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■ハンセン病患者の家族も被害、国に賠償命じる 熊本地裁 [健康ダイジェスト]

 約90年に及んだハンセン病患者の隔離政策により家族も深刻な差別などの被害を受けたとして、元患者の家族で、北海道から九州・沖縄に住む20~90歳代の男女561人が国に1人当たり550万円(総額約30億円)の損害賠償と謝罪を求めた集団訴訟の判決で、熊本地裁は28日、初めて家族への賠償を命じました。
 遠藤浩太郎裁判長は、「隔離政策は家族が差別を受ける社会構造を生み、憲法が保障する人格権や婚姻の自由を侵害した」と指摘。原告541人に総額3億7675万円を支払うよう国に命じました。
 隔離政策を違憲として元患者への賠償責任を認めた2001年の熊本地裁判決(確定)の内容を踏襲しつつ、救済範囲を家族にまで拡大しました。2001年判決については、当時の小泉純一郎首相が控訴を断念して元患者に謝罪しています。国が今回も控訴しなければ、ハンセン病問題の「残された課題」とされた家族の全面救済に大きく近付くことになります。
 2009年施行のハンセン病問題基本法は、元患者の名誉回復を国に義務付けたものの、家族は対象外とされました。裁判では隔離政策が家族にも損害を与えたといえるかどうかが最大の争点でした。
 判決は、2001年判決を踏襲し、世界保健機関(WHO)が隔離を否定した1960年以降も、「らい予防法」に基づいて隔離政策を廃止しなかった厚生相・厚生労働相の義務違反や国会の立法不作為を過失と認定。隔離政策により「ハンセン病は恐ろしい伝染病」との誤った認識を国民に広め「隔離政策以前とは異質の家族への排除意識を生んだ」と指摘し、「国は家族に対しても偏見差別を除去する責任があった」と判断しました。また、2001年判決では言及しなかった法相や文部科学相についても、「差別除去のための啓発活動や教育を実施する義務を怠った」として違法性を認定しました。
 判決はまた、2001年判決まで違法行為は続いたものの、判決とその後の国の施策などで同年末までに家族への偏見差別は一定程度なくなったと判断。2001年末までに本人が患者家族と認識していた541人に共通損害があるとし、患者との関係性などに応じて1人当たり143万~33万円を支払うよう命じました。20人については、2001年末までに本人も周囲も患者家族と認識していなかったとして棄却しました。
 国は時効成立も主張しましたが、判決は鳥取県の元患者の息子が単独で起こした同種訴訟で、2015年9月の鳥取地裁判決が家族に対する国の責任に初言及したことで、原告は「国が加害者だと認識した」と判断。同判決を時効の起算とし、翌2016年に提訴した今回の訴訟について時効の成立を否定しました。
 厚生労働省は、「判決内容を精査するとともに関係省庁と協議し、対応を検討する」とコメントを出しました。

 2019年6月30日(日)

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