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■胎児期にダウン症改善、化合物「アルジャーノン」発見 マウス実験で学習能力向上、京大 [健康ダイジェスト]

 ダウン症の胎児を妊娠したマウスに投与すると、生まれた子の脳の構造が変化して学習能力が向上する化合物を発見したと、京都大学の萩原正敏教授(化学生物学)らの研究チームが、5日付のアメリカの「科学アカデミー紀要」(電子版)に発表しました。化合物の作用で神経細胞の増殖が促され、ダウン症の症状が改善されるといいます。
 将来、出生前診断をした人の胎児を対象とした薬剤の開発につながる可能性があります。ただ、人の胎児で臨床研究を行うことの是非など、早期の実現には倫理面で課題があります。
 ダウン症は、人間だと23対ある染色体のうち21番目の染色体が1本多い3本になることで起き、知的な発達の遅れや、心臓疾患などの合併症を伴うこともあります。日本では現在、出生約1000人に1人の確率で発生するとされ、母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、ダウン症の新生児を産む確率が高くなります。妊娠中、胎児がダウン症かどうかは調べられるものの、現状では根本的な改善方法はありません。
 研究チームは、神経の元になる細胞(神経前駆細胞)が増えないことがダウン症の原因の一つと考え、717種類の化合物をふるい分けし、神経幹細胞が前駆細胞を増殖するのを促進する化合物を発見。「アルジャーノン」と名付けました。
 ダウン症の胎児を妊娠したマウスに1日1回、アルジャーノンを経口投与すると、胎児の前駆細胞が増えるなど、投与しなかったダウン症の胎児とは脳の構造が異なりました。迷路を使った実験で学習能力を比較した結果、アルジャーノンを経口投与して生まれたマウスのほうが好成績で、正常なマウスとも変わりませんでした。
 研究チームは、ダウン症患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)にアルジャーノンを加える実験でも、神経細胞が増えることを確認。
 このアルジャーノンを投与しても染色体の異常自体は変化しませんが、ダウン症の出生前治療につながる可能性があります。萩原教授はそれを期待しつつ、「臨床で妊婦に使うには安全性や、社会的な合意を得る上でハードルが高い。まずは脳梗塞(こうそく)などの治療薬として開発を目指したい」と話し、脳神経が関係するアルツハイマー病や鬱(うつ)病、パーキンソン病などにも役立てたいとしています。
 妊婦の血液でダウン症など胎児の染色体異常を調べる新型の出生前診断では、染色体異常が確定した人の9割以上が人工妊娠中絶しています。一方、知的な発達の遅れが出る可能性があっても出産を望む人もいます。
 胎児の出生前治療が可能になれば、妊娠の継続、人工妊娠中絶のほかに選択肢が増えることになりますが、国立成育医療研究センター遺伝診療科の小崎里華医長は「マウスや細胞での研究段階で、母体への影響や薬の投与の量、時期、長期的な効果など課題は多い」と話しています。

 2017年9月5日(火)

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■石綿被害広がり、中皮腫死者が世界で年3万8400人 産業医大など国際チームが推計 [健康ダイジェスト]

 かつて建築資材などに用いた石綿(アスベスト)が主な原因となるがん「中皮腫」で死亡する人は世界で年約3万8400人に上るとの新たな推計を、産業医科大学(福岡県北九州市)などの国際研究チームが4日、シンガポールで開催中の世界労働安全衛生会議で発表しました。
 日本では、2012~2014年の平均で年1357人が死亡。中国などデータが乏しい国や地域もあるため、現状では世界の死者数は明確になっていません。今回はデータ不足の国や地域の実態も加えており、中皮腫の主な原因である石綿被害の広がりを改めて印象付ける形となりました。
 国際研究チーム代表でオーストラリアのシドニー大学石綿疾患研究所の高橋謙所長(環境疫学)は、「最新のデータを使って精度の高い推計ができた。これほど多くの被害をもたらす石綿は、世界中のどこでも使用を禁止すべきだ」と訴えています。
 今回は、信頼できるデータのある日本など59カ国での中皮腫死者の性別や年齢を基に、データの乏しい国や地域の石綿の使用状況も踏まえて、2012~2014年における世界の年平均死者数を推計しました。
 中皮腫は、石綿を吸い込んでから数十年を経て発症します。日本では1970年代から1990年代にかけて年間30万トン前後の石綿が輸入され、建築資材、電気製品、自動車、船舶、家庭用品などで3000とも5000を超えるともされる種類の製品に、石綿が使用されていました。2012年に石綿の製造販売が禁止されましたが、死者数は増加傾向にあります。
 石綿の製造加工に従事した労働者が吸引する労災被害のほか、阪神淡路大震災や東日本大震災などで、石綿含有の建材で建てられた住居などが崩壊し、大気中に飛散した石綿粉塵(ふんじん)を一般の人が吸い込んで発症するケースもあります。吸い込んだ時期と、中皮腫の発症時期が大きくずれるケースが多いことから、被害の把握は遅れます。
 世界保健機関(WHO)は、世界中で1億2500万人が職場で石綿にさらされており、中皮腫を始めとして肺がん、喉頭がん、卵巣がん、塵肺の一種「石綿肺」など関連疾患のため、年間約20万人が亡くなっているという大まかな見積もりを公表しています。

 2017年9月5日(火)

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■RSウイルス感染症、異例の流行続く 最新の1週間の新規患者が6601人に [健康ダイジェスト]

 乳幼児に重い肺炎などを引き起こす一因になるRSウイルス感染症の患者の報告数が最新の1週間で6601人と、この時期としては異例の流行が続いており、専門家は対策の徹底を呼び掛けています。
 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど風邪に似た呼吸器症状を起こす病気で、通常は秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、初めての感染では肺炎や気管支炎を引き起こし重症化することがあります。
 国立感染症研究所によりますと、全国約3000の小児科定点医療機関で8月21日から27日までの1週間に新たにRSウイルス感染症と診断された患者は6601人と、例年ピークを迎える冬の時期とすでに同じ水準に達するなど、異例の流行が続いています。
 都道府県別では、最も多いのが東京都で597人、次いで大阪府で534人、神奈川県で425人などとなっています。また、例年であれば秋に九州地方から本州に北上するように広がりますが、今年はすでに新潟県で242人、宮城県で175人、福島県で153人などと東日本でも感染が広がっています。
 RSウイルスに感染する患者数は、例年11月から12月にピークになり、5月前後に最も少なくなる変動を毎年繰り返しています。今年も冬の流行が収まっていく3月から4月にかけては、例年と同じように患者数は1000人を下回る水準となりました。
 しかし、4月中旬ころから患者数は増加に転じ、例年であれば最も患者数が少なくなる5月から6月にかけて、多い週では800人の患者が報告されるなど、この時期としては異例の流行となりました。さらに、7月に入って患者数が1000人を上回るとさらに急激に増加し、8月上旬の1週間はおよそ5000人の患者が報告され、8月27日までの1週間の最新の数字では患者数が6601人に達しました。
 このため、今年の患者の累計はすでに約5万2000人に達しており、この時期としてはこの10年間で最も多くなっています。   
 RSウイルスの付いた物を触ったり、せき、くしゃみなどの飛まつを吸い込んだりして移ります。RSウイルス感染症は治療薬などがなく、予防が中心。
 RSウイルス感染症に詳しい群馬パース大学の木村博一教授は、「今年は例年よりも2カ月程度早く流行しているが、その理由はよくわかっていない。今後、さらに冬に向けて感染が拡大するのか、それとも例年よりも早く終息に向かうのかは予想ができないが、乳幼児はもちろん、高齢者もマスクの着用や手洗いなどの対策を徹底してほしい」と話しています。

 2017年9月5日(火)

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■用語 洞不全症候群 [用語(た行)]

[喫茶店]主に洞結節の働きの低下により脈が遅くなり、主要臓器の循環障害が起こる疾患
 洞不全(どうふぜん)症候群とは、血管系統の中心器官である心臓が鼓動するリズムを作っている洞結節やその周辺の異常により、脈がゆっくりになる徐脈を起こし、脳、心臓、腎(じん)臓などの臓器の機能不全が現れる疾患。
 洞機能不全症候群、SSS(Sick Sinus Syndrome)とも呼ばれます。
 心臓の右心房の上部にある洞結節の細胞自体やその周辺に存在する心房筋の障害によって、心拍数が減少して脈がゆっくりになる徐脈のほか、心停止を起こす場合があり、その結果として脳への血流が途絶えることで意識障害や失神などの症状が出ることもあります。心臓から送り出される血液量の低下によって、心臓、腎臓などの主要臓器の循環障害が起こることもあります。
 心臓が鼓動するリズムは、心臓の動きを伝導する電気信号によって決まります。このような電気信号の始まりである洞結節は、交感神経や副交感神経などの自律神経作用の影響を受け、心拍数を調節する重要な場所です。
 心臓の電気的な活動の様子をグラフの形に記録する心電図的には、持続性の洞徐脈、洞停止または洞房ブロック、徐脈頻脈症候群の3つのタイプに分類されます。
 持続性の洞徐脈の場合、常に脈拍数が1分間に40~50回以下に減少し、心房の興奮を反映するP波という小さな波の規則正しい間隔で現れる数が少なくなります。
 洞停止または洞房ブロックの場合、洞結節からの電気信号が一過性に停止または心房に伝わらないことによって起こります。P波に続くP波よりも尖(とが)って大きな波のQRS波、そしてなだらかな波のT波へと続く関係は正常ですが、先行するP波が突然現れなくなります。
 徐脈頻脈症候群の場合、心房細動や心房粗動、発作性上室性頻拍などの頻脈性不整脈が出現し、心房が速く興奮して、その刺激が洞結節に進入することで、洞結節の自発的興奮を一時的に強く抑えてしまうため、頻脈が自然停止した直後に高度の洞停止が生じます。
 洞不全症候群の原因ははっきりしないことが多いのですが、特定できる原因として最も多いのは、加齢による洞結節または周辺の心房筋の線維化による伝導障害です。そのほかに、心筋梗塞(こうそく)や冠状動脈硬化などの虚血性心疾患、高血圧症、先天性心疾患、心筋症、心筋炎などが原因になりますが、慢性腎機能障害による電解質異常や甲状腺(こうじょうせん)疾患によって起こることもあります。
 また、洞結節の刺激の発生数を低下させる迷走神経の緊張高進、高カリウム血症のほか、高血圧治療薬や虚血性心疾患治療薬、抗不整脈薬、精神疾患治療薬などの薬剤投与によって引き起こされる場合もあります。
 洞不全症候群の症状は、心停止または徐脈に伴う脳虚血症状として現れ、意識障害、眼前暗黒感、めまい、失神、顔面蒼白(そうはく)、けいれん、呼吸停止などが起こります。夜間睡眠中に脳虚血症状が現れる場合は無症状で経過することもありますが、日中に現れる脳虚血症状により転倒した場合には時に、重大な頭部外傷をもたらす危険もあり、心停止から拍動が回復しない場合は突然死することもあります。
 運動時の息切れや疲労感、心不全の悪化による呼吸困難、乏尿として現れる場合もあります。
 徐脈頻脈症候群では、頻脈の時に動悸(どうき)を感じることがあります。また、不整脈のため血栓が脳に流れ脳卒中を起こすこともあります
 脳虚血症状などが長引く場合、繰り返すような場合には、循環器専門医の診察を受けてください。
[喫茶店]洞不全症候群の検査と診断と治療
 循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状を起こした時の心電図を記録し、確認することで洞不全症候群と確定します。
 体表面の異なる12方向から記録する12誘導心電図、24時間ホルター心電図、携帯型簡易心電計などによる検査でわからない場合は、心臓電気生理学的検査(EPS)と呼ばれるカテーテル検査を行うこともあります。
 循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、症状が軽い場合は、洞結節の自発的興奮の回数を増やす薬剤を使用します。抗コリン薬(硫酸アトロピン)、β(ベータ)刺激薬(イソプロテレノール)などの経口薬や静注薬です。
 徐脈が薬にあまり反応しなかったり、薬を中断すると症状が悪化するような場合や、薬剤による治療がうまくいかないことが多い徐脈頻脈症候群と診断した場合は、恒久型ペースメーカーを植え込みます。
 恒久型ペースメーカーは、徐脈が現れた時のみ電気刺激を出して心臓を刺激することにより心拍数を正常にし、高度な徐脈、心停止による失神などを予防します。手術で、ライターほどの大きさの恒久型ペースメーカーを鎖骨の下に植え込み、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。
 一方、長年の肉体労働や長距離走などのトレーニングにより生理的に洞結節の機能が抑制されて、脈が遅くなっているような人には、ペースメーカー治療の必要はありません。また、薬剤の投与によって一時的に洞不全が生じた人で、薬剤の中止によってその機能が回復し得る人も、ペースメーカーの植え込みは不要です。

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