■用語 心室細動 [用語(し)]
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心室細動とは、不整脈の一種で、心臓で血液を送り出している心室が小刻みに不規則に震える細動を伴って、血液を全身に送り出せなくなった状態。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく血液を全身に送り出すことができるのです。リズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。
この電気刺激が何らかの原因で正常に働かなくなることによって、心臓の拍動のリズムに乱れが生じるのが不整脈で、心室細動は不整脈の中でも死亡に至る確率が高い危険な状態です。
心室の無秩序な興奮により異常な刺激を受け、1分間当たりの拍動が300~600回と極端に速くなって血液の送り出しが不能な状態となり、血圧はゼロに下がります。胸痛や不快感が起き、血液が脳や体全体に届かなくなって、細動が10秒前後続くと意識を消失、さらに10分続くと脳死に至るともいわれ、やがて心臓が完全に停止し死に至ります。
心臓突然死の多くは心室細動が原因で、即座に心臓マッサージを開始するか、公的機関やスポーツ施設を中心に配備されている自動体外式除細動器(AED)などを用いて細動を取り除かなければ、心臓停止から呼吸停止に陥ります。
心室細動は、心筋梗塞(こうそく)や狭心症、心不全、心臓弁膜症などの心臓病の進行に伴って心臓の筋肉が弱っている人に多く起き、拡張型心筋症やブルガダ症候群と呼ばれる珍しい心臓病を持つ人にも起きるほか、脱水や栄養障害や腎(じん)機能障害などによって血液中のミネラルバランスが崩れて起こす人もいます。
また、胸部にボールなどが当たった刺激や感電によるショックで、心室細動を起こす人もいます。さらに、QT延長症候群と呼ばれる先天性の遺伝子異常を持つために心室細動を起こしやすいタイプもあり、若者が睡眠中などの安静時や運動中に、心室細動発作を起こすこともあります。
若者の場合、持病がなければ心室細動の兆候も現れにくく、たとえ不整脈で倒れても軽度で回復して、それに気付かない場合があって予知が難しく、別の機会に突然死する原因になりやすいという特徴があります。
心室細動は活動時よりも安静時、特に睡眠時に起こりやすく、睡眠中に心室細動発作を繰り返していても本人には自覚されないこともあります。同居者がいた場合、夜間に突然もだえてうなり声を上げたり、体を突っ張ったり、失禁したりする全身症状を指摘され、初めて発作があったことがわかることもあります。睡眠時などの安静時の発作は、再発率が高くなっています。
心室細動は、命にかかわるものなので、まずは毎年の健康診断をきちんと受けること、そして健診で異常が見付かったり、胸の自覚症状があった際には循環器科、循環器内科、もしくは不整脈専門の不整脈科、不整脈内科を受診することが勧められます。
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循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、運動負荷検査、心臓超音波検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。
心電図検査は、数分で終わります。症状がない人でも、心電図検査で心室細動のリスクが高いブルガダ症候群やQT延長症候群などの疾患が見付かるケースもあります。
ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、不整脈の数がどれくらいあるか、危険な不整脈はないか、症状との関係はどうか、狭心症は出ていないかなどがわかります。とりわけ、日中に発作が起こりにくい不整脈を発見するのに効果を発揮します。
運動負荷検査は、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいでもらったりする検査。運動によって不整脈がどのように変わるか、狭心症が出るかどうかをチェックします。
心臓超音波検査は、心臓の形態や動きをみるもので、心臓に疾患があるかどうかが診断できます。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による内科治療では、抗不整脈薬という拍動を正常化する働きのある薬を中心に行います。ただし、不整脈そのものを緩和、停止、予防する抗不整脈薬での治療は、症状を悪化させたり、別の不整脈を誘発したりする場合があり、慎重を要する治療法であるといえます。抗不整脈薬のほかに、抗血栓薬など不整脈の合併症を予防する薬なども用います。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による外科治療では、1分間当たりの拍動が100回を大きく上回る症状を示す頻脈性不整脈に対して、体内に挿入したカテーテル(細い管)の先端から高周波を流し、心臓の動きにかかわる電流に過電流を起こす部位を焼き切って正常化する、カテーテル・アブレーション法という新しい治療法が行われています。この治療法は、心臓の電位を測って映像化する技術が確立したことで実現しました。
薬物療法に応じず、血行動態の急激な悪化を伴って生じる心室細動に対しては、直流通電(DCショック)を行います。また、慢性的に心室細動の危険が持続する症状に対しては、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術も考慮されます。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置です。
治療に関しては、疾患自体の原因がはっきりしていないため対症療法に頼るしかなく、現在のところ根治療法はありません。心室細動発作を起こした際は、自動体外式除細動器(AED)、または手術で体内に固定した植え込み型除細動器(ICD)などの電気ショックで回復します。
心室細動発作を起こしたことが心電図などで確認されていたり、原因不明の心停止で心肺蘇生(そせい)を受けたことがある人では、植え込み型除細動器(ICD)の適応が勧められます。このような発症者は今後、同様の発作を繰り返すことが多く、そのぶん、植え込み型除細動器(ICD)の効果は絶大といえます。また、診断に際して行う検査においてリスクが高いと判断された場合にも、植え込みが強く勧められます。
といっても、植え込み型除細動器(ICD)の植え込みはあくまで対症療法であり、発作による突然死を減らすことはできても、発作回数自体を減らすことはできないところに限界があるといわざるを得ません。
植え込み型除細動器(ICD)は通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。治療には500万円ほどかかりますが、健康保険が利き、高額療養費の手続きをすれば、自己負担は所定の限度額ですみます。手術後は、入浴や運動もできます。
ただし、電磁波によって誤作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれます。電子調理器、盗難防止用電子ゲート、大型のジェネレーター(発電機)などが、誤作動を誘発する恐れがあります。
万一、発作が起きた際の用心のため、高所など危険な場所での仕事は避けたほうがよく、車の運転も手術後の半年は原則禁止。電池取り替えのため、個人差もありますが、5〜8年ごとの再手術も必要です。確率は低いものの、手術時にリード線が肺や血管を破ってしまう気胸、血胸なども報告されています。
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