生物質の使いすぎなどによって生まれ、高齢者や持病のある人、それに開発途上国で適切な治療を受けられない人が感染すると、死に至ることもあります。
 21日、アメリカのニューヨークで開かれた国連総会では、初めて薬剤耐性菌感染症の問題についての閣僚級の特別会合が開かれ、およそ70の国と国際機関の代表がそれぞれの現状や対策などを表明しました。
 この中で、日本の塩崎恭久厚生労働大臣は、「アジアで薬が効きにくい菌などを監視する体制の整備に協力するほか、薬の研究開発への投資を続ける」などとした上で、「国際社会と連携し、先頭に立って取り組む」と決意を述べました。
 最悪の場合、2050年には薬が効きにくい細菌による肺炎やマラリアなどで世界中で1000万人が死亡するという研究結果もあり、特別会合では各国から強い危機感が示されていました。

 2016年9月22日(木)

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