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■遺伝性卵巣がんの初の治療薬、来年にも承認へ アストラゼネカ社が開発 [健康ダイジェスト]

 イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」の日本法人(大阪市北区)は8日、開発を進めている遺伝性卵巣がんの治療薬について、医薬品を承認審査する独立行政法人、医薬品医療機器総合機構に承認申請したことを明らかにしました。早ければ来年前半にも承認を得て、治療薬の販売を開始することを見込んでいます。
 親から受け継いだ遺伝子が原因で発症する「遺伝性がん」の治療薬の申請は国内では初めて。患者にとって治療の選択肢が広がる一方、家族の発症リスクもわかる可能性があるため、関係学会は家族のケアを含めた適切な診療体制の検討を始めました。
 遺伝性卵巣がんは、生まれ付き「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子に変異がある人が発症する卵巣がんで、年に約1万人が新たに患う卵巣がん全体の約10%を占め、悪性度が高く進行も速いのが特徴。遺伝子に変異がある人の発症リスクは、変異がない人に比べて最大で40倍高いとされます。遺伝性がん(腫瘍)にはほかに、大腸や子宮などさまざまな臓器にがんが出る「リンチ症候群」、乳がん、白血病などを発症する「リ・フラウメニ症候群」などがあります。
 遺伝性卵巣がんの治療薬は、「オラパリブ」(製品名:リンパルザ)。遺伝性卵巣がんの再発患者が対象の飲み薬で、欧米では2014年末に承認されました。アストラゼネカの日本法人によると、日本国内の承認申請は7月末までに出されました。
 オラパリブは、がん細胞のみを標的にするため、従来の抗がん剤より副作用が少ないとされます。日本の患者も参加して2013年から同社が行った国際共同臨床試験(治験)では、再発患者のうちオラパリブを服用したグループの196人は、がんが大きくならなかった期間が平均19・1カ月。服用しなかったグループの99人より4倍近く長く、目立った副作用も確認されませんでした。
 患者は薬の使用前に、投薬対象となるか判定するための遺伝子検査を受けます。結果が陽性なら、患者だけでなく家族も同じ遺伝子変異を持つ可能性が生じます。
 日本婦人科腫瘍学会の青木大輔・副理事長は、「婦人科腫瘍専門医への研修を通じ、遺伝を考慮した適切な説明方法を周知し、遺伝カウンセリングの体制の充実を呼び掛けていきたい」としています。
 オラパリブが国内で使えるようになれば、患者にとっては朗報である一方、薬の効き目を調べる遺伝子検査の結果次第では、家族もがん発症の恐れに直面することになり、画期的な薬の登場が新たな課題を突き付けることになります。
 がんになるリスクが事前にわかれば、早めの対策につなげられます。アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんは、母を卵巣がん、叔母を乳がんで亡くし、自ら遺伝子検査を受けBRCA1の変異が見付かりました。この変異は卵巣がんのほか乳がんの原因にもなるため、乳房と卵巣を予防的に手術で切除し、世界で話題を呼びました。
 しかし、がんの発症確率が高いと知ることのダメージは大きく、手術には重い決断も迫られます。日本医学会は指針で、未発症の家族に、丁寧な「遺伝カウンセリング」を行うことなどを医療現場に求めています。
 そのためには患者を支える「認定遺伝カウンセラー」の役割が重要ながら、国内には200人ほどで、3分の1が首都圏に集中。患者と家族が適切なフォローを受けられる診療体制の整備を急ぐ必要があります。
 オラパリブは、遺伝性の乳がんや前立腺がんにも有効な可能性があり、海外では遺伝性がんに効く別の薬も出ています。

 2017年8月9日(水)

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