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■DHAが不足すると視覚機能不全や男性不妊を招く 国際医療研究センター研究所が解明 [健康ダイジェスト]

 サバやイワシなど青魚に豊富に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)は脳の記憶学習中枢の働きを活性化したり、中性脂肪やコレステロールの値を下げたり、動脈硬化を予防したりするなどの効果が明らかになっていますが、それだけではなく、DHAがなくなると視覚機能や男性の生殖機能が失われることが新たに明らかになりました。
 国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)や秋田大学、東京大学、千葉大学などの共同研究チームがマウスの実験で明らかにし、6月3日にアメリカの科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に発表しました。
 動物の体を作る細胞には、外側を包む細胞膜のほか、内側にあるミトコンドリアや小胞体、ゴルジ体などの「細胞小器官」にも膜があり、リン脂質という脂質が集まってできています。リン脂質は1000~1500種類あり、各組織の役割などによって異なる分子構造を持っています。眼球の内側にあって光を感じる網膜の視細胞や精子の膜には、DHAを含んだリン脂質が豊富に存在しています。
 DHAは、人を含む動物の体内で作り出すことができないため、食べ物から摂取しなくてはなりません。食べ物から体内に取り込まれたDHAは、血液中で脂質の分解を促進したり、動脈硬化や血栓の原因となる血小板の凝集を防いだり、LPAAT3という酵素の働きでリン脂質の一部になって細胞の膜の構成要素になったりします。このうち、膜に関しては、DHAがどんな働きをしているか解明されていませんでした。
 そこで、膜に含まれるDHAの働きを解明するため、研究チームは遺伝子操作により、酵素LPAAT3を作ることができないマウスを作製。DHAを含む膜が作られない場合、網膜の視細胞と精子にどのような影響が出るのかを調べました。
 その結果、網膜では、目に入った光を電気信号に変える視細胞の一部の形が崩れていることが判明。網膜に光を当てても電気信号が発生せず無反応で、ほぼ視力を失っている状態でした。研究所の進藤英雄・脂質シグナリングプロジェクト副プロジェクト長は、「DHAを含むリン脂質はほかのリン脂質よりも軟らかく、その性質が視細胞の形を維持するのに適しているのだろう」と分析しています。
 一方の精子では、採取した精子の90%が奇形で、頭部に余分な物質が付着し、卵子に侵入するための先端部分が折れ曲がっていました。さらに、通常のマウスではほぼ100%成功する方法で5匹のマウスについて人工授精を試みたところ、すべて失敗しました。
 研究所の菱川佳子・脂質シグナリングプロジェクト研究員によると、精子のもとになる細胞は精巣で周囲の細胞に栄養を供給されながら成長し、最終的に周囲の細胞から切り離されて精子となります。DHAが含まれている膜の軟らかさが、切り離される際に余分な物質を除去するのに適していると考えられるといいます。DHAが含まれていない膜では、余分な物質の除去が正常にできなくなり、重篤な不妊を伴う奇形の精子になるとみられます。
 研究チームは、「人でも同様のことが起こると考えられ、体内でDHAが不足すると、視力低下や男性不妊の原因になる可能性がある」と指摘しています。
 研究所の菱川大介・脂質シグナリングプロジェクト上級研究員によると、DHAが含まれている膜を持つ人の視細胞の一部は常に新しいものに作り替えられ、さらに、DHAは最終的に細胞のエネルギー源として使われるため、DHAを摂取し続けないと体内で必要量が維持できないといいます。
 DHAは植物に含まれるαリノレン酸という物質からも体内で合成することはできるものの、摂取したαリノレン酸が生体で機能できるDHAにどの程度変換されるかは不明。菱川上級研究員は、「魚やサプリメントからDHAを直接取ることが効果的だと思われる」と話しています。
 また、研究チームは今後の目標について、「DHAを補うことや、酵素LPAAT3にかかわる遺伝子をコントロールすることが、視覚機能や生殖機能を改善する治療方法の開発につながる可能性があり、研究を進めていきたい」としています。

 2017年8月13日(日)

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■がん13種を血液1滴で早期発見、8月中に新検査の臨床研究へ 国立がん研究センター [健康ダイジェスト]

 国立がん研究センター(東京都中央区)や東レ(東京都中央区)などは、血液1滴で乳がんや胃がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、8月中に臨床研究を始めることになりました。
 国立がん研究センターの研究倫理審査委員会が7月中旬、実施を許可しました。早ければ3年以内に、国に事業化の申請を行うといいます。
 一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、がんによる死亡を減らせる可能性があります。
 新しい検査法では、細胞から血液中に分泌され、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA(リボ核酸)」を活用。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種類が異なり、一定期間分解されません。
 国立がん研究センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人の保存血液から、乳房、肺、胃、大腸、食道、肝臓、 膵臓(すいぞう)、胆道、卵巣、前立腺、膀胱、肉腫(にくしゅ)、神経膠腫(こうしゅ)の13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定しました。
 血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1期」を含め、すべてのがんで95%以上の確率で診断できました。乳がんは97%で、触診やマンモグラフィーでは見付けられないような初期の乳がんでも診断可能になっています。
 ただ、保存血液ではマイクロRNAが変質している可能性もあります。臨床研究では、患者や健康な人約3000人から提供してもらった新しい血液を使います。
 乳房や胃、肺、胃、大腸などのがんの早期発見では、エックス線や内視鏡などによる検診が有効とされますが、がんの種類ごとに検査を受ける必要があり、自費で検診を受けると費用もかかります。
 新しい検査法では、診断の確定に精密検査が必要になるものの、国立がん研究センター研究所の落谷孝広分野長は「簡単にがん検診を受けることができるようになるため、がん患者の生存率を上げることができる可能性がある。いずれは、がんのステージや特徴もわかるようになるだろう」と話しています。

 2017年8月13日(日)

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■用語 先天性QT短縮症候群 [用語(さ行)]

[喫茶店]脈が乱れて不整脈発作や失神発作を起こし、突然死に至ることが、まれにある遺伝性不整脈疾患
 先天性QT短縮症候群とは、心筋細胞に生まれ付き機能障害があるために、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることがまれにあり得る疾患。
 医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて短くなることから、この疾患名が付けられています。
 先天性QT短縮症候群は、極めてまれな遺伝性の疾患で、正確な発生頻度は明らかになっていません。症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。
 心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT短縮症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が通常よりも短縮するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作が起こりやすくなります。
 先天性QT短縮症候群の原因は、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが、重要になります。
 電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウム、カルシウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
 イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。先天性QT短縮症候群では、これまでに6個の原因遺伝子が報告されています。最も多いQT短縮症候群1型(SQT1)の遺伝子の異常は25%程度に認められるとされていますが、そのほかの原因遺伝子の検出頻度は低くなります。
 また、先天性QT短縮症候群の遺伝子異常は、常染色体優性遺伝の形式をとり、子孫に代々受け継がれて家族性に発症する場合もあり、家族には認めずに本人にのみ遺伝子異常が出現する場合もあります。
 無症状の場合もありますが、まれに心室頻拍や心室細動などの不整脈が発生して失神したり、心停止や突然死に至ったりすることもあります。症状が起こる可能性は、小児から成人のあらゆる年齢層にあります。
 一度でも心停止を起こしたことがある場合、失神または不整脈が出現している場合、家族に同様の発症者がいる場合は、リスクが高いことが予想され、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることが勧められます。
[喫茶店]先天性QT短縮症候群の検査と診断と治療
 小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、不整脈発作や失神発作の既往歴、家族歴などから先天性QT短縮症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の短縮を確認します。
 QT時間で280~300ms(ミリ秒)以下、心拍数で補正したQTc時間(補正QT時間)で300~320ms(ミリ秒)以下がQT短縮とされていますが、QTc時間(補正QT時間)が330ms(ミリ秒)以下の場合は、先天性QT短縮症候群である可能性が高くなります。
 一般的に通常の心電図検査は限られた時間の中で情報を集めますが、詳しく検査する場合はホルター心電計を利用します。これは胸に電極をつけて24時間にわたる心電図を記録する携帯式の小型の装置で、運動中や食事中、就寝中などでのQT短縮や不整脈の出現頻度と出現形態を確認できます。
 また、基礎心疾患の有無や運動前後でのQT短縮や不整脈の出現頻度をみる目的で、心臓超音波検査や運動負荷心電図を行います。
 遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効であるものの、症状を伴う先天性QT短縮症候群でも現状、遺伝子診断率は低くなっています。
 小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、無症状で家族に同様の発症者がいない場合、家族に突然死した人がいない場合は、経過観察を行います。
 心室頻拍や心室細動が出現した場合、原因不明な失神を繰り返している場合、家族に同様の発症者がいたり突然死した人がいる場合は、心停止リスクが高いため小児から成人まで年齢を問わず、植え込み型除細動器(ICD)を植え込むことがあります。また、一度でも心停止を起こしたことがある場合も、植え込み型除細動器(ICD)を植え込みことが第一選択の治療法となります。
 植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
 QT時間を延長させる薬がいくつかあり、抗不整脈薬であるキニジンの内服、ニフェカラントやジソピラミドの点滴静脈注射を行うこともありますが、QT時間を安定して延長することはできません。

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