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■中国の研究者、ゲノム編集で双子誕生の動画を公開 日本の学会は反対声明を検討 [健康ダイジェスト]

 中国の南方科技大学(広東省深圳市)の研究者が、「ゲノム編集」と呼ばれる遺伝情報を自在に書き換える技術を使って、エイズウイルスに感染しないよう人の受精卵を操作し、実際に双子の女児が11月に誕生したと主張する複数の動画を日本時間の26日、インターネットの動画サイトに公開しました。
 人の受精卵のゲノム編集は遺伝性の病気の治療につながると期待される一方、影響が予測しきれないことなどから倫理上問題があるという指摘があり、アメリカでは、将来的には透明性を確保した上で数世代にわたって追跡調査を行うなど厳しい条件のもとでのみ容認し得るとしています。
 今回は研究内容をまとめた論文が示されておらず、倫理的な手続きも明らかになっていません。
 南方科技大学は、「賀准教授の研究は学術における倫理と規範に著しく違反している」とする声明を発表し、事実とすれば問題があるとして調査に乗り出しました。中国政府も、研究が本当に行われたのか調査し結果を公表するよう、広東省の担当部門に指示しました。
 生命倫理が専門の北海道大学の石井哲也教授は、「生まれた子供にどのような健康問題が生じるのか検証がされていないので、悪影響が出た時には取り返しがつかず、とてつもない人権問題となる。中国国内の指針でもこうしたことは禁止されているはずで、どのような手続きで行われたのか検証する必要がある。こうした人体実験のようなことは国内でも海外でも行うべきではない」と強く非難しています。
 ゲノム編集の技術を開発したカリフォルニア大学のジェニファー・ダウドナ教授は、「中国の研究者の主張が本当だとしたら、世界中の科学者が慎重に、透明性を確保した上で取り組みを進める中で逸脱した行為だ」とするコメントを出しました。
 一方、人の細胞でのゲノム編集に世界で初めて成功したアメリカのブロード研究所のフェン・チャン博士は、「ゲノム編集を使わなくても子供へのエイズウイルスの感染を防ぐ効率的な方法はすでに確立されている。今回のように受精卵の遺伝子を操作することは、メリットよりもリスクのほうがはるかに大きい。十分な安全対策ができるまでは人の受精卵への応用は停止すべきだ」とするコメントを出しました。
 アメリカを代表する研究者で作る「アメリカ科学アカデミー」は2017年、ゲノム編集の応用をどこまで認めるべきか、中国の研究者も加わって2年近くにわたり議論した上で報告書をまとめています。
 この報告書では、ゲノム編集の人の受精卵への応用について、影響が世代を超えて受け継がれるなど倫理的な懸念がある一方、遺伝性の病気の治療につながる可能性があることから、将来的にはほかに治療の選択肢がない場合、透明性を確保し、数世代にわたる追跡調査を行うなど厳しい条件のもとで実施を容認し得るとしています。
 一方、がんの遺伝子治療などの研究者でつくる日本遺伝子細胞治療学会は、今回のような研究がさらに行われるのを防ぐために、強く反対する声明を出す方向で検討を始めました。
 学会では、今回の問題点として、ゲノム編集は技術的に完成していないため意図しない改変が起き、そうした改変が世代を超えて受け継がれ、人類の進化に影響を及ぼす恐れがあるとしています。また、こうした研究は技術の段階的な進歩と並行した社会的な議論を踏まえて行われるべきもので、そうした手順がない中での実施はあってはならないフライングだとしています。
 日本遺伝子細胞治療学会の藤堂具紀理事長は、「早急に事実確認をした上で、理事会のメンバーで協議し、立場を明らかにしたい」と話しています。

 2018年11月27日(火)

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