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■用語 乾酪性副鼻腔炎 [用語(か)]

[iモード]副鼻腔に真菌が入り込んで、チーズのような形状をした膿がたまる疾患
 乾酪性副鼻腔炎 (かんらくせいふくびくうえん)とは、カビの仲間である真菌が副鼻腔(ふくびくう)に入り込むことが原因で、乾酪、すなわちチーズのような形状をした膿(うみ)がたまる疾患。真菌性副鼻腔炎の一種です。
 鼻の穴である鼻腔の周囲には、骨で囲まれた空洞部分である副鼻腔が左右それぞれ4つずつ、合計8つあり、自然孔という小さな穴で鼻腔とつながっています。4つの副鼻腔は、鼻の両横に位置する上顎(じょうがく)洞のほか、鼻の上の額にある前頭(ぜんとう)洞、目と目の間にある篩骨(しこつ)洞、その奥にある蝶形骨(ちょうけいこつ)洞です。
 4つの副鼻腔は、強い力が顔面にかかった時に衝撃を和らげたり、声をきれいに響かせたりする働きがあるとされますが、その役割ははっきりとはわかっていません。鼻腔や副鼻腔の中は、粘膜で覆われており、粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が生えています。線毛は、外から入ってきたホコリや細菌、ウイルスなどの異物を粘液と一緒に副鼻腔の外へ送り出す働きを持っています。
 真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称で、菌類に含まれており、健康な人の体内に常にいるものや、空気中のあらゆる所に浮いている胞子が体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。
 健康である限り真菌に感染することはありませんが、体の抵抗力が落ちている人や高齢者、抗生物質を飲んでいる人、あるいは免疫の疾患などで副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を飲んでいる人、免疫抑制剤を飲んでいる人など、免疫力が低下している人、糖尿病や悪性腫瘍(しゅよう)などの基礎疾患がある人が、真菌の胞子に接触すると日和見感染し、真菌性副鼻腔炎や、その一つである乾酪性副鼻腔炎を起こすことがあります。
 副鼻腔に入り込んだ真菌が増殖し、多くの場合は塊を形成するので、強い炎症が起こります。真菌の中でも、呼吸器を侵すアスペルギルスが最も多い原因となっています。それ以外には、肺や鼻や脳を侵すムコール、口や肺などを侵すカンジダ、口や扁桃腺(へんとうせん)などを侵すアクチノミセスなどが原因になっています。
 真菌が入り込む副鼻腔は、上顎洞80パーセント、篩骨洞30パーセント、前頭洞5パーセント、蝶形骨洞数パーセント、それに鼻腔10パーセントの分布率です。大多数は上顎洞であり、それに篩骨洞と鼻腔とに合併して入り込む形式をとります。
 好発年齢は40~50歳、男女比は1対1・5見当と見なされます。
 症状としては、左右どちらか片側の鼻腔から、非常に粘り気が強くて黄色く、悪臭が漂うチーズ様の鼻水が出るようになります。粘り気が強いため、鼻をかんでもなかなか取り去ることができず、鼻詰まりの原因にもなり、鼻からの呼吸がしにくくなることもあります。
 これらの症状のほかにも、鼻血が出たり、頬(ほお)が重たく感じたり、頬の部分に熱感を感じるようになったり、押さえると痛みを感じるようにもなったりします。
 また、片頭痛がする、いつも何となく頭が重たく感じる、目の痛みが生じるといったこともあります。時には、炎症を起こしているほうの歯で物をかむと、痛みを感じることもあります。
 大半は上顎洞に限られた炎症にとどまることが多いものの、糖尿病が非常に悪化したり、免疫機能が低下したりして全身状態が悪くなると、目や脳の中に炎症が進み、上顎洞の骨を破壊して周囲に広がることがあります。この場合には、高熱、激しい頭痛、頬部腫脹(きょうぶしゅちょう)、眼筋まひ、眼球突出、視力障害などを起こします。
 糖尿病や悪性腫瘍などの基礎疾患があり、虫歯がないのに左右どちらかの鼻腔から悪臭を伴ったチーズ様の鼻水が出てきて、反対側は全く症状がない場合は、要注意です。早めに耳鼻咽喉(いんこう)科、耳鼻科を受診することが勧められます。
[iモード]乾酪性副鼻腔炎の検査と診断と治療
 耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による診断では、真菌性副鼻腔炎の場合と同様に、X線(レントゲン)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。
 X線(レントゲン)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞を主にして、びまん性陰影が認められます。CT(コンピュータ断層撮影)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞に骨壁の肥厚、石灰化陰影、内側壁の破壊などが認められることもあります。
 鑑別を必要とする疾患には、悪性腫瘍、急性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎があります。
 耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による治療では、上顎洞内を主にして複数回洗浄します。洗浄のために上顎洞内に針を刺したり、細い管を挿入するので、痛みを伴います。真菌に対する抗真菌剤の投与は、一般に行われません。
 洗浄で改善しなければ、手術を行います。内視鏡下に行う鼻内副鼻腔手術で、上顎洞と鼻をつなぐ自然孔を広げた上で、上顎洞の真菌の塊を完全に摘出し、粘膜を洗浄します。手術後は、広げた自然孔から上顎洞洗浄を定期的に行います。ほとんどの場合は、手術後2~3カ月で上顎洞の粘膜は正常になります。
 まれに悪化し、上顎洞の骨が破壊された場合は、真菌に対する抗真菌剤を全身投与し、鼻の外側から切開して感染した病変を完全に取り除く必要が生じます。目や脳の中に炎症が進んだ場合は、病変を完全に取り除くことが困難であることが多く、手術は不可能となります。

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■用語 乾酪性上顎洞炎 [用語(か)]

[iモード]副鼻腔の一つである上顎洞に真菌が入り込んで、チーズのような形状をした膿がたまる疾患
 乾酪性上顎洞炎(かんらくせいじょうがくどうえん)とは、カビの仲間である真菌が副鼻腔(ふくびくう)の一つである上顎洞に入り込むことが原因で、乾酪、すなわちチーズのような形状をした膿(うみ)がたまる疾患。真菌性副鼻腔炎の一種で、真菌性上顎洞炎と重複する部分が多い疾患です。
 鼻の穴である鼻腔の周囲には、骨で囲まれた空洞部分である副鼻腔が左右それぞれ4つずつ、合計8つあり、自然孔という小さな穴で鼻腔とつながっています。4つの副鼻腔は、鼻の両横に位置する上顎洞のほか、鼻の上の額にある前頭(ぜんとう)洞、目と目の間にある篩骨(しこつ)洞、その奥にある蝶形骨(ちょうけいこつ)洞です。
 4つの副鼻腔は、強い力が顔面にかかった時に衝撃を和らげたり、声をきれいに響かせたりする働きがあるとされますが、その役割ははっきりとはわかっていません。鼻腔や副鼻腔の中は、粘膜で覆われており、粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が生えています。線毛は、外から入ってきたホコリや細菌、ウイルスなどの異物を粘液と一緒に副鼻腔の外へ送り出す働きを持っています。
 真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称で、菌類に含まれており、健康な人の体内に常にいるものや、空気中のあらゆる所に浮いている胞子が体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。
 健康である限り真菌に感染することはありませんが、体の抵抗力が落ちている人や高齢者、抗生物質を飲んでいる人、あるいは免疫の疾患などで副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を飲んでいる人、免疫抑制剤を飲んでいる人など、免疫力が低下している人、糖尿病や悪性腫瘍(しゅよう)などの基礎疾患がある人が、真菌の胞子に接触すると日和見感染し、真菌性副鼻腔炎や、その一つである乾酪性上顎洞炎を起こすことがあります。
 上顎洞に入り込んだ真菌が増殖し、多くの場合は塊を形成するので、強い炎症が起こります。真菌の中でも、呼吸器を侵すアスペルギルスが最も多い原因となっています。それ以外には、肺や鼻や脳を侵すムコール、口や肺などを侵すカンジダなどが原因になっています。
 症状としては、左右どちらか片側の鼻腔から、非常に粘り気が強くて黄色く、悪臭が漂うチーズ様の鼻水が出るようになります。粘り気が強いため、鼻をかんでもなかなか取り去ることができず、鼻詰まりの原因にもなり、鼻からの呼吸がしにくくなることもあります。
 これらの症状のほかにも、頬(ほお)が重たく感じたり、頬の部分に熱感を感じるようになったり、押さえると痛みを感じるようにもなったりします。
 また、片頭痛がする、いつも何となく頭が重たく感じる、目の痛みが生じるといったこともあります。時には、炎症を起こしているほうの歯で物をかむと、痛みを感じることもあります。
 大半は上顎洞に限られた炎症にとどまることが多いものの、糖尿病が非常に悪化したり、免疫機能が低下したりして全身状態が悪くなると、目や脳の中に炎症が進み、上顎洞の骨を破壊して周囲に広がることがあります。この場合には、高熱、激しい頭痛、頬部腫脹、眼球突出、視力障害などを起こします。
 糖尿病や悪性腫瘍などの基礎疾患があり、虫歯がないのに左右どちらかの鼻腔から悪臭を伴ったチーズ様の鼻水が出てきて、反対側は全く症状がない場合は、要注意です。早めに耳鼻咽喉(いんこう)科、耳鼻科を受診することが勧められます。
[iモード]乾酪性上顎洞炎の検査と診断と治療
 耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による診断では、真菌性副鼻腔炎の場合と同様に、X線(レントゲン)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。
  X線(レントゲン)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞にびまん性陰影が認められます。CT(コンピュータ断層撮影)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞に骨壁の肥厚、石灰化陰影、内側壁の破壊などが認められることもあります。
 鑑別を必要とする疾患には、悪性腫瘍、急性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎があります。
 耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による治療では、上顎洞内を複数回洗浄します。洗浄のために上顎洞内に針を刺したり、細い管を挿入するので、痛みを伴います。真菌に対する抗真菌剤の投与は、一般に行われません。
 洗浄で改善しなければ、手術を行います。内視鏡下に行う鼻内副鼻腔手術で、上顎洞と鼻をつなぐ自然孔を広げた上で、上顎洞の真菌の塊を完全に摘出し、粘膜を洗浄します。手術後は、広げた自然孔から上顎洞洗浄を定期的に行います。ほとんどの場合は、手術後2~3カ月で上顎洞の粘膜は正常になります。
 まれに悪化し、上顎洞の骨が破壊された場合は、真菌に対する抗真菌剤を全身投与し、鼻の外側から切開して感染した病変を完全に取り除く必要が生じます。目や脳の中に炎症が進んだ場合は、病変を完全に取り除くことが困難であることが多く、手術は不可能となります。

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■用語 開放性二分頭蓋 [用語(か)]

[喫茶店]胎児の頭蓋骨半球、大脳半球が正常に発達しない奇形症
 開放性二分頭蓋(にぶんとうがい)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨半球、大脳半球、小脳の欠如を伴う奇形症。無脳症、無頭蓋症、外脳症とも呼ばれます。
 人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。
 脊髄や脳は、胎児の神経管から形成されます。開放性二分頭蓋の症状が現れた胎児は、妊娠4週間程度までの超初期の段階で、神経管前部の閉鎖不全などが起こって神経管の発達が阻害されることで、後々の脊髄や脳の成長が妨げられます。妊娠4カ月ころまでは脳のある程度の発育がみられるものの、妊娠5カ月ころから一度は形成されたはずの大脳、小脳のほか、生命の維持に重要な役割を果たす延髄などの脳幹が突然退化したり、発育が止まったります。
 原因については、詳しく解明されていません。人種によって発現の頻度に差があるため遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。
 発現の頻度は、国によって異なり、アメリカでは出産1000人当たり1人程度。日本では1970年代から1980年代前半には出産10000人当たり10人程度であったものが、近年は出産10000人当たり1人程度に減少傾向を示しています。その理由として、胎児の超音波検査などの進歩に伴って出生前に診断される機会が増え、出産に至らないケースが増えてきている可能性が指摘されています。
 人工的に出産を誘発する措置が行われない場合、開放性二分頭蓋の症状が現れた胎児が母胎内で死亡して流産となるケースは少なく、出産の時までは生命を維持します。しかし、脳幹も欠損して死産となる確率が約75パーセントで、残る新生児も出生直後に死亡し、ある程度脳が残存している場合は生後数日間生存します。
 部分的に大脳皮質が形成されて機能し脳波が測定される場合は、生後1週間~2週間程度生存するものの、まれです。海外では、奇跡的に1年以上生存しているケースもありますが、日本では、そのようなケースはありません。
 開放性二分頭蓋の新生児では、頭で帽子をかぶる部分に相当する頭蓋骨や頭頂部が大きく欠如し、大脳半球は通常欠如して全くないか、小さな塊に縮小しているため、頭蓋の基底面が露出するとともに、基底面に付着するように変性し、表面が薄い皮膜で覆われた脳の一部が露出しています。
 顔貌(がんぼう)は特徴的で、前から見ると蛙(かえる)状です。そのほか、眼球の突出や欠如、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)を合併していることもあります。
 延髄の下半分が存在していれば、嚥下(えんげ)や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。正常な幼児が特有の刺激に応えて示す原始反射は、存在しており、腱(けん)反射は高進しています。
 開放性二分頭蓋の胎児を身ごもった妊婦に関しては、妊娠中期までは母体に自覚症状があることはほとんどありませんが、妊娠後期に入ると羊水過多になる傾向があります。これは開放性二分頭蓋により脳幹にまで障害があり、嚥下運動ができなくなるためといわれています。
 羊水は胎児にとって絶対に必要なものですが、多すぎると母体への負担が多くなります。ひどい場合は、腹が異常に膨らみ、呼吸器が圧迫されて呼吸困難にるケースもあります。妊娠後期の羊水過多症は早産の原因にもなるため、母体への負担を考えて、多くの場合で人工的に出産を誘発する措置が行われます。
[喫茶店]開放性二分頭蓋の検査と診断と治療
 産科、産婦人科の医師による診断は通常、分娩(ぶんべん)の前に超音波断層法を用いて行われます。胎児の超音波検査により、妊娠4カ月以降であれば、出生前診断が可能となります。また、羊水または母体の血清から血清蛋白(たんぱく)α-フェトプロテインが検出されます。
 胎児が開放性二分頭蓋と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。
 産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら開放性二分頭蓋の胎児を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。
 予防に関しては、原因に多因性があることと、遺伝子研究がその段階に至っていないことから、確実なものは発見されていません。
 日本では、ビタミンB群の一種である葉酸が遺伝子の合成や細胞分裂に不可欠で、その摂取が開放性二分頭蓋や二分脊椎(せきつい)などの神経管閉鎖障害という先天性異常になるリスクを低減するとして、厚生労働省が2000年に、妊娠を希望している女性に対して、1日当たり0・4ミリグラム以上の摂取を推奨しています。
 ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などに多く含まれる葉酸は、水溶性ビタミンで熱に弱く5割が調理でなくなってしまうので、サプリメントなどから摂取するのが効率的です。

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■用語 外脳症 [用語(か)]

[喫茶店]胎児の頭蓋骨半球、大脳半球が正常に発達しない奇形症
 外脳症(がいのうしょう)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨(とうがいこつ)半球、大脳半球、小脳の欠如を伴う奇形症。無脳症、無頭蓋症とも呼ばれます。
 人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。
 脊髄や脳は、胎児の神経管から形成されます。外脳症の症状が現れた胎児は、妊娠4週間程度までの超初期の段階で、神経管前部の閉鎖不全などが起こって神経管の発達が阻害されることで、後々の脊髄や脳の成長が妨げられます。妊娠4カ月ころまでは脳のある程度の発育がみられるものの、妊娠5カ月ころから一度は形成されたはずの大脳、小脳のほか、生命の維持に重要な役割を果たす延髄などの脳幹が突然退化したり、発育が止まったります。
 原因については、詳しく解明されていません。人種によって発現の頻度に差があるため遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。
 発現の頻度は、国によって異なり、アメリカでは出産1000人当たり1人程度。日本では1970年代から1980年代前半には出産10000人当たり10人程度であったものが、近年は出産10000人当たり1人程度に減少傾向を示しています。その理由として、胎児の超音波検査などの進歩に伴って出生前に診断される機会が増え、出産に至らないケースが増えてきている可能性が指摘されています。
 人工的に出産を誘発する措置が行われない場合、外脳症の症状が現れた胎児が母胎内で死亡して流産となるケースは少なく、出産の時までは生命を維持します。しかし、脳幹も欠損して死産となる確率が約75パーセントで、残る新生児も出生直後に死亡し、ある程度脳が残存している場合は生後数日間生存します。
 部分的に大脳皮質が形成されて機能し脳波が測定される場合は、生後1週間~2週間程度生存するものの、まれです。海外では、奇跡的に1年以上生存しているケースもありますが、日本では、そのようなケースはありません。
 外脳症の新生児では、頭で帽子をかぶる部分に相当する頭蓋骨や頭頂部が大きく欠如し、大脳半球は通常欠如して全くないか、小さな塊に縮小しているため、頭蓋の基底面が露出するとともに、基底面に付着するように変性し、表面が薄い皮膜で覆われた脳の一部が露出しています。
 顔貌(がんぼう)は特徴的で、前から見ると蛙(かえる)状です。そのほか、眼球の突出や欠如、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)を合併していることもあります。
 延髄の下半分が存在していれば、嚥下(えんげ)や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。正常な幼児が特有の刺激に応えて示す原始反射は、存在しており、腱(けん)反射は高進しています。
 外脳症の胎児を身ごもった妊婦に関しては、妊娠中期までは母体に自覚症状があることはほとんどありませんが、妊娠後期に入ると羊水過多になる傾向があります。これは外脳症により脳幹にまで障害があり、嚥下運動ができなくなるためといわれています。
 羊水は胎児にとって絶対に必要なものですが、多すぎると母体への負担が多くなります。ひどい場合は、腹が異常に膨らみ、呼吸器が圧迫されて呼吸困難にるケースもあります。妊娠後期の羊水過多症は早産の原因にもなるため、母体への負担を考えて、多くの場合で人工的に出産を誘発する措置が行われます。
[喫茶店]外脳症の検査と診断と治療
 産科、産婦人科の医師による診断は通常、分娩(ぶんべん)の前に超音波断層法を用いて行われます。胎児の超音波検査により、妊娠4カ月以降であれば、出生前診断が可能となります。また、羊水または母体の血清から血清蛋白(たんぱく)α-フェトプロテインが検出されます。
 胎児が外脳症と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。
 産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら外脳症の胎児を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。
 予防に関しては、原因に多因性があることと、遺伝子研究がその段階に至っていないことから、確実なものは発見されていません。
 日本では、ビタミンB群の一種である葉酸が遺伝子の合成や細胞分裂に不可欠で、その摂取が外脳症や二分脊椎(せきつい)症などの神経管閉鎖障害という先天性異常になるリスクを低減するとして、厚生労働省が2000年に、妊娠を希望している女性に対して、1日当たり0・4ミリグラム以上の摂取を推奨しています。
 ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などに多く含まれる葉酸は、水溶性ビタミンで熱に弱く5割が調理でなくなってしまうので、サプリメントなどから摂取するのが効率的です。

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