■用語 膝靭帯損傷 [用語(し)]
膝関節の左右、前後へのぶれを防いでいる靱帯が損傷した状態
膝靭帯(しつじんたい)損傷とは、膝(ひざ)関節の内側、外側、中心に存在している合計4本の靱帯に大きな外力が作用して損傷、断裂した状態。
膝関節の内側には内側側副(ないそくそくふく)靭帯、外側には外側(がいそく)側副靭帯、中心には前(ぜん)十字靭帯と後(こう)十字靭帯がクロスして存在し、関節が不安定にならないように制動作用を果たしています。
膝靭帯損傷は通常単独で起こりますが、非常に大きな外力が作用すると複数の靭帯が同時に損傷、断裂する複合靱帯損傷となる場合もあります。靭帯別にみると、損傷頻度は内側側副靭帯と前十字靭帯が高く、後十字靭帯は時にみられ、外側側副靭帯が損傷することは非常にまれです。
靱帯の受傷の状況としては、スポーツ活動で人や物が直接、膝にぶつかって発症する接触損傷、ジャンプ、着地、ストップなどの動作で膝に加速力、減速力が働くことによって起こる非接触損傷、スキー板などの先端が引っ掛かって、膝に損傷が加わる介達損傷の3型があります。
接触損傷はラグビー、アメリカンフットボール、柔道、非接触損傷はバスケットボール、バドミントン、サッカー、介達損傷はスキーなどにより発症することが多く、スポーツ以外では交通事故による接触損傷が多くみられます。
側副靱帯損傷
側副靱帯損傷とは、膝の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防ぐ役目をしている側副靱帯が損傷、断裂した状態。側副靱帯はすじ状の繊維性結合組織で、大腿骨(だいたいこつ)と下腿骨(かたいこつ)の脛骨(けいこつ)および腓骨(ひこつ)とを連結しています。
スキーやサッカーなどのスポーツで急激な反転、方向転換をした時に、下腿が無理に内側や外側へ曲げられて起こります。この側副靱帯の損傷は、内側に多く、外側の受傷は比較的まれです。
損傷を受けると、階段を降りる時や歩行などの時に膝がグラグラして、安定しなくなります。断裂すると、断裂部の圧痛と腫脹(しゅちょう)、膝を軽く屈曲した位置で側方へ動揺する不安定性をみます。
整形外科医の診断では、膝の不安定性を検査します。この場合、麻酔下で、痛みのために起こる筋肉の防御的緊張を取り除いた状態で行うと、はっきりします。不安定性の程度によって、痛みのみで不安定性はない1度、膝を伸ばした状態、伸展位で不安定性はないが、30度ほど屈曲すると認められる2度、伸展位で不安定性を認める3度に分類されています。
側副靱帯単独の損傷のことが多いのですが、3度の不安定性がある場合は、前十字靭帯損傷を合併している可能性があります。そのほか、X線撮影、関節造影、MRI、関節鏡などの所見を総合的に判断して、診断します。
内側の側副靱帯の損傷の場合、損傷の程度により2週間から4週間、弾性包帯、ギプス、固定装具による安静固定を行います。痛みや炎症の強い時期は、冷湿布などで冷やします。
内側の側副靱帯の単独損傷では、しっかりした固定とリハビリによって、回復することも多くみられます。しかし、しっかりした固定をしないと、痛めた靱帯が伸びた状態で修復され、膝関節が不安定な状態となり、痛みや腫(は)れも慢性化するケースがあります。慢性化した場合は、サポーターなどによる固定をしたり大腿四頭筋の強化訓練をして、膝関節がグラグラしないように安定させる必要があります。
また、完全に靱帯が断裂している重症のケースでは、膝関節の不安定性が大きくなるために手術を要することもあり、靱帯縫合術、靱帯再建術を行います。前十字靱帯の損傷と合併している場合も、その不安定性が大きく、スポーツや重作業に復帰するには手術をしたほうが予後も良好のようです。
外側の側副靱帯の損傷の場合も、損傷の程度により2週間から4週間、ギプスなどによる安静固定を行います。炎症や痛みの強い時期は、冷湿布などで冷やします。
スポーツや事故による損傷では、外側の側副靱帯の単独損傷を発生するケースはほとんどみられず、十字靱帯損傷や、膝裏の筋肉である膝窩(しっか)筋損傷、膝関節の中の軟骨である半月板損傷に合併して生ずることが多いため、固定期間や安静期間は、専門医の判断に委ねるべきです。
単独損傷では、後遺症として関節の不安定性が起こる場合は少なく、また不安定性を起こしても内側の側副靱帯と比較して、その動揺の程度は小さく回復も良好ですが、複合靱帯損傷では、多くが強固な靭帯修復術が必要になります。
十字靱帯損傷
十字靱帯損傷とは、膝関節の前方へのぶれを防ぐ役目をしている前十字靱帯、膝関節の後方へのぶれを防ぐ役目をしている後十字靱帯が損傷、断裂した状態。
激しいスポーツが盛んになるに連れて、この十字靱帯の損傷が増加しており、膝が過伸展されたり、ひねられたりした際に生じます。多くは前十字靱帯に起こりますが、単独で生じることは少なく、多くは半月板や側副靱帯の損傷を合併しています。
男性ではサッカーやフットボール、格闘技などでの接触による受傷が多いのに対して、女性では非接触性の受傷が多く、特にバスケットボールによって生じることが多いとされています。バスケットボールでは、膝の向きと足の向きが違っているようなピボット(軸足)動作や、下腿と大腿骨のひねり動作時に生じています。
症状としては、急性期には損傷や関節内血腫による痛みが主体ですが、数日で痛みはかなり改善します。その後は、膝関節が前後方向へ動揺しやすくなって、歩行時や階段昇降時に膝の不安定感や膝崩れを自覚し、走行時や走行停止時に膝の不安定感を持つようになります。
膝の痛みが数週間も続くようであれば、半月板や軟骨などの合併損傷を考慮する必要があります。
整形外科医による診断では、麻酔下に膝関節の不安定性の検査を行い、さらにX線撮影、CT、MRI、関節造影、関節鏡検査などが行われます。関節内血腫は、穿刺(せんし)して排除されます。
前十字靭帯は関節内にあるため、部分断裂を除いて、いったん切れてしまうと自然につながることはほとんどなく、縫合しても効果のないことが確認されており、基本的には靱帯再建術が勧められています。
再建術では、体の他の部分から靭帯の代わりになる組織を移植し、靭帯を作り直します。よく使われる組織としては、膝の裏側の腱(けん)であるハムストリングと、腱反射を見る時にたたく腱である膝蓋(しつがい)腱があります。半月板損傷を合併している場合は、靭帯再建術と同時に半月板の縫合、または切除が行われます。
後十字靭帯も自然に治癒することは少ないものの、前十字靭帯よりも不安定性を来すことが少ないため、単独損傷であれば弾力包帯、またはギプスで固定し、後に大腿四頭筋などを強化訓練することで、日常生活を送るには特に不便を感じなくなります。半月板損傷などを合併していたり、激しいスポーツを続けたい場合は、靱帯再建術を行ったほうがよいこともあります。
膝靭帯(しつじんたい)損傷とは、膝(ひざ)関節の内側、外側、中心に存在している合計4本の靱帯に大きな外力が作用して損傷、断裂した状態。
膝関節の内側には内側側副(ないそくそくふく)靭帯、外側には外側(がいそく)側副靭帯、中心には前(ぜん)十字靭帯と後(こう)十字靭帯がクロスして存在し、関節が不安定にならないように制動作用を果たしています。
膝靭帯損傷は通常単独で起こりますが、非常に大きな外力が作用すると複数の靭帯が同時に損傷、断裂する複合靱帯損傷となる場合もあります。靭帯別にみると、損傷頻度は内側側副靭帯と前十字靭帯が高く、後十字靭帯は時にみられ、外側側副靭帯が損傷することは非常にまれです。
靱帯の受傷の状況としては、スポーツ活動で人や物が直接、膝にぶつかって発症する接触損傷、ジャンプ、着地、ストップなどの動作で膝に加速力、減速力が働くことによって起こる非接触損傷、スキー板などの先端が引っ掛かって、膝に損傷が加わる介達損傷の3型があります。
接触損傷はラグビー、アメリカンフットボール、柔道、非接触損傷はバスケットボール、バドミントン、サッカー、介達損傷はスキーなどにより発症することが多く、スポーツ以外では交通事故による接触損傷が多くみられます。
側副靱帯損傷
側副靱帯損傷とは、膝の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防ぐ役目をしている側副靱帯が損傷、断裂した状態。側副靱帯はすじ状の繊維性結合組織で、大腿骨(だいたいこつ)と下腿骨(かたいこつ)の脛骨(けいこつ)および腓骨(ひこつ)とを連結しています。
スキーやサッカーなどのスポーツで急激な反転、方向転換をした時に、下腿が無理に内側や外側へ曲げられて起こります。この側副靱帯の損傷は、内側に多く、外側の受傷は比較的まれです。
損傷を受けると、階段を降りる時や歩行などの時に膝がグラグラして、安定しなくなります。断裂すると、断裂部の圧痛と腫脹(しゅちょう)、膝を軽く屈曲した位置で側方へ動揺する不安定性をみます。
整形外科医の診断では、膝の不安定性を検査します。この場合、麻酔下で、痛みのために起こる筋肉の防御的緊張を取り除いた状態で行うと、はっきりします。不安定性の程度によって、痛みのみで不安定性はない1度、膝を伸ばした状態、伸展位で不安定性はないが、30度ほど屈曲すると認められる2度、伸展位で不安定性を認める3度に分類されています。
側副靱帯単独の損傷のことが多いのですが、3度の不安定性がある場合は、前十字靭帯損傷を合併している可能性があります。そのほか、X線撮影、関節造影、MRI、関節鏡などの所見を総合的に判断して、診断します。
内側の側副靱帯の損傷の場合、損傷の程度により2週間から4週間、弾性包帯、ギプス、固定装具による安静固定を行います。痛みや炎症の強い時期は、冷湿布などで冷やします。
内側の側副靱帯の単独損傷では、しっかりした固定とリハビリによって、回復することも多くみられます。しかし、しっかりした固定をしないと、痛めた靱帯が伸びた状態で修復され、膝関節が不安定な状態となり、痛みや腫(は)れも慢性化するケースがあります。慢性化した場合は、サポーターなどによる固定をしたり大腿四頭筋の強化訓練をして、膝関節がグラグラしないように安定させる必要があります。
また、完全に靱帯が断裂している重症のケースでは、膝関節の不安定性が大きくなるために手術を要することもあり、靱帯縫合術、靱帯再建術を行います。前十字靱帯の損傷と合併している場合も、その不安定性が大きく、スポーツや重作業に復帰するには手術をしたほうが予後も良好のようです。
外側の側副靱帯の損傷の場合も、損傷の程度により2週間から4週間、ギプスなどによる安静固定を行います。炎症や痛みの強い時期は、冷湿布などで冷やします。
スポーツや事故による損傷では、外側の側副靱帯の単独損傷を発生するケースはほとんどみられず、十字靱帯損傷や、膝裏の筋肉である膝窩(しっか)筋損傷、膝関節の中の軟骨である半月板損傷に合併して生ずることが多いため、固定期間や安静期間は、専門医の判断に委ねるべきです。
単独損傷では、後遺症として関節の不安定性が起こる場合は少なく、また不安定性を起こしても内側の側副靱帯と比較して、その動揺の程度は小さく回復も良好ですが、複合靱帯損傷では、多くが強固な靭帯修復術が必要になります。
十字靱帯損傷
十字靱帯損傷とは、膝関節の前方へのぶれを防ぐ役目をしている前十字靱帯、膝関節の後方へのぶれを防ぐ役目をしている後十字靱帯が損傷、断裂した状態。
激しいスポーツが盛んになるに連れて、この十字靱帯の損傷が増加しており、膝が過伸展されたり、ひねられたりした際に生じます。多くは前十字靱帯に起こりますが、単独で生じることは少なく、多くは半月板や側副靱帯の損傷を合併しています。
男性ではサッカーやフットボール、格闘技などでの接触による受傷が多いのに対して、女性では非接触性の受傷が多く、特にバスケットボールによって生じることが多いとされています。バスケットボールでは、膝の向きと足の向きが違っているようなピボット(軸足)動作や、下腿と大腿骨のひねり動作時に生じています。
症状としては、急性期には損傷や関節内血腫による痛みが主体ですが、数日で痛みはかなり改善します。その後は、膝関節が前後方向へ動揺しやすくなって、歩行時や階段昇降時に膝の不安定感や膝崩れを自覚し、走行時や走行停止時に膝の不安定感を持つようになります。
膝の痛みが数週間も続くようであれば、半月板や軟骨などの合併損傷を考慮する必要があります。
整形外科医による診断では、麻酔下に膝関節の不安定性の検査を行い、さらにX線撮影、CT、MRI、関節造影、関節鏡検査などが行われます。関節内血腫は、穿刺(せんし)して排除されます。
前十字靭帯は関節内にあるため、部分断裂を除いて、いったん切れてしまうと自然につながることはほとんどなく、縫合しても効果のないことが確認されており、基本的には靱帯再建術が勧められています。
再建術では、体の他の部分から靭帯の代わりになる組織を移植し、靭帯を作り直します。よく使われる組織としては、膝の裏側の腱(けん)であるハムストリングと、腱反射を見る時にたたく腱である膝蓋(しつがい)腱があります。半月板損傷を合併している場合は、靭帯再建術と同時に半月板の縫合、または切除が行われます。
後十字靭帯も自然に治癒することは少ないものの、前十字靭帯よりも不安定性を来すことが少ないため、単独損傷であれば弾力包帯、またはギプスで固定し、後に大腿四頭筋などを強化訓練することで、日常生活を送るには特に不便を感じなくなります。半月板損傷などを合併していたり、激しいスポーツを続けたい場合は、靱帯再建術を行ったほうがよいこともあります。
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