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■水銀の規制「水俣条約」と命名し合意 国連の政府間交渉 [健康ダイジェスト]

 スイスで開かれた水銀規制条約制定の政府間交渉委員会は19日、新たな条約の制定に向けた内容で合意し、閉会しました。名称も「水銀に関する水俣条約」と決めました。
 水俣病の原因物質で、今も世界各地で健康被害や環境汚染が指摘されている水銀の使用や貿易、排出を国際的に規制する仕組みができます。
 条約は10月9~11日に、熊本市と水俣市で開かれる会議で採択される予定。発効には50カ国の批准が必要で、国連環境計画は2016年の発効を目指しています。
 合意された内容には、最終処分する目的など一部を除いて水銀の輸出入を禁止することや、水銀が使用されている一部の電池や蛍光灯、血圧計、体温計、スイッチ、農薬など16品目の製造や輸出入を2020年までに禁止すること、それに新規の鉱山からの水銀の産出を禁止し、既存の鉱山についても条約の発効から15年後までに禁止すること、大気への排出削減のために新設の石炭火力発電所などに最良の設備を義務付け、水銀を含む廃棄物を適切に管理・処分することなどが盛り込まれました。
 理念をうたう前文には、日本の提案に沿って「水俣病を教訓にして水銀を適正に管理し、将来にわたって二度と同じ問題を引き起こさない」という文言が盛り込まれました。一方、日本が前文に記載するよう求めていた、被害補償や環境回復を汚染者が担う「汚染者負担の原則」は明記されませんでした。
 今回、世界的に条約の制定に動き出した背景には、各地で広がる水銀による健康被害や環境汚染があります。
 国連環境計画によりますと、2010年の水銀の大気中への排出量は推計で1960トンに上り、小規模な金の採掘現場からが37パーセントと最も多く、次いで、発電などで使う石炭の燃焼からが24パーセントなどとなっています。
 途上国の金の採掘現場では、砂金と水銀を混ぜて火であぶり、水銀を蒸発させて金を抽出する作業が行われていて、作業員が水銀を含んだ蒸気を吸い込んだり、水銀が周辺に排出されたりしていて、健康被害や環境汚染が懸念されています。
 水俣病を経験した日本は、国内での水銀の使用は大幅に減らしましたが、使用済みの蛍光灯などに含まれる水銀をリサイクルして、現在も年間100トン前後、アジアやヨーロッパなどに輸出しています。このため、今後、条約の発効によって水銀の輸出が規制されれば、国内で余る水銀をどのように長期間保管したり処分をしたりしていくのか課題となっています。
 アメリカでは、水銀を液体の状態で屋内の施設で保管していますが、専門家は地震など自然災害の多い日本では安全管理上、適切ではないと指摘しています。現在は、水銀を固形化する技術の開発も進められていますが、実用化には時間がかかる見通しで、保管や処分にかかる費用を誰が負担するかも課題となります。
 熊本学園大学の中地重晴教授は、「日本は水銀をリサイクルする仕組みができているが、輸出する先がないのであれば日本の中で保管をしなければならない。地震国であり、なかなか適地がないかもしれないが、何らかの形で長期保管するような方法を検討して、システムとして作ることが必要だ」と話しています。

 2013年1月20日(日)




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