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■安全基準を策定して抗がん剤の残薬活用へ 医療費削減で厚労省 [健康ダイジェスト]

 厚生労働省は11日、使い切れなかった抗がん剤の残薬をほかの患者にも有効活用できるよう安全基準づくりに乗り出す方針を固めました。
 免疫に働き掛ける「オプジーボ」「キイトルーダ」など高額な抗がん剤が相次いで登場しており、薬の廃棄ロスを減らせば数百億円単位の医療費削減も期待できるといいます。
 厚労省は9月にも、医療機関が残薬を活用した場合の安全性や医療費削減の効果について、多角的な調査研究を始めます。研究結果を踏まえ、今年度中に残薬の活用策を検討していきます。
 液状の抗がん剤は「バイアル」というガラスの瓶に入っており、オプジーボの場合、1瓶100ミリグラム約36万5000円で、患者の体重に応じて使用量を調整します。しかし、例えば30ミリグラム残っても、細菌汚染の恐れがあるとしてメーカー側は使用しないよう注意喚起しています。廃棄すると10万円以上が無駄になる計算です。
 ただ、1瓶から同時に複数の患者へ投与することは、認められています。残薬を活用できるケースはあるものの、今のところ安全基準がなく、多くはそのまま廃棄されます。医療費は廃棄分も含め1瓶単位で請求されるのが一般的で、実際の使用量に見合わない過大な医療費の負担となっています。
 厚労省が始める調査研究では、残薬の活用に関し、1)細菌汚染防止の観点から安全性確保に必要な条件、2)実際に廃棄率が減るかどうか、3)作業が煩雑になり医療過誤に影響しないか、4)廃棄ロス減少のための小瓶の開発可能性、5)複数回の使用を前提とした薬剤開発の在り方などを探ります。研究の成果は残薬活用の安全基準に反映させる方針です。
 残薬を巡っては、別の患者に残薬を使用しても1人に1瓶ずつ使ったことにして医療費を請求しているケースが、確認されています。日本病院薬剤師会の調査では、こうした事案で過大に医療費を受け取っている医療機関が18%にも上りました。
 厚労省は7月末、別の患者に残薬を使用した場合、使用量に応じた医療費の請求を徹底するよう、関係団体や都道府県などに向け通知を出しています。

 2017年8月12日(土)

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■マダニ感染症を予防するワクチン開発が進行 国立感染症研究所 [健康ダイジェスト]

 草地や野山に生息するマダニにかまれることで主に感染し、致死率が20%ほどとされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について、国立感染症研究所はワクチンの開発に取り組んでおり、動物での有効性を確認するなど開発を急いでいます。
 重症熱性血小板減少症候群は、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるSFTSウイルスを持つマダニにかまれることで主に発症する感染症で、ワクチンや有効な治療法はなく、昨年は全国で57人の患者が報告されうち8人が死亡、今年は7月26日までに西日本を中心に51人の患者が報告されうち少なくとも8人が死亡しています。
 国立感染症研究所の西條政幸部長のチームは、遺伝子を操作したSFTSウイルスを使ったワクチンと、感染しないよう処理したSFTSウイルスを使ったワクチンの2種類の方法で開発を進めています。
 今後はマウスなどの動物を使い、免疫力が高まるか実験を行うということで、チームでは動物での有効性を確認し、人のワクチンの開発につなげたいとしています。
 西條部長は、「このウイルスをなくすことはできないので、患者を救うために早急にワクチンの実用化を目指したい」と話しています。
 重症熱性血小板減少症候群を媒介するマダニは、フタトゲチマダニやオウシマダニなどのマダニで、固い外皮に覆われた体長3~4ミリと比較的大型の種類。食品などに発生するコナダニや、衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するイエダニとでは種類が異なります。広くアジアやオセアニアに分布し、日本国内でも青森県以南の主に森林や草地などの屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。
 このマダニにかまれることで、重症熱性血小板減少症候群は主に感染し、6日から2週間とされる潜伏期間を経て、発症します。
 発症すると、発熱や、食欲低下、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛といった消化器症状が現れます。時に、頭痛、筋肉痛や、意識障害、けいれん、昏睡(こんすい)といった神経症状、リンパ節腫脹(しゅちょう)、せきといった呼吸器症状、紫斑(しはん)、下血といった出血症状を起こします。重症の場合は、血液中の血小板が減少して出血が止まらなくなったり、腎臓(じんぞう)の機能が低下したりして死亡することもあります。
 発症時期は、マダニの活動が活発になる4月中旬から11月下旬の春から晩秋にかけて。
 重症熱性血小板減少症候群の予防ワクチンはないため、マダニに刺されないことが、唯一の感染予防法です。
 ポイントは、レジャーや農作業などで、草むらややぶなどマダニが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、手袋、足を完全に覆う靴などを着用すること。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷くこと。帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えることです。
 万が一マダニにかまれた時は、マダニをつぶしたり、無理に引き抜こうとせず、できるだけ病院で処置してもらうことが大切です。マダニの多くは、人や動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、数日から長いもので10日間、吸血します。無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ってしまうことがあるので、吸血中のマダニに気が付いた時は、病院で処置してもらって下さい。

 2017年8月12日(土)

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■半月板損傷、切除せず幹細胞移植で再生へ 東京医科歯科大で治験開始 [健康ダイジェスト]

 東京医科歯科大学は、重い半月板損傷の患者自身の膝関節から幹細胞を採取して培養した後、損傷部分に移植して再生させる臨床試験(治験)を8月から始めたと発表しました。
 半月板損傷の患者は国内に400万人以上いるとみられますが、半月板の損傷が激しいと手術で切除するしか有効な治療法がありませんでした。東京医科歯科大は5年後にも、国の再生医療等製品としての承認を目指すといいます。
 半月板は膝関節の間に挟まる三日月形をした軟骨で、クッションの役割を果たしています。強い衝撃や加齢などによって損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みを感じたり、関節に水がたまったりします。年間約3万5000人の半月板損傷の新規患者のうち、8割が損傷部分を手術で切除していますが、広範囲に切除した場合は関節の軟骨が擦り減る変形性膝関節症の発症リスクがありました。
 治験では、切除が必要なほど半月板の損傷が激しい20歳以上の患者10人を選び、膝関節を包む滑膜の一部を抜き取り、そこに含まれる幹細胞を2週間ほど培養した後、切除せずに半月板の形を修復して縫い合わせた部分に注射で注入。その後は約1年間、MRI(磁気共鳴画像化装置)による検査などで経過観察し、有効性と安全性を確かめます。
 治験を主導する関矢一郎教授(応用再生医学)は2013~2015年、半月板損傷の34~57歳の患者5人に対し、自身の滑膜の幹細胞を培養して膝関節に注入し、経過観察する同様の臨床研究を実施。術後1年で半月板の再生がみられ、関節痛などの症状が改善したといいます。
 関矢教授は、「再生医療製品として承認され、変形性膝関節症を予防する治療につなげたい」と話しています。
 治験への参加希望者は、東京医科歯科大学臨床試験管理センター(03・5803・5612)へ。

 2017年8月12日(土)

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■用語 QT短縮症候群 [用語(A〜Z、数字)]

[喫茶店]突然、脈が乱れて不整脈発作や失神発作を起こし、突然死に至ることが、まれにある疾患
 QT短縮症候群とは、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることがまれにあり得る疾患。SQTS(Short QTSyndrome)とも呼ばれます。
 医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて短くなることから、この疾患名が付けられています。
 QT短縮症候群には、生まれ付き、または明らかな原因のない先天性(遺伝性)QT短縮症候群と、何らかの原因があって引き続き発症する後天性(二次性)QT短縮症候群とがあります。
 先天性QT短縮症候群は、極めてまれな遺伝性の疾患で、正確な発生頻度は明らかになっていません。症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。
 心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT短縮症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が通常よりも短縮するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作が起こりやすくなります。
 先天性QT短縮症候群の原因は、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが、重要になります。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウム、カルシウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
 イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。先天性QT短縮症候群では、これまでに6個の原因遺伝子が報告されています。最も多いQT短縮症候群1型(SQT1)の遺伝子の異常は25%程度に認められるとされていますが、そのほかの原因遺伝子の検出頻度は低くなります。
 また、先天性QT短縮症候群の遺伝子異常は、常染色体優性遺伝の形式をとり、子孫に代々受け継がれて家族性に発症する場合もありますが、家族には認めずに本人にのみ遺伝子異常が出現する場合もあります。
 一方、後天性QT短縮症候群は、高カリウム血症や高カルシウム血症などによって生じる電解質異常が原因となって、元々は正常範囲内であったQT時間が短縮して発症することがあります。また、抗生物質や抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬や向精神薬といった薬物の使用や、ほかの疾患による発熱などが誘因となって、QT時間が短縮して発症することもあります。
 無症状の場合もありますが、まれに心室頻拍や心室細動などの不整脈が発生して失神したり、心停止や突然死に至ったりすることもあります。症状が起こる可能性は、小児から成人のあらゆる年齢層にあります。
 一度でも心停止を起こしたことがある場合、失神または不整脈が出現している場合、家族に同様の発症者がいる場合は、リスクが高いことが予想され、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることが勧められます。
[喫茶店]QT短縮症候群の検査と診断と治療
 小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、QT短縮症候群であるかどうか、もしQT短縮症候群であれば先天性、後天性のいずれであるか、先天性ならどのような型の遺伝子異常があるか、また現在危険な状態にあるかどうかなどについて、各種の検査を行います。
 不整脈発作や失神発作の既往歴、家族歴などからQT短縮症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の短縮を確認します。QT時間で280~300ms(ミリ秒)以下、心拍数で補正したQTc時間(補正QT時間)で300~320ms(ミリ秒)以下がQT短縮とされていますが、QTc時間(補正QT時間)が330ms(ミリ秒)以下の場合は、QT短縮症候群である可能性が高くなります。
 検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の短縮がよりはっきりすることがあります。遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効ですが、症状を伴うQT短縮症候群でも現状、遺伝子診断率は低くなっています。
 小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、無症状で家族に同様の発症者がいない場合、家族に突然死した人がいない場合は、経過観察を行います。
 心室頻拍や心室細動が出現した場合、原因不明な失神を繰り返している場合、家族に同様の発症者がいたり突然死した人がいる場合は、植え込み型除細動器(ICD)を植え込むことがあります。また、一度でも心停止を起こしたことがある場合も、植え込み型除細動器(ICD)を植え込みことが第一選択の治療法となります。
 植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
 QT時間を延長させる薬がいくつかあり、抗不整脈薬であるキニジンの内服、ニフェカラントやジソピラミドの点滴静脈注射を行うこともありますが、QT時間を安定して延長することはできません。
 後天性QT短縮症候群の場合は、電解質異常や薬剤の内服などの原因があるので、それらを取り除くとQT短縮が延長して正常化し、症状はよくなります。

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