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■病気 甲状腺機能低下症 [病気(こ)]

[右斜め下]甲状腺ホルモンが足りない全身病
 甲状腺(こうじょうせん)機能低下症とは、のどの下にある甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの産生が不十分になる疾患。全身のエネルギー利用を促すホルモンである甲状腺ホルモンの不足によって、生命活動がゆっくりと低下します。
 先天性のものと後天性のものとがあり、前者の場合はクレチン症と呼ばれ、乳幼児期の知能が低下し、身体的発育も止まって低身長となります。
 後天性の場合は、一般的に高齢者、中でも女性に多くみられ、高齢女性の約10パーセントが発症しています。ただし、いずれの年代でも発症します。非常に重症の甲状腺機能低下症として、皮下や心臓に粘液状の物質が沈着する粘液水腫(すいしゅ)があります。
 甲状腺機能低下症には、いくつか原因があります。最も一般的なのが、慢性甲状腺炎(橋本病)が長く続くことです。甲状腺が徐々に破壊されるにつれて、甲状腺の機能低下が進行します。
 痛みを伴わない無痛性甲状腺炎(無痛性亜急性甲状腺炎)と痛みを伴う亜急性甲状腺炎は、ともに一過性の甲状腺機能低下症の原因になります。この甲状腺機能低下症は、甲状腺が破壊されていない一時的なものです。
 さらに、甲状腺機能亢進(こうしん)症や甲状腺がんの治療で使われる放射性ヨード治療、あるいは甲状腺の外科的除去のために、甲状腺ホルモンの産生がされなくなったり、減少された場合にも、甲状腺機能低下症は起こります。
 多くの開発途上国では、慢性的なヨード不足の食事が、甲状腺機能低下症の最も多い原因です。海藻類などに多く含まれているヨードは、甲状腺ホルモンを生成する材料であるからです。
 比較的まれな原因としては、遺伝性の病気があります。甲状腺細胞中の異常酵素が、甲状腺の十分な甲状腺ホルモンの産生と分泌を妨げるものです。
 その他のまれな原因としては、甲状腺を正常に刺激する甲状腺刺激ホルモンを、下垂体も視床下部も十分に分泌できない場合があります。汎(はん)下垂体機能低下症やシーハン症候群などが、その例です。
 甲状腺ホルモンが不足すると、身体機能が低下します。症状はとらえにくく、徐々に進行します。体重が増え、便秘性で、冷え性になります。無力感を持ったり、脈拍がゆっくりになり、発汗が減少し、肌が乾燥してガサガサになり、髪は抜けやすく、動きが鈍くなります。
 機能低下の程度が著しくなりますと、代謝が低下して皮下に粘液状の物質が沈着し、むくみます。このむくみを粘液水腫といい、普通のむくみと異なり、指で押してもへこんだままにならず、元に戻る特徴があります。
 顔のむくみがひどいと、まぶたがむくみ、唇が厚くなり、舌が大きくなるなど、人相が変わってしまうこともあります。話をする時に口がもつれ、ゆっくりした話し方になることもあります。皮膚ばかりでなく、粘膜にもむくみは起こります。喉頭(こうとう)にむくみがくると、声がしわがれて低音になります。心臓への粘液状物質の沈着も見られ、不整脈の原因となります。
 これらの症状は割とゆっくり出てくるので、他の病気と間違われます。例えば、脈がゆっくりなので循環器科、腫(は)れぼったいので腎臓科、肌がガサガサなので皮膚科、反応が鈍く精神活動も緩慢となるので、うつ状態や認知症(痴呆症)と間違えられて精神科に回されたりします。
 治療せずに放っておくと、甲状腺機能低下症は貧血、低体温、心不全を結果として引き起こします。この状態では、錯乱、物忘れ、意識喪失や粘液水腫昏睡(こんすい)を生じ、呼吸が遅くなり、発作や脳への血流が低下する致死的な合併症に進行することがあります。
[右斜め下]検査と診断と治療
 甲状腺機能低下症は、血液検査で血中の甲状腺ホルモンを測定することで診断されます。高齢者によく発症し、軽症ではこの年代が侵される他の病気との区別が難しいため、多くの専門医は55歳以上の人に対して、この血液検査を少なくとも1年おきに行うように勧めています。
 甲状腺機能低下症のまれなケースに、下垂体も視床下部も甲状腺刺激ホルモンを十分に分泌できないことに起因するものがあり、第2の検査として、蛋白(たんぱく)質に結合していない遊離甲状腺ホルモンT4値を測定する必要があります。このT4値が低ければ、甲状腺機能低下症の診断が確定されます。
 治療法としては、軽度であれば経過観察のみとすることもありますが、数種類の経口薬のうち1種類を用いて甲状腺ホルモンを補充する方法がとられます。ホルモン補充に望ましいのは、合成甲状腺ホルモンT4です。ほかに、動物の甲状腺を乾燥させた製剤があります。一般的に、乾燥甲状腺製剤は錠剤中の甲状腺ホルモンの含有量が変動するので、合成甲状腺ホルモンT4ほど十分な効果が得られません。粘液水腫昏睡のような緊急の場合には、合成甲状腺ホルモンT4か合成甲状腺ホルモンT3、ないしは両剤が静脈注射されます。 
 甲状腺ホルモン剤の投与は、少量から始められます。多くの量が必要な場合でも、1回分が多すぎると、重篤な副作用を引き起こすことがあるためです。高齢者では副作用のリスクが高いので、治療開始時の量と増量の割合は特に少なくされます。心臓の病気がある人や機能低下症の程度が著しい人に対しても、少量から開始し、血液中の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの濃度が正常値に戻るまで、慎重に増量します。場合によっては入院も必要です。
 妊娠中、授乳中の人に対しても用量を調整する必要がありますが、甲状腺ホルモン剤を飲み続けていても、胎盤を通過せず、母乳にも出ませんので、安心して使えます。
 甲状腺機能低下症の半数の人は、甲状腺ホルモン剤を一生飲まなければなりません。しかし、甲状腺ホルモン剤は決められた量を服用している場合、体に症状が出ることはなく、副作用もありません。

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■病気 甲状腺クリーゼ [病気(こ)]

[どんっ(衝撃)]甲状腺機能亢進症が重症化したもの
 甲状腺(こうじょうせん)クリーゼとは、甲状腺機能亢進(こうしん)症の経過中に、甲状腺ホルモンの血液中への過度の分泌によって急激に、極端な機能亢進が起こる状態。命にかかわる緊急事態で、全身の機能は危険なほど高まります。
 バセドウ病などを原因とする甲状腺機能亢進症を、治療しないで放置していたか、治療が不十分な場合に起こり、感染症、コントロール不良な糖尿病、別の病気での手術、外傷、妊娠や出産、甲状腺治療薬の中断、強いストレスなどがきっかけになります。小児ではまれです。
 心臓が過度に緊張すると、致死的で不規則な心拍である不整脈や、非常に速い頻脈、ショック症状を引き起こします。高熱、発汗、高血圧、脱力感、筋力低下、気分変動、意識障害、昏睡(こんすい)、興奮、悪心、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢、脱水、さらに軽度の黄疸(おうだん)を伴った肝臓肥大による皮膚や白目の黄変などの症状も起こします。
 甲状腺クリーゼによる興奮状態から、精神疾患と間違われ、救急隊員が搬送先の医療機関の選択に苦慮することがあります。また、乗用車などの運転中の事故の原因となることがあります。
 現在では、甲状腺機能亢進症の治療をちゃんと受けていれば、甲状腺クリーゼになることはないといわれています。感染症、糖尿病などからなる場合もありますが、バセドウ病を原因とする甲状腺機能亢進症を放置していたために、甲状腺クリーゼになる場合が多いので、バセドウ病の人は医師から処方された薬の量を自分の判断で増減したり、勝手にやめたりしないことが大切。
 医師による甲状腺クリーゼの治療では、通常の甲状腺機能亢進症の治療に加えて、集中治療室での強力な治療を要します。治療に際しては、ベータ遮断剤、抗甲状腺剤などが用いられます。

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■病気 甲状腺ホルモン不応症 [病気(こ)]

[バースデー]甲状腺ホルモン受容体の遺伝的な異常
 甲状腺(こうじょうせん)ホルモン不応症とは、体の新陳代謝を調節している甲状腺ホルモンが体の中にたくさんあるのに、ホルモンの働きが鈍くなる疾患。日本においても、世界的に見ても、まれな疾患で、その存在は近年になってはっきりしてきました。 
 特に男性に多く、女性に多いということはありません。先天性の疾患で、子供のころから異常を示すケースも、子供の時は正常で、大人になって初めて甲状腺機能異常の症状を示すケースもあります。異常の程度が強くて、小児期から重い甲状腺機能低下症状を来すような場合は、不可逆的な発育障害を起こしてしまうことがあります。
 甲状腺ホルモンが体の中で働くためには、細胞の中にある特別な甲状腺ホルモン受容体という蛋白(たんぱく)質に結合しなければなりません。甲状腺ホルモン不応症では、甲状腺ホルモン受容体に遺伝的な異常があり、生体の各臓器、組織、細胞への甲状腺ホルモンの結合や、作用の伝達が障害されると考えられています。甲状腺ホルモン受容体以外の異常でも、同じような症状が出る可能性はあるようですが、まだ確認できていません。 
 常染色体優性遺伝という形で、子孫に伝わることが多いようです。具体的には、両親のいずれかが甲状腺ホルモン不応症であると、約2分の1の確率で子供に遺伝します。しかし、両親のいずれにもこの疾患がない場合でも、突然変異によって子供に出ることがあります。
 甲状腺ホルモン受容体に異常があれば、甲状腺ホルモンの作用が弱まるはずですが、その分、頭の中にある脳下垂体が甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの濃度を普通よりも高く設定します。その結果、甲状腺ホルモン受容体に比較的軽い異常があっても、その働きの鈍さを甲状腺ホルモンの濃度が高いことが補って、全身の新陳代謝はほぼ正常人に近くなることが、多くのケースで認められています。
 ただ、どうしても甲状腺に負担がかかるため、正常の人に比べ甲状腺が大きくなる傾向があります。異常の程度が強くなると、甲状腺機能低下症の症状が見られたり、部分的に甲状腺機能亢進(こうしん)症に似た症状を来すこともあります。異常がとても強い場合には、難聴を来したり、注意力低下といった精神障害を伴うこともあります。
 ほとんどの発症者は、特に治療を受けなくても、甲状腺ホルモンがたくさんあることと、甲状腺ホルモン受容体の機能が低下していることがうまくバランスがとれて、普通の生活が送れます。
 むしろ問題は、甲状腺ホルモン不応症の存在がまだ、一般の医師の間でもあまり知られていないことにあります。大抵の発症者は首が腫(は)れているということで受診しますが、甲状腺が腫れていて血中の甲状腺ホルモン濃度も高いことにより、医師にバセドウ病と誤診され、誤った治療が行われてしまう可能性があります。
 欧米の統計によると、発症者の3分の1以上が初めはバセドウ病と間違えられ、不適切な治療を受けていました。その意味で、この病気は治療以上に正しく病気を認識することが大切です。 
 異常の程度が強くて、甲状腺機能低下症の症状が見られる場合は、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になります。どのように治療するかは個人差が大きいため、内分泌・代謝科のある医療機関で、この疾患に詳しい甲状腺の専門家に相談することが必要です。
 特に薬を使うことなく、正常の人と同じように暮らしている人では、数カ月から1年に1、2回、診察と検査を受けて、経過を見守ることになります。

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■病気 喉頭炎 [病気(こ)]

[映画]首の真ん中にある喉頭に炎症が起こる疾患
 喉頭(こうとう)炎とは、咽頭(いんとう)の奥にある喉頭に炎症が起こる疾患。鼻炎や咽頭炎などに引き続いて起こる場合と、単独に起こる場合とがあります。
 喉頭とは、空気の通り道である気道の一部で、首の真ん中にある器官。その一部が、のど仏として触れます。喉頭には、声帯を振動させて声を出す発声機能と、食べ物を飲み込む時にむせないようにする嚥下(えんげ)機能とが備わっています。
 喉頭炎は、急性喉頭炎と慢性喉頭炎とに分けられます。
急性喉頭炎
 急性喉頭炎とは、喉頭の粘膜に起こる急性の炎症です。風邪の部分症状として現れることもありますが、鼻炎、副鼻腔(ふくびくう)炎、扁桃(へんとう)炎、咽頭炎などを合併することもあります。
 パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどの感染や、A群溶血性連鎖球菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ球菌などの感染が多くみられます。感染以外の原因としては、のどの酷使、たばこの煙の吸入などがあります。
 声がれ、乾いたせき、のどの乾燥感、異物感などが急性喉頭炎の症状です。また、声が出しにくくなり、喉頭、特に声帯が赤くはれます。鼻炎、副鼻腔炎を合併した場合は、鼻汁や頭痛などの症状を伴います。扁桃炎や咽頭炎を合併した場合は、のどの痛みや発熱などの症状を伴います。逆に、これらの症状に続いて、急性喉頭炎の症状が出てくることもあります。
慢性喉頭炎
 慢性喉頭炎とは、喉頭粘膜の軽い炎症が長期間持続している状態です。急性喉頭炎の反復、あるいは上気道や下気道からの炎症の波及、蓄膿(ちくのう)症のうみが鼻からのどに垂れてくることが、原因になります。
 のどを酷使する政治家、教師、声楽家、バスガイドなどの職業や、ほこりや刺激ガスに慢性的にさらされる職業も原因になります。また、喫煙習慣による慢性喉頭炎も多くみられます。
 声帯の粘膜が肥厚し、振動しにくくなり、声帯の合わさり具合が悪くなるため、声がかれ、声が出しにくくなります。のどの異物感、せきなどの症状も現れます。
 また、声帯筋まひ(内筋まひ)といって、声帯の筋肉の委縮、疲労により、声が出しにくく、声が割れたり、かれることがあります。これは中年の女性や老人に多く、朝は異常がないのに夕方になると声が出なくなったりします。声帯を見ると、ふちが薄く、発声時の合わさりが悪いのがわかります。
[映画]喉頭炎の検査と診断と治療
急性喉頭炎
 急性喉頭炎の症状が現れたら、安静にして声をなるべく出さないようにします。たばこや酒も、慎みます。軽いものであれば、風邪が治るように自然に治りますが、症状が重い時や、2週間以上の長期に渡るようであれば、耳鼻咽喉科を受診します。
 医師による診断では、間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で喉頭を観察します。急性喉頭炎であれば、喉頭の粘膜と声帯が赤くはれている像がみられます。
 治療では、消炎薬や鎮咳(ちんがい)薬が投与されますが、細菌感染が疑われる場合は抗生剤の投与が有効です。多くの場合、数日から数週間で治ります。抗生剤やステロイドホルモンなどをネブライザー吸入する治療も行われます。声がれを伴う場合は、発声を制限すると声の改善に有効です。
慢性喉頭炎
 慢性の刺激が原因になっているので、治るまでに時間を要することが多いのが現状です。また、似た症状を示す喉頭がんや声帯ポリープなどの他の疾患との区別も重要です。特に2週間以上声がれなどの症状が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診します。
 医師による診断では、急性喉頭炎と同様に、間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で喉頭を観察します。慢性喉頭炎であれば、喉頭粘膜の発赤、むくみなどが確認されます。しかし、慢性喉頭炎と似た症状を示すものに喉頭がん、喉頭結核、声帯ポリープなどがあり、これらの疾患と区別することも重要です。とりわけ、ヘビースモーカーの人は喉頭がんとの区別が必要です。
 治療ではまず、原因の除去が大切です。上気道炎や下気道炎が原因であればその治療、喫煙が原因であれば禁煙、のどの酷使やほこりにさらされるなどが原因であればそれらへの対策や生活環境の改善が必要です。薬物治療は、症状が強い場合や急性の増悪が認められた時に行われます。消炎薬、鎮咳薬、抗生剤の経口投与や、抗生剤、ステロイドホルモンなどのネブライザー吸入が行われます。声帯筋まひの治療では、発声を制限し、ビタミンB剤や女性ホルモン薬が使われます。

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