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■衣類のマイクロファイバーが海洋プラスチック汚染の発生源に ヨーロッパで報告相次ぐ [健康ダイジェスト]

 極地の氷冠から水深1万メートルのマリアナ海溝まで、家庭の洗濯機から吐き出された微小な合成繊維片(マイクロファイバー)が、海洋の至る所を汚染しています。
 世界は近年、使い捨てプラスチック製品の弊害に目覚め、結果として数十の国でその使用を制限・禁止する法律が制定され始めています。プラスチックごみは大量に海に流入し、ウミガメから海鳥のアジサシまでのさまざまな野生生物に絡み付いたり、死んだクラゲのように海中を浮遊したりします。
 だが、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの顕微鏡でしか見えないほどの微小片による海洋汚染については、その主な発生源がこれまであまり注目されてこなかったと専門家らは指摘しています。
 イギリスのプリマス大学の研究者、イモージェン・ナッパー氏は、大半の人は気付いていないが「大半の衣服はプラスチックでできている」と話し、「衣類は定期的に洗濯されるが、洗濯1回につき膨大な数の繊維片がはがれ落ちる。これが自然環境に流出するプラスチック汚染の主要な発生源の一つとなっていることが考えられる」と指摘しました。
 イギリスのエレン・マッカーサー財団の2015年の報告書によると、世界の繊維生産量は年間5300万トンに上り、毎年50万トンのマイクロファイバーが河川に流出していることが推定されるといいます。また、海洋保護活動組織のオーシャンワイズも、アメリカやカナダの平均的な家庭からは毎年、5億片以上のマイクロファイバーが自然環境に流出していると発表しています。
 海洋生物学者らは、プラスチック製のポリ袋がウミガメにとって有害なのと同様に、マイクロプラスチックが微小な海洋生物に害をおよぼしていることはほぼ確実だと指摘しています。
 天然か合成かにかかわらず、繊維の微小片の大部分は水処理課程で捕捉されるものの、それでも900トン近くが海洋に流出してしまいます。さらに、発展途上国では水処理で捕捉されない微小片がこれを大きく上回り、海洋に流入する大量のプラスチックをさらに増大させています。
 最近の研究では、単純に衣類を洗濯する頻度を減らすという明白な対策以外の、衣類を洗濯する際に流出する微小片を削減する方法に重点が置かれてきました。
 オランダのNGO「プラスチックスープ財団」の活動家、ローラ・ディアス・サンチェス氏は、「洗濯をする場合は、温度を下げることで影響を軽減できる。繊維は30度を超えるとより分解されやすくなる」と指摘しています。
 また、「研磨作用のある粉洗剤より、液体洗剤のほうがよい」としながら、乾燥機の使用も避けるべきとしました。
 購入する衣類をより少なくすることも同様に重要。初めて洗濯する衣類から大量のマイクロファイバーが放出されることは、これまでの研究で明らかになっています。
 結局のところ、魔法のような解決策は存在せず、「唯一の解決策は、何一つ衣類を身に着けないことだろう」と、サンチェス氏はいいます。
 イタリアの高分子・複合物・生体材料研究所の研究者、フランチェスカ・デ・ファルコ氏も、この問題に対処する最善のアプローチは、衣類製造、洗濯、水処理という、すべての段階に合わせて解決策を講じることだと主張しています。
 他方で、それぞれの合成繊維に見られる「織り方」の特性などが、影響をおよぼすことも考えられるといいます。
 状況改善のための取り組みの一環として、一部の服飾ブランドは科学者らと連携し、ダウンジャケットや伸縮性のあるTシャツなど、マイクロプラスチックを特に放出しやすい衣類を対象に対策を講じ始めています。
 専門家らは、天然繊維の採用が解決策となるほど問題は簡単ではないと指摘しています。例えば綿の場合だと、栽培するために膨大な量の水と農薬を必要するといった側面があります。
 イギリスのプリマス大のナッパー氏は、「我々は『ファストファッション』文化の中で暮らしている。実際にどのくらいの衣類が購入されているかを考えてみると恐ろしくなる」とコメントしています。

 2020年5月2日(土)

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