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■幹細胞を使った再生医療で脊髄損傷を治療へ ニプロが2018年の実現を目指す [健康ダイジェスト]

 医療機器大手のニプロ(大阪市北区)は、神経や軟骨に変化する幹細胞を使った脊髄の再生医療を2018年にも実現することを目指しています。
 患者の骨髄から取り出して増やした幹細胞を体内に戻す治療の試験に、このほど成功し、今秋にも厚生労働省に再生医療製品として承認申請します。これまで損傷した脊髄を治す方法はありませんでしたが、再生医療ならある程度の回復が見込めるため、実用化が加速しそうです。
 ニプロは2014年から、札幌医科大学(札幌市中央区)と共同で研究してきました。幹細胞は体内の傷付いた部分に集まる性質を有し、体内に戻した幹細胞は脊髄の損傷した部分に自然と集まり、神経を再生します。その結果、脊髄損傷により歩けなくなった患者が歩けるようになると期待されています。
 交通事故やけが、スポーツ事故などで脊髄を損傷した場合、手足のまひなど深刻な障害が残ります。リハビリで一部の運動機能が戻ることもありますが、現在、有効な治療法はありません。国内には約20万人の患者がいるとみられ、毎年5000人ほど増えています。今回の治療法は、歩けないなど比較的重症の患者が対象になりそうです。
 ニプロの今後の課題は量産技術の確立で、今のところ技術者が手作業で幹細胞(骨髄由来間葉系幹細胞)を増やしているため、年間100人ぶん程度しか作製できないといいます。生産や検査を自動化する技術の開発を進めているものの、人材をさらに育成できるかが焦点です。
 同じ中枢神経系である脳の疾患への応用も、札幌医科大と共同で研究してきており、すでに脳梗塞の患者で臨床試験を進めています。
 傷付いた神経を再生医療で治療する動きは、国内外で活発になっています。慶応義塾大学の岡野栄之教授と中村雅也教授らは、2018年前半にもiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った脊髄の治療で臨床研究を始めます。バイオベンチャーのサンバイオ(東京都中央区)は、2016年からアメリカで脳梗塞治療の臨床試験を大日本住友製薬と共同で進めています。

 2017年8月6日(日)

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■無痛分娩、体制を整備して実施すべき 日本産婦人科医会が提言 [健康ダイジェスト]

 日本産婦人科医会は、麻酔を使って陣痛を和らげる無痛分娩(ぶんべん)を実施する医療機関に対し、出血や麻酔合併症などに適切に対応できる体制整備をするよう提言することを決めました。
 同医会が毎年まとめる、産婦人科医らに向けた妊産婦の安全なお産に関する提言に盛り込みます。提言で無痛分娩に言及するのは初めてで、8月末までに正式にまとめる予定。
 全国の産婦人科の医師でつくる日本産婦人科医会は、全国で起きた出産前後の女性が死亡した事例などを検証し、毎年、防止策を提言しており、5日、大阪府吹田市で会合を開いて今年の提言をまとめました。
 提言案では、無痛分娩は陣痛促進剤(子宮収縮薬)や器具を使って新生児を引き出す方法が必要となることが多く、通常の出産とは異なる管理が必要だと指摘。麻酔薬を使うことによる局所麻酔薬中毒など、まれではあるが起こり得る命にかかわる合併症に適切に対応できる体制が必要だとしました。
 お産全体の中で無痛分娩の事故率が高いというデータはありません。ただ、大阪府、兵庫県、京都府などで、無痛分娩による出産で妊婦に麻酔したところ、中毒症状とみられるけいれんが起き、急いで帝王切開を行った新生児が重い障害を負ったり、妊婦が呼吸困難になって死亡したりした事故事例が報告されたため、提言の中で安全策の重要性に言及することにしました。
 日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は、「無痛分娩は、通常の分娩とは異なる安全管理が求められ、認識を新たにして体制を整えてもらいたい。異常が発生した時にすぐに蘇生できる体制を整えておくことや、助産師や看護師らも必要な留意点を普段から把握しておくことが必要だ」と話しています。

 2017年8月6日(日)

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■用語 家族性突然死症候群 [用語(か行)]

[喫茶店]致死性不整脈によって家族性に突然死が起こる疾患の総称
 家族性突然死症候群とは、先天的な遺伝が原因で、若年者や壮年者に致死性不整脈による突然死が起こる疾患の総称。
 先天性QT延長症候群、ブルガダ症候群、進行性心臓伝導障害などが、家族性突然死症候群に含まれます。ここでは、先天性QT延長症候群について解説します。
 先天性QT延長症候群は、心臓の細胞に生まれ付き機能障害があるために、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることもある先天性の疾患。
 医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査すると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な心臓に比べて長くなることから、この疾患名が付けられています。
 常染色体優性遺伝を示す遺伝性の疾患で、性別に関係なく50%の確率で親から子供に遺伝しますが、症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。まれですが、先天性聾(ろう)と呼ばれる生まれ付きで両耳の聴力障害を伴うものは、常染色体劣性遺伝を示します。
 心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT延長症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が延長するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作を起こしやすくなります。
 QT延長症候群には先天性と後天性とがありますが、学童期などの若年から指摘される先天性QT延長症候群は、心筋細胞の収縮と弛緩に関係する遺伝子に異常があるために起こります。一方、比較的年齢が高くなり、薬剤使用や徐脈に伴って起こる後天性QT延長症候群も、遺伝子の異常がかかわっています。
 先天性QT延長症候群の原因は現在、2つが考えられています。1つは、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが重要です。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
 イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。現在では4種類のイオンチャネルに遺伝子の異常が見付かっていますが、この4種類のイオンチャネルの遺伝子に異常が見付からない場合も多く、ほかの種類のイオンチャネルにも異常があるのではないかと考えられます。
 もう1つの原因は、心臓に指令を出す交感神経の異常です。交感神経は、背骨の横に左右1本ずつあり、正常では左右の交感神経から収縮と弛緩を繰り返すように心臓に送られる指令は、バランスが保たれています。先天性QT延長症候群では、左側の交感神経の働きが右側より勝っており、バランスが崩れています。交感神経のアンバランスがなぜ起こるかは、わかっていません。
 その実数は不明ですが、先天性QT延長症候群は2500〜5000人に1人程度の発症者が存在すると推定されています。
 先天性QT延長症候群は原因遺伝子により、不整脈発作の切っ掛けや治療薬の効き方が変わってきます。重症度には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても症状が現れない場合があることも知られています。
 症状としては、不整脈発作による動悸(どうき)、立ちくらみ、気分不快や、失神発作、けいれん発作などがあります。発作の多くは、短時間で自然に回復しますが、心室期外収縮や、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる多形性心室頻拍から、心室細動といわれる不整脈にまで進行して回復しない場合は、突然死に至ります。
 また、失神発作、けいれん発作は、てんかんと間違えられることもよくあります。先天性聾、四肢の脱力、身体奇形などを伴うものもあります。
 抗不整脈薬と、日常生活における発作誘因の回避で、突然死に至るような致死性不整脈発作はかなり予防できます。正しい診断がとても大切ですので、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診することが勧められます。
[喫茶店]家族性突然死症候群(先天性QT延長症候群)の検査と診断と治療
 小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、発作の既往歴、家族歴などから先天性QT延長症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の延長とT波と呼ばれる波の形の変化を確認します。検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の延長がよりはっきりすることがあります。
 遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効です。近年では、原因遺伝子の型のみではなく、各原因遺伝子の変異部位によって重症度が異なることがわかってきており、QT時間や遺伝子型、あるいは変異部位に基づいて、リスク評価を行い、治療法を決定します。
 小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、不整脈発作の予防のために、β(ベータ)遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗(きっこう)薬などの抗不整脈薬を内服します。
 内服薬の効果がない場合は、植え込み型除細動器(ICD)、交感神経切除術などによる治療を考慮します。
 植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
 交感神経切除術は、心臓に指令を送る左側の交感神経を首から胸にかけて切断します。
 日常生活においては、不整脈発作の誘因となる激しい運動や精神的興奮、驚愕を避けるなどの注意が必要です。

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